
Image:Rimac
| 10年前はまったくの無名だったリマック |
なぜリマックがここまで高く評価されるのか
10年前、クロアチアの自動車メーカー「リマック(Rimac)」を知っていた人はほとんどいなかったと思いますが、しかし現在、リマックは世界のEV市場における最重要プレイヤーのひとつとして誰もが知る存在となっています。
創業者であるメイト・リマック氏が2009年にBMW 3シリーズをEV化した挑戦から始まり、2011年には1,287馬力を誇る「コンセプト・ワン」を発表。
以降、スーパーカーをショーケースにしながら、EV技術供給ビジネスにおいて飛躍を遂げてきたという歴史を持っています。
Image:Rimac
-
-
リマック、次世代固体電池と新型eアクスルを発表。BMWやポルシェに供給の可能性も想定され「テック企業へと」変貌中
Image:Rimac | ハイパーカーメーカーから技術供給企業へ進化するリマック | もはや「ハイパーカーメーカー」として会社を存続させることは難しいであろう クロアチアのハイパーカーメーカーリマッ ...
続きを見る
世界中の大手自動車メーカーが次々と出資
2018年にはポルシェがリマックの株式10%を取得し、2019年にはヒョンデ・キアが約1億ドルを投資。
以降、アストンマーティン「ヴァルキリー」やケーニグセグ「レゲーラ」、ピニンファリーナ「バッティスタ」など、数々のハイパーカーにリマック製バッテリーや電子システムが採用されており、現代のハイパフォーマンスエレクトリックカーは「リマック抜きでは語れない」ともいえるほどにその存在感を強めています。
The design brief? “Make it impossible to ignore.”#Rimac #NeveraR
— Rimac Automobili (@AutomobiliRimac) August 27, 2025
__
Rimac Nevera: WLTP: electricity consumption, combined 30.0 KWh/100km; CO2 emissions: combined in g/km: 0 pic.twitter.com/K4E0D7ALiH
ブガッティやBMWとの提携強化
リマックは現在、ポルシェと共同でブガッティを運営し、最新ハイパーカー「トゥールビヨン」にはリマックのハイブリッド技術が組み込まれているのは既知の通り。
さらにBMWとは大規模なバッテリー供給契約を結び、将来のEVラインナップにリマック製の技術が広く使われる予定です。
Image:Rimac
また、サウジアラビアの新興EVメーカー「Ceer」との提携も発表し、グローバル市場での存在感を急速に高めているというのが最近のリマックではありますが、ミュンヘンで開催されたIAAモビリティ2025では、リマックが「固体電池含む」次世代EV向けの新技術を一挙に発表し、さらにEV業界における存在感を強めているという状況です。
The Rimac Nevera R is at the Bingo House for #MontereyCarWeek — all week long. Customer Neveras are here too with some epic specs. Contact @Bingo_International on Instagram or @AnnaFeneru to visit. #Rimac #MCW pic.twitter.com/96A92V37h5
— Rimac Automobili (@AutomobiliRimac) August 14, 2025
- 固体電池(SSD)開発:三菱ケミカルやProLogiumと共同研究。航続距離・効率・充電性能を大幅に向上。
- 新型リチウムイオン電池(46XX):複合素材によるパッケージング改善で軽量化・熱管理性能向上。EVだけでなくハイブリッドにも対応。
- 次世代ECU:複数機能を統合し、小型・軽量化を実現。車両スペース効率や信頼性を改善。
-
-
リマックがそのCEO、メイト・リマック専用車を公開。祖国クロアチアへの愛が詰まった仕様を持ち、シート左右は色違い、それぞれに自身と妻の名が刺繍にて再現
Image:Rimac | 自身の会社を立ち上げ、自身の名を持つハイパーカーが納車されるのは格別の喜びに違いない | 世界中探しても、同様の経験ができるのはわずか数人である さて、リマックがそのCEO ...
続きを見る
EV業界のキープレイヤーへ
わずか10数年で、無名のスタートアップから世界的大手メーカーに技術を供給する存在へと成長したリマック。
今や「ネヴェーラ」などのスーパーカー以上に、その電動化技術の供給力が注目される存在となり、固体電池や次世代パワートレインを武器に、リマックは今後もEV業界の中心的存在であり続けることは間違いなさそうです。
Monterey Car Week reminded us how far we’ve come — and how much further we’re going. With passionate people and incredible cars, we celebrated our journey and hinted at what’s next. Monterey, thanks for the memories. The best is yet to come.
— Rimac Automobili (@AutomobiliRimac) August 20, 2025
Read more: https://t.co/Ft5kJBqtsG pic.twitter.com/CskRmssQbt
現時点ではまだまだ「電動ハイパーカーメーカー」として一般に捉えられることが多いリマックですが、自動車業界では「電動化技術のサプライヤー」として認識されるようになってきており、今後同社のハイパーカーは「それ単体での利益を追求するための商品」ではなく、同社の技術を幅広く知らしめるための”走る広告塔”となるのかもしれませんね。
-
-
【世界最速EV再び】ケーニグセグやブガッティもなんのその、リマック「ネヴェーラR」、0-400-0km/h加速で25.79秒の新記録、さらにはEV最速記録を樹立【動画】
Image:Rimac | リマック・ネヴェーラ Rが25.79秒で0-400-0km/hを達成、電動ハイパーカーの新境地へ | 「ついで」に合計24者記録を更新 クロアチアの電動ハイパーカーメーカー ...
