
ワンペダルドライブとは?
「慣れるまでは違和感、慣れれば快適」
EV(電気自動車)や一部のPHEV(プラグインハイブリッド)には「ワンペダルドライブ(One-Pedal Driving)」と呼ばれる走行モードが存在し、これはアクセルペダルから足を離すだけでクルマが自動的に減速・停止させる仕組みで、ブレーキペダルをほとんど使わずに運転できるというものです。
この減速は「回生ブレーキ(Regenerative Braking)」によって行われ、エレクトリックモーターの抵抗を利用してクルマの運動エネルギーを電力としてバッテリーへと回収するもので、メーカーや車種によってはこの制動力の強さを調整できる場合もあり、「滑らかに止まる」か「強く減速する」かを好みに合わせて選択できるわけですね。
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中国が“禁止”に踏み切った理由とは
ただし、このワンペダルドライブに対して、中国政府は懸念を示していると報じられ、国家市場監督管理総局(SAMR)および国家標準化管理委員会(SAC)は、2025年より施行される新たな自動車安全基準において、「車両をワンペダルモードで自動的に起動してはならない」と定めたのだそう。
つまり、ドライバーが明示的に選択しない限り、このモードを“デフォルト”として使うことが禁止されており、その背景には、緊急時にブレーキ操作への反応が遅れるリスクや、特に高齢ドライバーによるペダル踏み間違い事故が多発している現状がある、とされています。
特に、長年ガソリン車に慣れ親しんできたドライバーがEVに乗り換えた際、「アクセル=加速」「ブレーキ=停止」という従来の感覚と異なる挙動に戸惑い、重大事故につながったケースも報告されているそうで、中国政府として「EVであってもガソリン車同様」の操作感を残すべし、ということなのでしょうね。
回生ブレーキの仕組み
従来のガソリン車では、ブレーキペダルを踏むと油圧が発生し、キャリパーがローターを挟み込み摩擦で減速しますが、このとき、エネルギーの大半は熱として失われるのがひとつの欠点。
一方、EVの回生ブレーキは、モーターが発電機として働くことで減速し、この過程で発生した電力をバッテリーに戻すことで航続距離を最大20%程度伸ばすことが可能だという統計もあり、摩擦ブレーキの使用頻度が減るため、ブレーキパッドの寿命も大幅に延びるというメリットも(イーロン・マスク氏によれば、テスラ・セミのブレーキパッドは「文字通り永遠に持つ」)。
運転には慣れが必要
ワンペダルドライブは便利ではありますが、操作感に慣れるまでには時間がかかり、例えば、アクセルを少し離しただけでクルマが急停止するように感じることもあり、筋肉の記憶(Muscle Memory)を書き換える必要も。
ちなみにぼくはBMW i3にてこれを経験していますが、最初は違和感があるものの「慣れれば快適」。
しかしその一方、他のクルマに乗り換えたときや、「いまi3に乗っている」ということを忘れたりするとその挙動に「あれれ」となることもあり、この回生ブレーキについては「すべてのクルマが回生ブレーキを有する時代になれば」問題はないものの、まだまだ回生ブレーキのほうが少数派であって「慣れ」を要することから問題となりやすいのかもしれません。
なお、この回生ブレーキは「けっこうな制動力」を持っていて、たとえば雨の日に高架道路を走り、そこで「濡れた鉄板(継ぎ目)の上でなんらかの理由によってアクセルペダルを急激に戻してしまうと”回生ブレーキによる急制動”がかかってしまい、鉄板の上で滑ってしまうことも。
つまりこれは意図しない挙動であり、「通常の摩擦ブレーキ」を使用した際には起こり得ない挙動であって、ぼくとしては「ちょっと恐ろしい」と感じた次第です(回生ブレーキとABSとを連動させたロジックを持つクルマがあるかどうかはわからない)。
今後のEV設計への影響
今回の中国の措置は、「運転支援の進化と人間の反射行動のズレ」をどう調整するかという課題を浮き彫りにし、自動運転・電動化が進む中で、車がどこまで“人間の習慣”に寄り添うべきか――。
この議論は、今後グローバルな安全基準にも影響を与える可能性があります。
一方、ヨーロッパや日本ではワンペダルドライブを積極的に評価する声も多く、BMW、日産、ポルシェ、テスラなどが各自独自の回生制御を進化させており、つまり、“禁止”ではなく、“最適化”こそが次のステージであるべきなのかもしれません。
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参照:Jalopnik

















