
| もはや中国はあらゆる意味において「あなどれない」 |
最新テクノロジーを活用し「絶版車」を蘇らせる
現在の自動車業界において、中国といえば最新の電気自動車(EV)が市場を席巻しているイメージが強いかもしれませんが、しかし今、EVとは真逆のベクトルである「クラシックカーの救済」において、中国のある工場が世界中のエンスージアスト(自動車熱狂者)から熱い視線を浴びているもよう。
上海から北へ約3時間、江蘇省宝応県に拠点を置く「Jiangsu Juncheng Vehicle Industry(江苏钧骋车业)」は、トヨタ・AE86(スプリンタートレノ/カローラレビン)や、初代フォード・ブロンコ、ダットサン240Z(日産フェアレディZ)、トヨタ・ランドクルーザーといった、世界中で愛される名車の「新品スチールボディパネル」や「完全なボディシェル(車体骨格)」をプレス成型で製造・供給するビジネスを急拡大させており、ハガティがその様子をYoutubeへと公開することに。
メーカー自身が部品供給を終了して久しい旧車市場において、この「新品のパーツやフレーム」がもたらす意味、そして自動車文化に与えるインパクトを考えてみましょう。
この記事の要約(3つのポイント)
- EVだけではない中国の底力:江蘇省の工場がハチロク(AE86)や初代フォード・ブロンコなどの絶版鉄製ボディパネルをプレス製造
- 米国のレストモッド市場を直撃:同社製の新品ボディシェルを採用したレストモッド車両が米国で40万ドル(約6,000万円)の高値で落札
- 名車たちの救世主へ:ポルシェ911(964)やメルセデス・ベンツ300SLガルウィングの新規ラインナップも間近、旧車維持のゲームチェンジャーに

EV大国の裏で進行する、もう一つの「自動車革命」
職人技とハイテクが融合する「Juncheng」の製造プロセス
自動車のボディパネルを正確に複製することは容易ではなく、しかしJuncheng社が世界のコレクターやビルダーから信頼される理由はその極めて高度な金型開発プロセスにあるといい、動画ではその工場の様子、工作機械、作業風景が仔細に記録されています。
1. 超高張力鋼を削り出すハイテク金型
新しい車種のパーツ製造に着手する際、まずCNC(コンピュータ数値制御)マシンを使用して超高張力鋼からプレス用の金型(ダイ)を精密に削り出します(おそらくは本物を3Dスキャンしてデータを作成するのだと思われる)。
2. 熟練職人によるハンドフィニッシュ
機械による削り出しだけでは、クラシックカー特有の繊細な曲面を完全に再現することはできず、そのため、最終工程では経験豊富な熟練職人が手作業で金型を研磨し、鏡面のように磨き上げるのだそう。
この「ハイテクと職人技の融合」によって、オリジナルのプレスラインを忠実に再現した金型が完成するというわけですね。

3. 微細なブラケットまで再現する徹底ぶり
著名な自動車カメラマンであるラリー・チェン(Larry Chen)氏はAE86のボンネットやドアスキン(外板)が次々とプレスされる様子を動画に収めており、驚くべきは大物の外装パネルだけでなく、車体を正しく組み上げるために不可欠な「小さなブラケット(取付金具)」やフィッティングパーツにいたるまで、専用の金型を起こして個別にプレス製造している点。
「100%新品」として蘇る名車たち
Juncheng社は単なる「補修用パネルの町工場」ではなく、車体丸ごとの「ボディシェル」を組み上げて出荷できるグローバルサプライヤーで、同社が製造・供給している、または近く開始する主なラインナップと、その技術的特徴は以下の通りだと紹介されています。
主要な製造対応車種と今後の展開
- トヨタ・AE86(ハチロク):ボンネット、ドアスキン、各種外板およびステー類
- フォード・ブロンコ(初代):完全なコンプリート・ボディシェル
- ダットサン・240Z(S30型 フェアレディZ):ボディパネルおよびシェル
- トヨタ・ランドクルーザー(FJ40系など):錆びやすいフロアやフェンダーを含むパネル類
- 1967年式 フォード・マスタング:マッスルカーの象徴的なボディラインを再現
- ポルシェ911(964型)【近日生産開始】:世界的に高騰する空冷911の救世主
- メルセデス・ベンツ 300SL ガルウィング【近日生産開始】:自動車史に輝く最高峰のクラシック

