
Image:Mitsubishi
| フォックスコンOEMの衝撃と走りの真価に迫る |
さらには「開発期間」「コスト」もかなり圧縮されたものと思われる
三菱自動車が2026年8月17日、オーストラリアおよびニュージーランド市場向けに新型バッテリーEV(BEV)『ASX VR-e』を2026年内に発売すると発表。
その姿は三菱らしくはなく、オペル・モッカ(下の画像)を連想させるようにも思えますが、今回の発表で何よりも驚かされるのは車名に冠された「VR-e」の文字です。

Image:Opel
この「VR」の文字はかつてWRCや公道で一世を風靡した伝説のハイパフォーマンスモデル『ギャランVR-4』に由来しており、ここからも三菱の(このクルマにかける)本気が伺えようというものですが、さらに注目すべきは台湾の電子機器製造大手・鴻海(ホンハイ)精密工業(Foxconn)グループ傘下の「鴻華先進科技(Foxtron)」からのOEM供給を受けるという、新たなアライアンス戦略によって展開されること。※鴻海はiPhoneの製造を請け負っていることでも知られる
ここでは「なぜ今VR-4の名を冠するのか」「台湾メーカー製のEVで三菱らしい走りは実現できるのか」という疑問に対し、技術的背景や市場での立ち位置を含めて様々な角度から考えてみましょう。
【30秒でわかる】新型ASX VR-eの要点サマリー
- 「VR-4」の遺伝子を継承:伝説のスポーツセダン「ギャランVR-4」に由来するネーミングで、スポーティな走りと先進性を表現
- 異例のタッグ:FoxconnグループのEVメーカー「Foxtron(鴻華先進)」からOEM供給を受ける新型スモールSUV
- 三菱独自の足回りチューン:現地での走り込みを実施し、三菱エンジニアが専用サスペンションチューニングを敢行
- 空力特化デザイン:フロントの「Sダクト」や「アクティブグリルシャッター」により、航続距離とデザイン性を両立
- オセアニア市場へ2026年内投入:オーストラリア・ニュージーランドの都市部EV需要をターゲットに展開
伝説の「VR-4」スピリットと車名の由来
三菱ファンにとって「VR-4」といえば、1980年代後半から1990年代にかけて4WDハイパワーターボとして一世を風靡した「ギャランVR-4」や「レグナムVR-4」を真っ先に思い浮かべるのではと思います。
そして今回の『ASX VR-e』における「VR-e」はまさにこのギャランVR-4に由来していて、「VR(Viscous-coupling Realtime 4WD)」が持っていた「走りの高揚感と先進技術」というアイデンティティを、電動化時代に合わせて「e(Electric)」へと昇華させたというわけですね(もちろんビスカスカップリングは持たないと思われるが、そのコンセプトを汲んでいる)。
そしてこのVR-eは「VR-4にあやかろう」というものではなく、三菱のエンジニアがオーストラリアやニュージーランドの現地路面で徹底的な走り込みを実施し専用のサスペンションチューニングを施すことで「ドライバーの意思に忠実なハンドリングと高い路面追従性」を実現したもので、つまり「名ばかりのVR」ではなく、しっかりと走りの味付けが行われている点が大きなポイントです。
エクステリアと空力テクノロジー
デザイン面ではBEVならではの優れた空力性能(CD値低減)と先進的なスタイリングが融合されており・・・。
- Sダクト(フロント):フロントバンパー中央からボンネット上面へとスムーズに空気を導く構造を採用。
- アクティブグリルシャッター:走行状況に応じて開閉し、空気抵抗を抑えて電費性能の向上に貢献。
- 統一感のあるグラフィック:前後ランプやリヤピラー、Cピラー、アルミホイールに水平基調の「ストライプパターン」を共通モチーフとして採用。
新型『ASX VR-e』スペック・概要一覧
| 項目 | 内容 |
| 車両名称 | ASX VR-e(エーエスエックス ブイアール イー) |
| ボディタイプ | スモールSUV |
| パワートレイン | バッテリーEV(BEV / 完全電気自動車) |
| OEM供給元 | 鴻華先進科技股份有限公司(Foxtron / Foxconnグループ) |
| 足回り設定 | 三菱エンジニアによる現地専用サスペンションチューニング |
| エアロダイナミクス | Sダクト、アクティブグリルシャッター装備 |
| 主要投入市場 | オーストラリア、ニュージーランド(2026年内発売) |

Image:Mitsubishi
【背景と知見】欧州仕様のASXとの違いと、三菱の「新アライアンス戦略」
なお、ちょっと疑問に思うのが「欧州で売られているASX(ルノー・キャプチャーのOEM車)とは何が違うのか」ということ。
ここを押さえておくと、今回の発表の深みがより理解できるように思われ、現在、欧州市場で展開されている『ASX』は日産・ルノー・三菱アライアンスを活用したルノー・キャプチャーベースのモデル(ガソリン/HEV/PHEVメイン)です。
一方で今回のオセアニア向け『ASX VR-e』は、フォックスコン / Foxconn(Foxtron)のEV専用プラットフォームを活用した完全なBEVなので、同じ名前を持っていても「根本が異なるクルマ」というわけですね。
なぜFoxconn(Foxtron)なのか?
三菱自動車は新中長期ビジョンにおいて、自社の強みである「PHEV/HEV」および「オフロード・アセアン向け車種(トライトンやデリカD:5など)」の開発に自社リソースを集中させています。
その反面、急速に電動化が進む海外都市部の「純粋なBEV(電気自動車)」需要に対しては、自社でゼロから開発するのではなく、Foxconnのような最新のEV受託生産プラットフォームを活用(OEM)することで開発コストとスピードを最適化する戦略をとっているということに。
なお、フォックスコンは自社名義にてEVを展開することは考えておらず、あくまでも「生産の請負に徹する」という比較的珍しいスタンスを貫いています(自社名義のコンセプトカーを発表することもあるが、それは生産委託元を探すためである)。
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競合モデルとの位置付け
オーストラリア・ニュージーランドのEV市場ではBYD(ATTO 3)やヒョンデ(KONA Electric)、MG(MG4)といったアジア圏からのコンパクトEVSUVが激しいシェア争いを繰り広げているというのが現状で、『ASX VR-e』はこれらの競合に対して「三菱が長年現地で培ってきた信頼性」と「三菱のエンジニアがチューニングした走りの質感(VR-eの走り)」を強みとして打ち出し、新興EVブランドとの差別化を図る狙いがあるのだと考えられます。
結論
今回発表された『ASX VR-e』は単なるOEMモデルの追加にとどまらず、三菱自動車が電動化時代を生き抜くための「しなやかなアライアンス戦略」を象徴する一台。
自社の強みであるPHEVや四輪制御技術にリソースを集中させつつも純粋なBEVにおいては外部パートナー(Foxtron)のプラットフォームを巧みに活用し、そこに「VR-4」ゆずりの走りのこだわりを注入することで、三菱らしい魅力的なクルマに仕上がっているものと考えてよく、現時点ではオーストラリア・ニュージーランド市場専用モデルとされていますが、受託生産最大手Foxconnとのタッグから生まれる”新世代ミツビシEV”がどのような走りを見せてくれるのか、今後の市場での評価と日本を含めた他地域への展開可能性にも要注目だと思います。
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