
| ポルシェはかねてより「環境」に配慮した会社である |
そしてイタリアは「伝統」に重きを置く国である
「ポルシェのようなスポーツカーブランドが、どうやってサステナビリティ(持続可能性)を実現するのか?」
この問いに対し、ポルシェ・イタリアのサステナビリティ責任者ジャスミナ・シェヒ氏は明確な回答を示しており、この回答は市場調査から導き出された「市場の方向性と合致したもの。
ここでポルシェの導き出した応えがどういったものであったのかを見てみましょう。
【要約】本記事のポイント
- EV購入の決め手: イタリアの顧客の約40〜55%が「環境への影響」を最重視
- 100%電気自動車レース: 「タイカン・ラッシュ」を通じ、性能とサステナビリティの両立を証明
- 徹底した社会貢献: 視覚障がい者向け「3D触覚マップ」や、障がい者向け運転支援「ダイバーシティ(Driversity)」を展開
- 数値で見る成果: イベントでの廃棄物管理により、5.7トン以上のCO2排出削減に成功

ポルシェが描く「持続可能なラグジュアリー」とは?
そこで上述の「サステナビリティ(持続可能性)を実現する方法」につき、ポルシェ・イタリアの示した回答とは、”単なる「エコ」に留まらず、環境(E)・社会(S)・ガバナンス(G)を日々の業務、さらにはサーキットにまで浸透させること”。
顧客の期待を数値で把握し、障がいのある人々とも「走る喜び」を分かち合う。そして高級車としてのパフォーマンスを一切妥協せず、いかに責任を果たしてゆくのか。その戦略は、これからのラグジュアリーの定義を塗り替えるものとなるのかもしれません。

ポルシェ・イタリアが推進する主要な取り組み
1. 顧客調査から見えた「環境意識」の劇的な変化
まずポルシェ・イタリアは新型「マカン・エレクトリック」の発売に際して約2,500名を対象とした市場調査を実施したそうですが、そこにはブランドの未来を左右するデータが現れていたとのことで・・・。
| カテゴリ | 調査項目 | 結果・数値 |
| 調査対象 | ポルシェ顧客&競合車オーナー | 計2,500名 |
| 購入動機 | 「環境への影響」を重視する割合 | 全体の約50% |
| 既存顧客 | 環境負荷をEV購入の動機とする割合 | 約40% |
| 新規顧客 | 競合ブランドから移行を検討する際の環境重視度 | 約55% |
この結果は、サステナビリティがもはや「おまけ」ではなく、ブランド成長と信頼構築の核心(核)であることを示しています。
2. サーキットでも「グリーン」を貫く:タイカン・ラッシュ
イタリア独自の試みとして始まったBEVモデル向けのサーキットイベント「タイカン・ラッシュ」では、単にコースを走るだけでなく、運営全体で環境負荷を低減しているといい・・・。
- CO2削減: 徹底した廃棄物分別により、5.7トン以上のCO2排出を回避
- リサイクル素材: スタッフウェアの最大70%にリサイクル素材を使用
- 地域貢献: ケータリングには地元産の有機食材を採用し、余った食料は寄付

3. 「誰一人取り残さない」インクルーシブな体験
さらにポルシェは、身体的・認知的な壁を超えた「インクルージョン(包摂)」にも力を入れている、とのこと。
- 視覚障がい者支援: 2025年よりUICI(イタリア盲人・視覚障害者連合)と提携。サーキットのレイアウトを指先で把握できる「3Dプリント触覚マップ」を提供
- Driversityプログラム: 運動機能に制限のある顧客に対応すべく特別に改造された車両での運転体験を提供
- 女性のエンパワーメント: 「W.E. Power」プログラムを通じ、護身術や安全運転講習を実施
パフォーマンスとパーパスの融合
ポルシェ・イタリアの戦略において特筆すべき点は、サステナビリティを「制約」ではなく「体験価値の向上」へと変換している点。
たとえば、ポルシェ・エクスペリエンス・センター(PEC)フランチャコルタでは、太陽光発電システムや40個の養蜂箱を設置して地元の生物多様性を支援しているそうですが、この施設はISO 20121認証を取得しており、ポルシェの理念が形になった場所であると認識されています。
こういった取り組みを見るに、競合他社が環境性能のみを競う中、ポルシェは「社会的な包摂」と「モータースポーツの伝統」を掛け合わせ、「目的(パーパス)を持ったリーダー」としての地位を盤石にすべく活動していることもわかり、これらは「(モータースポーツにおける豊かな歴史を持つ)ポルシェにしかできない」活動なのかもしれません。

関連知識:ESG経営における「アクセシビリティ」の重要性
近年では自動車業界のみではなく、デジタルマーケティングの世界でも「ウェブアクセシビリティ」は最重要項目の一つです。
そのためポルシェ・イタリアは、ウェブサイトにAIベースのウィジェットを導入しテキストの拡大やコントラスト調整、読み上げ機能などをユーザーが自由にカスタマイズできるようにしたとも説明されており、これは「ユーザー体験の質」が重視される現代において”非常に高度な”施策と言えそうですね。
結論:サステナビリティは「信頼」を創る新しいエンジン
ジャスミナ・シェヒ氏が率いるポルシェ・イタリアの取り組みは「世の中がそうだから」というう企業の義務感から来るものではなく、「未来の顧客との対話」そのもの。
「サステナビリティこそが、私たちが体験をデザインし、技術を開発し、ステークホルダーと関係を築く方法を形作っていくのです」。
この言葉通り、ポルシェは高いパフォーマンスと明確な目的意識を両立させることによってイタリア市場における圧倒的な信頼を勝ち取ろうとしており、スポーツカーの咆哮が静かなモーター音に変わったとしても、そこに込められた「情熱」と「責任」は、より深く、より確かなものへと進化しているというわけですね。

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参照:Porsche











