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中国が世界市場を「220万円のEV」で席巻へ。中国各メーカーが相次ぎ低価格電気自動車を発表、メーカーの命運を分ける世界大戦が勃発

中国が世界市場を「220万円のEV」で席巻へ。中国各メーカーが相次ぎ低価格電気自動車を発表、メーカーの命運を分ける世界大戦が勃発

Image:NIO(Linkedin)

| 西側メーカー戦慄。中国発「超低価格EV・PHEV」輸出攻勢が世界を変える |

今回のハイライト

  • 輸出攻勢:低価格帯(100,001元~150,000元、約220万円~330万円)のEV・PHEVが全世界へ輸出される準備が進行中
  • 価格破壊の象徴:リープモーター A10、ニオ ファイヤーフライといった新モデルが約220万円からの価格帯でグローバル展開へ
  • メーカーは苦境:価格競争の激化により、BYDや長城汽車(Great Wall)の純利益が30%減少
  • 成長の事実:中国のEV・PHEV輸出台数は、今年第3四半期までに前年同期比89%増という驚異的な伸びを記録
  • 戦国時代の到来:中国はもちろんグローバル市場での競争激化によって利益の確保が難しくなり「倒産の嵐」が吹き荒れる予兆

「最も売れる価格帯」がグローバル市場に波及

中国の自動車メーカーが広州モーターショーにて10万1元(約14,100ドル、約215万円)からの超低価格EVとプラグインハイブリッド車(PHEV)を一斉に発表し世界の自動車市場に衝撃を与えたとして大きな話題に。

この新たな価格帯の波は「中国が電動化におけるマスマーケットを支配する」という強いメッセージを世界に発するものと捉えられており、今後これらのEVが「世界中に向けて」輸出されるであろう可能性を示唆しています。

中国の自動車メーカーはここ数年にわたり激しい価格戦争を展開しており、その熱は冷めるどころか、特に市場の低価格帯でさらに激化していますが、「国内での競争」が激化したことから多くの中国の自動車メーカーは「競争が激しい中国市場に見切りをつけ」、まだほとんど手つかずの海外市場へと着目し、その結果として現在の(中国の自動車メーカーの)主戦場が中国国外へと移りつつあるというのが現在の状況です。

200万円台EVが中国国内市場を牽引

中国国内において、価格帯が100,001元(約220万円)から150,000元(約330万円)のEVおよびPHEVは、今年第1四半期から第3四半期までに235万台を販売し「国内最大の市場セグメント」となっていますが、これは前年同期の150万台未満から大幅に増加しており、消費者からの低価格EVに対する爆発的な需要を物語っています(この需要は、この価格帯のEVの拡充、そして品質含む製品の魅力向上によってもたらされらものだと考えていい)。

さらに200万円以下の”より安価なNEV(新エネルギー車)”の販売台数も倍増し、100万台を超えているとも報じられているので、いまや中国のEV市場では「低価格化」が進み、そしてこれは「ますます各社の利益を圧迫する」という事実を意味するものと捉えられているわけですね。

新たな低価格EVの顔ぶれと輸出戦略

広州モーターショーで公開された新たな低価格モデルは、そのまま直ちにグローバル市場をターゲットとしており、よって今までの「中国専売の、風が吹けば飛ぶような」EVとは一線を画していて「正直かなり競争力があるクルマたち」。

もちろん、既存の日米欧自動車メーカーに比較すると知名度や信頼性で劣る部分はあるかとは思いますが、この圧倒的な価格差がそういったギャップを埋めるのかもしれません。

車種名メーカー中国国内想定価格(円換算概算)グローバル展開
Leapmotor A10Leapmotor約220万円~全世界への輸出を想定
Nio FireflyNio約220万円~17の新規市場へ(中米など)
GAC Aion i60GAC約240万円~輸出戦略を推進中

とくにNioの「Firefly(ファイヤーフライ)」は、右ハンドル車が初めて公開され、来年には中米など17の新規市場に進出する予定を示すとともにグローバルな影響力の拡大を明確に示しています。


競合比較:西側レガシーブランドが直面する「価格の現実」

こういった中国メーカーによるこの価格攻勢は、生産コストや排出ガス目標への対応に苦慮している欧米や日本の既存メーカーにとって単なる健全な競争以上の、グローバルな価格再評価の始まりを意味しており、そしてこの価格差は一部の自動車メーカーにとっては「対抗できないレベル」でもあるため、いくつかの日米欧の既存自動車メーカーは「この価格帯の市場から」ガソリン車もろとも撤退する可能性も考えられます。

