
| 平均価値が2年で89%アップ。F1が世界スポーツビジネスの「新境地」へ |
F1は新時代へと突入、大きくそのファンと性格が変化する
F1(フォーミュラ1)はもはや単なるモータースポーツではなく、世界で最も急速に成長しているビジネス資産の一つとなっているのは既知の通りではありますが、投資家がこぞって参入を試みる中、2025年版のF1チーム価値ランキングでは、グリッド上の全10チームの平均価値が36億ドルに達し、2023年比で89%増という驚異的な伸びを記録したことが明らかに。
トップチームの評価額は、NFLやNBAの一部の有名フランチャイズすら凌駕しており、この価値急騰の背景には、2021年に導入されたコストキャップ制度がチームの収益構造を一変させ、以前は不安定だった財務体質が「構造的に利益を生む」資産へと変貌したことがある、と報じられています。
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つまるところ、コストキャップは各チームの競争力の平準化に貢献したのみではなく、その財務体質の強化にも大きな影響を及ぼしたというわけですね。
ここでは、フォーブスが推定する最新のF1チーム価値ランキングに基づき、各チームの現在の評価額、収益、そしてその成長を支える要因を考察してみましょう。
この記事のハイライト
- 最高評価額: フェラーリが65億ドルでトップに君臨
- 平均価値: 全10チームの平均が36億ドル。2年で89%の成長
- 収益性: コストキャップ導入後、2024年に6チームが営業利益を計上
- 鍵となる技術: マクラーレンは2024年に6,100万ドルの営業利益を達成(2018年は1億3,700万ドルの損失)
- 投資熱: 最近の売却・提携事例では、売上高の約8倍という高倍率で取引が成立
F1チーム価値ランキング2025:トップ10
フォーブスが推定する、2025年におけるF1チームの価値ランキング(上位4チーム)およびその他のチームの詳細なスペックを「表」で比較すると以下の通り。
| 順位 | チーム名 | 評価額 (USD) | 収益 (推定) | 営業利益 (推定) | チーム代表 |
| #1 | フェラーリ | $65億 | $6億7,000万 | $8,000万 | フレデリック・ヴァスール |
| #2 | メルセデス | $60億 | $7億9,900万 | $2億200万 | トト・ヴォルフ |
| #3 | マクラーレン | $44億 | $6億1,400万 | $6,100万 | アンドレア・ステラ |
| #4 | レッドブル・レーシング | $43億5,000万 | $6億1,800万 | $2,600万 | ローラン・メキース |
| #5 | アストンマーティン | $32億 | $3億5,300万 | -$1,800万 | アンディ・カウエル |
| #6 | ウィリアムズ | $25億 | $2億4,500万 | -$3,600万 | ジェームス・ヴォウルズ |
| #7 | アルピーヌ | $24億5,000万 | $3億 | -$1,300万 | フラビオ・ブリアトーレ |
| #8 | ザウバー | $24億 | $2億4,000万 | -$2,500万 | ジョナサン・ウィートリー |
| #9 | レーシング・ブルズ | $23億 | $3億1,800万 | $500万 | アラン・パーマネ |
| #10 | ハース | $15億 | $1億5,000万 | $900万 | 小松礼雄 |
#1 フェラーリ:絶対的なブランド力が生む「65億ドル」の価値
フェラーリは、F1史上最も成功したチームとして、65億ドルでトップに立っています。
- 唯一無二の存在感: F1への初参戦(1950年)以来、最多のコンストラクターズタイトル(16回)を誇るブランドとしての歴史的価値が、他の追随を許さない
- ハミルトン効果: 史上最多タイのドライバーズチャンピオン(7回)を誇るルイス・ハミルトンが今シーズンから加入したことで、成績不振にもかかわらず、ファンのエンゲージメントは非常に高い水準を維持
- ソーシャルメディアの支配: スポンサー分析企業Blinkfireによると、フェラーリのソーシャルメディアでのエンゲージメントは他のチームより31%高く、スポンサーに生み出すメディア価値は他チームを44%も上回る