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久しぶりにスゴいの見たな・・・。中国の会社がハチロクの車体を3Dスキャンしレプリカのモノコックとパネルを販売、これで「新車のハチロク」を作れるように
Image:Alibaba | こういったビジネスがまかり通っていることが恐ろしいが、この会社はほかにもランドクルーザー、ディフェンダーなど人気車種のレプリカボディを販売している | しかも「まとまっ ...
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Juncheng製レプリカボディの特徴
| 項目 | 詳細仕様 |
| 主要素材 | 高品質自動車用スチール(鋼板) |
| 製造手法 | 自動プレスライン + ロボットレーザーカット + 自動電着塗装(EDコート) |
| 金型開発 | 22台の大型CNCミーリングマシンによる内製化 + 職人による手作業仕上げ |
| 出荷形態 | 単品パネル(ドア、ボンネット等)から、組み立て済みのフル・ボディシェルまで対応 |
| 実績 | 同社製ブロンコボディを使用した米国のカスタム車が40万ドル(約6,400万円)で落札されたことも |
「レストモッド」文化への貢献
クラシックカーの世界では、オリジナル車から錆を取り除き、往年の姿に戻す「純正レストア」が長年王道とされてきましたが、しかしどれほどエンジンや内装を綺麗にしたとしても、その骨格であるフレームやボディが錆で腐食していればクルマの寿命はそこで尽きてしまいます。
近年、メーカー側もヘリテージパーツの再生産(トヨタのGRヘリテージパーツプロジェクトなど)に乗り出してはいるものの、その多くはブッシュ類や灯火類、一部のギアなどに限られており、ボディ丸ごとを安定して供給することはコストや設備の面から「不可能」というのが現実です。
そしてここに、Juncheng社のようなサードパーティが「100%新品の鉄製ボディ」を供給する最大の価値があり、これによって現代の最新コンポーネント(EVパワートレインや最新のサスペンション、快適なエアコンなど)を新品のクラシックボディに詰め込む「レストモッド(Restomod)」文化が爆発的に進化する可能性を秘めているわけですが、実際に同社が製造したフォード・ブロンコのボディシェルを用いた車両がアメリカのオークションで40万ドル(1ドル=160円換算で約6,400万円)という超高額で取引された実績は「中国製ボディのクオリティが世界のトップビルダーに認められた」証左と言えそうですね。
錆との戦いに終止符を打つ、クラシックカー持続可能性の未来
「古いクルマを維持する」ということは、本質的に「錆との終わりのない戦い」を意味しており、特にAE86や240Z、ランドクルーザーといった日本の名車たちは当時の防錆技術の限界もあって、現存する個体の多くがボディの腐食に悩まされているという現実も。
Jiangsu Juncheng Vehicle Industryが提示したソリューションは、そんなオーナーたちの絶望を希望へと変えるもので、ポルシェ911(964はじめ空冷世代)やメルセデス・ベンツ300SLといった、数千万円〜数億円クラスの超プレミアムな旧車までカバーしようとする同社の動きは、今後のクラシックカー市場の相場やレストアの常識を塗り替える可能性を秘めています(ただ、様々な法規的な問題が存在するとは思う)。
最先端のEVで世界をリードする中国が、その圧倒的な製造インフラと資金力を活かして世界の自動車遺産(ヘリテージ)を裏から支えているという事実は、現代の自動車文化における最もエキサイティングなパラドックス(逆説)と言えるのかもしれず、今回ハガティが公開した動画は「非常に興味深い」例ということになりそうですね。
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参照:Hagerty











