
| 鳴り物入りでデビューした装備ではあったが、時代の変化とともに様々な「常識」が覆る |
現代のクルマにおいて最も「嫌われている」と言っても過言ではない機能、アイドリングストップ(オートスタート/ストップ)。
この機能が、米国でついに「絶滅」の危機に瀕しているという報道がなされています。
2026年2月12日(現地時間)、米国環境保護庁(EPA)が発表した衝撃的な方針転換のニュースを見てみましょう。
この記事の要約
- 歴史的な規制緩和: 2009年オバマ政権時代の「GHG(温室効果ガス)実効性判断」を撤廃
- 優遇措置の終了: 自動車メーカーがアイドリングストップ搭載で得ていた「燃費クレジット」が消滅
- 「嫌われ者」への引導: EPA長官は「誰もが嫌う機能」と断言。搭載の義務やインセンティブがなくなる
- ユーザーの選択肢: 今後は「デフォルトOFF」や、機能そのものの非搭載が進む可能性大
なぜこれほど嫌われた?アイドリングストップを巡る「怒り」と「真実」
信号待ちのたびにエンジンが止まり、再始動時に車体が揺れる。交差点での右折時に一瞬加速が遅れる――。燃費向上のために導入されたアイドリングストップですが、多くのドライバーにとっては「ストレスの源」であったのは事実かと思います。
今回のEPAによる決定は、こうしたユーザーの不満を真っ向から受け止めたもので、リー・ゼルディンEPA長官はSNSにてこの機能を「気候変動という宗教の参加賞」とまで酷評し、実質的な廃止へと動いています。
Start/stop technology: where your car dies at every red light so companies get a climate participation trophy. EPA approved it, and everyone hates it, so we’re fixing it. pic.twitter.com/zFhijMyHDe
— Lee Zeldin (@epaleezeldin) May 12, 2025
性能・環境・コスト:アイドリングストップ撤廃の影響を分析
実際のところ、この機能がなくなるとぼくらのカーライフはどう変わるのか?
参考までに、このアイドリングストップ搭載車の多くは「デフォルト設定がオン」となっており、それは現時点で米国市場での規制が「そう求めている」からで、よって米国市場でも販売されているクルマにつき、ほか市場でもその設定に倣っている場合が多くなっているわけですね。
まず「アイドリングストップ」については以下の通り。
アイドリングストップの「功と罪」
| 項目 | 詳細と影響 |
| 燃費改善率 | 市街地で約5%〜10%の向上(SAE調査では最大26%のケースも) |
| バッテリー負荷 | 頻繁な再始動により、高価な大容量バッテリーが必要(維持費増。かつ早期での交換が必要になるので環境に対する負荷も否定できない) |
| 車両価格 | システム搭載により、車両1台あたり数万円のコスト増 |
| ユーザー体験 | 加速のタイムラグ、エアコンの効きが悪化するなどの不快感 |
今回の規制緩和のポイント
なお、今回のEPAの決定は「アイドリングストップを禁止する」ものではないということには注意が必要です。
しかし、これまで自動車メーカーはこの機能を付けることで「燃費が良いクルマを作っている」という公的なボーナス(クレジット)をもらっていたのもまた事実。
そして今後はそのボーナスがなくなるため、コストをかけてまで不人気な機能を標準装備する理由が存在しなくなり、「一気に」アイドリングストップ廃止に動くのではと見られています。
今後の展望:次の愛車はどうなる?
このニュースはアメリカだけの問題ではなく、グローバルモデルを開発する自動車メーカーにとって、最大市場の一つである米国のルール変更は(中国での規制変更同様に)車両の設計そのものに影響を与えます。
- 「デフォルトOFF」の実現: 現行車はエンジンをかけるたびにスイッチを押してオフにする必要がありますが、今後は「一度オフにすればずっとオフ」の設定が可能に
- 物理ボタンの復活: コストカットのために画面の奥深くに隠されていたオフ機能が、より使いやすく改善される可能性がある
- ハイブリッド車へのシフト: 純ガソリン車で無理にエンジンを止めるよりも、スムーズな発進が可能なハイブリッド(HEV)やマイルドハイブリッドへの移行が加速する可能性も
結論:自動車は「数値」から「乗り味」の時代へ
今回のEPAの動きは、行き過ぎた環境規制がドライバーの「運転する楽しさ」や「利便性」を損なっていた現状に対する、強力なカウンターとも言えるもの。
もちろん燃費が良いに越したことはありませんが(また別の統計では、実はアイドリングストップはそれほど燃費向上に貢献しないという数値もある)、それは技術の押し付けではなく、ユーザーが納得できる形であるべきだとも考えます。
そしてアイドリングストップという「物議を醸した機能」が消えゆくことにより、自動車開発は再び「スムーズで快適な走り」へと原点回帰していくのかもしれませんね。
参考:日本のアイドリングストップ事情
実は日本でも、一部のメーカー(ダイハツやホンダの一部車種など)ですでに「アイドリングストップ非搭載モデル」の選択肢を増やす動きが出ています。
これは部品不足への対応、製造コストの低減という側面もあるものの、ユーザーからは「バッテリー交換時に安く済む」「ギクシャクしなくて良い」と意外にも好評なのだそう。
米国のこの決定が、日本の自動車メーカーの背中をさらに押すことになるかもしれません。
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