そのため、この「中国車の世界進出」は勢力図の変化に加え、自動車産業の「構造的変化」をも意味している、と受け止められているわけですね。

Zeekr
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販売好調でも利益は激減

ただ、低価格帯の販売急増は中国の顧客(将来的には世界中の顧客)にとっては朗報ですが、自動車メーカーにとっては収益性の低下という厳しい現実をもたらしており・・・。

  • BYD:今年7月~9月期の純利益が30%減少。これは過去4年間で初めての減少となる
  • 長城汽車(Great Wall):販売台数が20%増加したにもかかわらず利益が30%減少

価格競争の激化は、各社が市場シェア獲得のために利益を削る「チキンレース」に突入していることを示唆していて、この収益モデルの持続可能性が問われ始めています(つまり中国の自動車メーカーにとっても倒産の危機が訪れようとしている)。

BYD
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「輸出」で国内の競争圧力を解放

国内市場での利益率が低下する中、中国メーカーは海外市場への依存度を高め、収益モデルを国内販売から輸出へとシフトさせている傾向も数値にて示されており・・・。

  • 輸出の猛烈な伸び:今年第3四半期までの中国ブランドのEV・PHEV輸出台数は175万台に達し、前年同期比で89%という驚異的な増加率を記録

中国メーカーは、価格競争で培ったコスト競争力を武器にグローバル市場に一気に打って出ることによって国内での利益低下を相殺しようという戦略を明確にしていて、つまり中国市場を「食い尽くした後」、世界市場をも食い尽くそうということに。

この状況において日米欧の自動車メーカーは「価格以外の武器」を備える必要があり、それを獲得するために各社とも対応を急いでいるとうのも直近で明確になっているトレンドです。

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中国製EVに対する「補助金と関税」の国際的な議論

さらに中国の低価格EVが世界市場を席巻する動きは米国や欧州連合(EU)との間で常に貿易摩擦を引き起こしており・・・。

  • EUの追加関税の可能性:EUは、中国政府による補助金が不当な競争優位性を生み出しているとして調査の結果関税を導入していますが、それでも欧州市場における中国製EVの車絵は伸び続け、よって今後中国製EVに対して追加関税が課される可能性も高まっている
  • 輸出戦略への影響:それでもこの関税措置は中国メーカーの輸出戦略にとって大きな痛手となることが予想され、中国のメーカーはEU域内での現地生産を検討するなど、対応を迫られている

しかし中国メーカーは”EVよりも関税が低い”PHEV(プラグインハイブリッド車)の輸出も積極的に拡大するなど”抜け穴”を利用した動きを取っていて、これがEV輸出の伸びが鈍化した際の新たな成長分野となる可能性も指摘され、つまるところ「イタチごっこ」なのかもしれませんね。

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結論:消費者には恩恵も、産業には「激震」

中国メーカーによるこの超低価格EV・PHEVのグローバルな輸出攻勢は自動車の電動化を加速させ、世界中の消費者にとっての選択肢と価格的な恩恵を増大させることは間違いなく、しかしその一方、この価格競争は既存の自動車産業のビジネスモデルに根本的な激震をもたらし、特に収益性で苦しむ欧米や日本のメーカーに対し、より迅速かつ大胆なコスト削減と電動化戦略の実行を迫ることに。

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まとめるとこれまでの状況はざっと以下の通りかと思われますが、そしてここから先は自動車業界が経験したことのない「予測不可能な領域」でもあり、今後の動向に注目が集まります。

  • 中国では補助金や販売奨励金を当てにした新興EVメーカーが乱立(一時は600社超)
  • 当然ながら競争過多になり、一部メーカーが廃業→在庫を投げ売り
  • それに釣られる形で生き残っていたメーカーも値下げ
  • 「値下げが恒常化」し生き残ったメーカーの間で価格競争が勃発
  • そうなると中国市場での販売は体力が削られるだけなので輸出(海外)に活路を見出す
  • 輸出先では既存(日米欧)の自動車メーカーのシェアを獲得しそれらを駆逐する勢い
  • 輸出先でも結果的に「中国メーカー同士」の争いとなり、中国市場での価格競争を繰り返す

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