| 「ベクター」については何度かその復活がウワサされているが |
復活の際には当時のW8同様、ライバルを圧倒する性能を誇って欲しいものだ
さて、数奇な運命を辿ったベクター(ヴェクター)W8のストーリーがYoutube上へと公開されてちょっとした話題に。
動画によれば、このベクターW8はベクター創業者、ジェラルド・ワイガート氏が所有していた固体だそうですが、25年ほど行方不明となっていたのちにその所在が知られることとなり、ただし発見された際には他の人の名義にて登録されていたため、長い法廷闘争のを繰り返したのち、ようやくジェラルド・ワイガート氏の遺族が所有権を取り戻した、と紹介されています。
ちなみにぼくはこのベクターW8が大好きで、そのほかジウジアーロ・アズテック、フェラーリ・ミトス、ブガッティEB110、イズデラ・インペレーター108i、メルセデス・ベンツC111など、ウエッジシェイプを持ち、かつ先進的なクルマを好む傾向にあります。
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このベクターW8はこんな運命を辿ってきた
まず、このベクターW8は1988年に発表されたスーパーカーで(ベクターはアメリカで最初のスーパーカーメーカーだとされている)、GMより供給を受けた6リッター・ツインターボV8(625馬力)をミッドマウントし、3速オートマチック・トランスミッションを介して後輪を駆動します(ATを採用した理由としては、当時のマニュアル・トランスミッションがこのエンジンのトルクに耐えることができず、よってトルコン式ATが選ばれたと言われている)。
0-100キロ加速は4.2秒(1987年発売のフェラーリF40は0-100km/h加速”3.8秒”を記録している)、最高速345km/hというスペックを誇り、つまりは世界トップレベルの性能を有していたクルマとしても知られています。
そしてスペック以上に驚かされるのがこのスタイリングであり、その全高はわずか1,080ミリにとどまり、ロータス・エスプリの1111ミリよりも低く、ランボルギーニ・ミウラと(1,080ミリ)同じ数値(おそらく、量産車としてはミウラと並んで世界で最も低い全高を持つクルマだと思われる)。
創業者のジェラルド・ワイガート氏は航空産業出身だといい、そのためにエアロダイナミクスを非常に重視したという話もあるようですね。
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スペック、そしてデザイン的にも圧倒的な排他性を持つのがこのベクターW8ですが、当時(あまりに高価であったためか)販売状況は芳しくなく、販売されたのは17台のみ、そのほかにもプロトタイプが2台存在し、そのうちシャシーナンバー17はジェラルド・ワイガート氏が個人的に登録した、と言われています。
残念なことにベクターはその後経営状態が悪化して1992年にはメガテックに買収され(メガテックは1993年から1998年までランボルギーニの親会社であった)、その際にジェラルド・ワイガート氏所有のW8(シャシーナンバー17)までもが差し押さえられることになりますが、メガテックはジャクソンビルにあるランボルギーニUSAの本社にてベクターW8を保管することになり、その後に欧州へと輸送しています。
ベクター買収から25年後、このベクターW8が発見される
そしてジェラルド・ワイガート氏がこのベクターW8の所在を知ることになったのは「メガテックによる買収から25年ほどが経過した後」で、メガテックが個人オーナーへと該当のW8を売却した後だそうですが、そこからは自身のベクターW8を取り戻すべく訴訟を展開し、その主張は「そのベクターW8は自身の個人所有車両であり、会社を買収する際にそれを押収することはお門違いで、よってベクターW8は自身に返還されるべきである」。
たしかにこの言い分には一理あり、しかし訴訟は泥沼化して解決せず、惜しむらくは志半ばにて(2021年に)ジェラルド・ワイガート氏は他界してしまい、そこでその遺族が同氏の意思を引き継いで訴訟を継続することに。
ただ、悪いことばかりではなく「喜ばしいこと」も起こっており、というのはつい最近になってようやく和解が成立し、「このベクターW8はジェラルド・ワイガート氏の個人所有車両であり、会社の資産とは分けて考慮されるべきである」と認識されて遺族の元へと晴れて返還されたため。
そしてこちらが和解後に遺族の元へと送られてきたオリジナルの製造者明細書(MSO)で、長い年月を経て、ようやくこのベクターW8は創業者一族のもとへと戻ってきたわけですね。
ベクターW8「シャシーナンバー17」の数奇な運命を紹介する動画はこちら
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参照:CuratedTV