#2 メルセデス:高い収益性が証明する「資産」としての魅力
メルセデスは60億ドルと評価されてフェラーリに肉薄しており、メルセデスの価値を押し上げているのはその圧倒的な収益性です。
- 驚異の営業利益: 2024年の収益はシリーズ最高の7億9,900万ドル、そして2億200万ドルという莫大な営業利益を計上し、世界で最も収益性の高いスポーツチームの一つとなっている
- 投資家の注目: チーム代表のトト・ヴォルフ氏が少数株売却交渉を行っている際の評価額は約60億ドルと報じられ、これは2年前のフォーブスの評価額から58%の急騰を意味する
- 新規スポンサー: 2024年1月には、アパレルパートナーとしてアディダスが契約金年間約3,000万ドルで複数年契約を締結するなど、スポンサーからの関心が絶えない状態
#3 マクラーレン:どん底からのV字回復
かつて破産の危機に瀕したマクラーレンは現在44億ドルの価値を持ちます。
- 財務健全化: 2018年に1億3,700万ドルの損失を計上したものの、2024年には6,100万ドルの営業利益を達成し財務構造が劇的に改善
- 商業的成功: CEOのザク・ブラウン氏の商業主導の経営の下、2024年の収益は前年比26%増の6億1,400万ドルに達する
- 史上最大の提携: 2026年にはマスターカードがタイトルスポンサーとなり、年間1億ドルと報じられる「マクラーレン史上最大のパートナーシップ」を締結予定
価値急騰の背景にある「F1の新しい経済構造」
F1チームの価値が他のグローバルスポーツチームと比較しても異例の速さで上昇しているのは、主に以下の二つの要因が作用しています。
1. コストキャップ導入による劇的な「利益構造への転換」
2021年に導入されたコストキャップ制度は、チームがレースカーの設計と製造に関連する多くの分野での支出を制限するもの(今シーズンは約1億7,000万ドル)。
- 支出抑制: 以前はトップチームが年間4億ドル以上を費やしていたところ、コストキャップにより、無制限な開発競争が抑制される
- 収益性の向上: 支出が制限された結果、トップチームの利益率が飛躍的に向上。2024年には6チームが利益を計上し、赤字のチームも「あと1つか2つのスポンサー契約で黒字化できる」水準にある
2. スカイスポーツ&Netflix効果による「グローバルなブランド価値の爆発」
- 視聴者層の拡大: Netflixのドキュメンタリーシリーズ『Drive to Survive(邦題:栄光のグランプリ)』や、ブラッド・ピット主演の映画(2025年公開)などの影響で、特に米国におけるファンベースが拡大
- メディア市場の成長: 米国でのF1レース放映権はESPNの年間約8,500万ドルの契約から、Apple TVとの年間約1億4,000万ドルの契約へと大幅に上昇
3. 希少性(スカーシティ)による投資家の過熱
F1チームは現在10チームしか存在せず、来シーズンにキャデラックが11番目のチームとして参入しても、その数は極めて限られています。
- 参入の難しさ: キャデラックが11番目のチームとして参入するために、設立費用と4億5,000万ドルの反希薄化手数料を支払っている事実がF1チームの「価値の下限」を引き上げている
- 高倍率での取引: 最近の少数株売却や買収では、売上高の約7倍から8倍という高い倍率で取引が成立しており、投資家が「市場力学が全て」として、既存の複雑な財務分析を超えた評価を付けていることが理解できる
結論:F1チームは「利益を生む超優良資産」へ
わずか5年前までは財務的安定性が保証されていなかったF1チームが、今やNFLやNBAチームと比較されるほどの構造的に収益性の高い資産へと変貌を遂げているのが今の状況。
この急激な価値上昇は、コストキャップによる支出抑制、Netflixによるグローバル視聴者層の爆発的な拡大、そしてグリッド上のチーム数の少なさという希少性が生み出した結果でもあり、特にフェラーリやメルセデスといったトップチームは、単なるレースチームではなく、世界を股にかける「動く広告塔」としてのブランド価値と、堅実な利益構造を兼ね備えた「超優良投資対象」となっているわけですね。
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参照:Forbes