続きを見る
リマックの「会社構造」はどうなっているのか
そこで現時点の「リマックの構造」について整理しておくと、ざっと以下のとおり。
-
リマックグループ・・・株主構成はメイト・リマック37%、ポルシェ24%、ヒョンデ14%、その他の投資家が残りを占めるという内訳
-
ブガッティ・リマック・・・リマックグループ55%、ポルシェ45%という出資比率で構成される。なお、傘下にはこれまでのブガッティである「ブガッティ・オトモビル」、リマックの市販車部門であるリマック・アウトモビリ」が収まる
-
リマック・テクノロジー・・・リマックグループの100%子会社
-
-
33歳でブガッティを支配下に置いた男、メイト・リマック。その生い立ち、これまでの歩みを見てみよう
| メイト・リマックが「リマック・アウトモビリ」を設立したのは21歳、そして12年後には事実上ブガッティを手中に収める | ここまで急速に成長した自動車メーカーも珍しい さて、先日ブガッティとの合弁会 ...
続きを見る
かなりややこしいのですが、リマックグループが「中核」にあり、ここが100%子会社としてリマック・テクノロジーを所有し、出資比率55%にてブガッティ・リマックを所有しているということに。
Out of the dark, into focus. the Rimac Nevera R is a reminder that true innovation endures—both in design and performance.#Rimac #NeveraR pic.twitter.com/T3TEqJ5gEJ
— Rimac Automobili (@AutomobiliRimac) July 28, 2025
そしてブガッティ・リマックの残りはすべてポルシェによって株式が所有されているので、ブガッティ・リマックは「リマックとポルシェのみが関与している」というのが現在の状況です。
参考までに、ポルシェ(ポルシェAG)の発行済株式のうち25%はポルシェ・オートモービル・ホールディングSE(ポルシェ家とピエヒ家による持株会社)によって所有され、フォルクスワーゲンAGはこの25%を含めた75.4%を保有しており、残りの24.6%が一般投資家によって保有されています。
-
-
ブガッティ・ヴェイロンという“常識を超えた夢”を実現した人物──フェルディナント・ピエヒとは何者だったのか。けして限界を受け入れなかった男
| 2005年当時、「1,000馬力」はまだ空想上の産物でしかなかった時代にヴェイロンを市販 | 限界を受け入れなかった男、それがフェルディナント・ピエヒである 自動車の技術が大きく進歩する時代(ある ...
続きを見る
ただ、注意すべきは機関投資家や個人投資家などが保有する「浮動株」には議決権がないということで、ポルシェは実質「ポルシェ家とピエヒ家の支配下にある」と考えてよく(そしてポルシェ家とピエヒ家はフォルクスワーゲンをも支配している)、この構造がたびたび問題視されたり「お家騒動の原因」ともなっているわけですね。
-
-
ポルシェ創業者一族、フェルディナント・ピエヒ氏が亡くなる。アウディ・クワトロ、ブガッティ・シロンなどVWグループの「顔」をつくり続けた豪傑
| ここまで方針が明確で、推進力と権力を持った人物は他にいなかった | ポルシェ創業者一族にしてポルシェ創業者の孫、さらに前フォルクスワーゲン会長、フェルディナント・ピエヒが82歳にて亡くなった、との ...
続きを見る
あわせて読みたい、関連投稿
-
-
ケーニグセグ vs リマック。ハイパーカー最速バトルを繰り広げてきたライバルの舞台裏とその未来について考える
Image:Koenigsegg | ケーニグセグとリマックほど「記録を抜きつ抜かれつ」している例は他にない | しかしながら両者はけっこう仲がいいようだ ハイパーカー業界における双璧が「ケーニグセグ ...
続きを見る
-
-
ブガッティ・リマックCEOが語る「やりたくないこと」2つ。「ブガッティはもはやVWとはなじまなくなった」とも
| ブガッティ、リマックともに究極のパフォーマンスを標榜するブランドではあるが、構成される要素はそれぞれ異なる | いずれも重要なのは「ほかのクルマとは異なる、完全オーダーメイドであること」 さて、昨 ...
続きを見る
-
-
ブガッティを配下に置いたリマックCEO語る。「私は安全策を取るような人間ではない。絶対にだ。だから、ブガッティ・リマックでも保守的な役員とは衝突するだろう」
| ブガッティ・リマックではなにか「とんでもない」クルマが発売される可能性がありそうだ | リマックはテスラとともに「ソフトウエア開発会社」型の考え方をする企業だと言える さて、リマックばブガッティを ...
続きを見る
参照:Rimac