
| マセラティはラグジュアリーとイタリア美学にこだわりつづけ「美と物語」にフォーカス |
こういった「宣言」はマセラティにしかできないであろう
音楽、執筆、ソーシャルメディアなどあらゆる分野に生成AI(人工知能)の波が押し寄せている現在ではありますが、自動車業界においてもAIを活用したコンセプトデザインや空力シミュレーションの導入が日々進んでいるという状況。
ただし、すべてのメーカーがその波に無条件で乗り込んでいるわけではなく、イタリアを代表する高級スポーツカーブランド「マセラティ」のデザイン部門を率いるクラウス・ブッセ(Klaus Busse)氏は同社のデザインにおける「人間の役割」の重要性を強く訴えることに。
今回はなぜマセラティがAI時代においても「人間主導のデザイン」にこだわり続けるのか、その背景とブランド哲学について考えてみましょう。
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この記事の要約
- マセラティのデザイン責任者、クラウス・ブッセ氏がAI主導の車両デザイン設計に対して否定的な姿勢を表明
- AIをマーケティング等で活用しつつも、クルマのデザインにおいては人間の情熱・感性とクラフツマンシップ(伝統工芸)を最優先
- GMなどAIを開発・空力解析の主力に据える量販メーカーとは対照的に、マセラティは「美と物語」を売るブランド展開を堅持

ィのデザイン思想とAIに対するスタンス
マセラティは100年以上の歴史の中で、初代ギブリ(Ghibli)やメラク(Merak)、そして近代のMC12など、自動車史に刻まれる数々の傑作デザインを生み出してきた伝説のブランド。
そしてくだんのクラウス・ブッセ氏は、ファッションの世界で大きなロゴを誇示する時代が終わり「ブランドの真の意味」を示すことが求められているのと同様に、自動車デザインにおいても表面的な派手さではなく、ブランドのアイデンティティそのものを表現することが不可欠だと語ります。
世代ごとに変化するマセラティのデザイン哲学
- 1950年代: 胴体(Fuselage)デザインの時代
- 1960年代: ダンディ(Dandy)なスタイリングの時代
- 1970年代: プログレッシブ(Progressive)な先進性の時代
- 1980年代: プラグマティック(Pragmatic)な実用モデルの時代
- 1990年代: ブルータリスト(Brutalist)な迫力ある造型の時代
同氏は「時代の社会的期待と技術の可能性によって各章が紡がれてきた」としつつも、AI時代におけるデザインの本質は「制作に関わる人間やクリエイターの存在感をしっかり見せること」だと強調し、過去にマーケティング動画「Never Stop Dreaming」などで全編AI制作コンテンツを取り入れた経験はあるものの、車両自体のデザインにおいてはコンピューターに主導権を渡さず、あくまで人間が手がける造形美を追求する方針を示しています。
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マセラティのデザインアプローチと主要な要素
マセラティの最新ラインナップ(MC20、グランツーリスモ、グレカーレ等)には巨大なトライデント(三叉の銛エンブレム)やサイドフェンダーの3本エアベントなど、一目でそれと分かる共通のディテールが組み込まれています。
ボディラインを無意味なウイングやエアベントで分断することを避け、ハーフ・ラグジュアリー&ハーフ・スポーツカーとしての流麗な彫刻的造形を維持している点が特徴となっており・・・。
- ブランドの基本姿勢・・・ハーフ・ラグジュアリー / ハーフ・スポーツカー
- 象徴的なディテール・・・フロントグリルの大型トライデント、フェンダーのエアベント
- ボディ造形の特徴・・・線を途切れさせる無駄なウイングや穴を極力排した彫刻的なサーフェス
- AIの活用範囲・・・オンライン広告・マーケティング等(車両デザインの根幹には不使用)
- デザインの価値観・・・巨大なブランド主張ではなく、物語や細部のクオリティで魅せる

自動車業界全体でのAIに対するアプローチは?
自動車業界全体を見渡すと、AIに対するアプローチはメーカーの立ち位置によって大きく異なります。
例えば、米国のゼネラルモータース(GM)はAIを最も積極的に導入しているメーカーの1つでもあり、GMは2Dスケッチから3Dデザインを生成するモデルを活用したり、空力性能のシミュレーションを数週間からわずか数秒に短縮することでデザイナーの作業を高速化・効率化していることが報じられ、GMは「AIは人間の専門知識を倍増させるツール」と捉え、量産車開発におけるスピードと自由度を高めるために利用しているというわけですね。
その一方、マセラティのようなラグジュアリーブランドのユーザーは機能性ではなく「そのクルマにどれだけの情熱や職人技(クラフツマンシップ)が注がれたか」を重視することとなり、デジタル時計と高級機械式時計の違いのように、時間を知るという機能を超えた「技術や美学への敬意」こそが購買の決め手となるため、マセラティは人間によるデザインの価値を守り続けているということに(GMは車種も多く、不特定多数の人々をターゲットとしたクルマでもあり、AIをフル活用しなければ業務が立ち行かないのかもしれない)。
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補足情報・新しい気付き
中国市場を中心とした新興EVメーカーの台頭により、自動車業界ではブランドロイヤルティ(顧客の忠誠心)が薄れつつあると言われています。
そうした市場環境の中でマセラティが提示する回答は「過剰な装飾や目立ちすぎるブランディングに頼らない静かな主張」。
AIは過去のデータを学習して既存のトレンドを効率よく再構成することには長けていますが、ブランドの歴史的背景を理解し、人間の情感に訴えかけるような新しい美を生み出すことは(現段階では)難しく、ブッセ氏が示す「人間の作り手を見せる」という姿勢は技術至上主義に傾きがちな現代の自動車業界に対する”伝統的ラグジュアリーブランドからの重要なメッセージ”なのかもしれません。
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結論
AIテクノロジーが急速に発展する現代においても、マセラティは「人間にしか生み出せない情熱と美しさ」をカーデザインの中心に据え続けている、というのが今回のストーリー。
量販メーカーがAIを用いて開発を効率化・加速させる一方、マセラティはイタリアの伝統的なクラフツマンシップと人間味溢れる造形力を武器として独自のラグジュアリー像を確立しようとしているのがいま現在。
今後も”人間のデザイナーの手によって”、画面上の計算だけでは到達できない「走る芸術品」としての魅力が紡がれてゆくことは間違いなく、マセラティの未来には大いに期待したいと思います。
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参照:CARBUZZ











