
| テスラが“絶対拒否”していたCarPlayをついに導入 |
一方でアンドロイドオートには「未対応」のまま
テスラはこれまで、Apple CarPlayと Android Autoを一切サポートしない唯一の大手自動車メーカーとして知られてきましたが、しかしついにこの方針が揺らぎ始めています。
Bloombergが内部関係者の話として報じたところによると、テスラは現在「Apple CarPlay」対応の開発を進めており、実装に向けてテストを開始しているとのこと。
ただしAndroid Auto 対応は進めていないとされ、今後の対応についても「未定」とされています。
テスラ独自OS内に“CarPlay専用ウインドウ”を表示する方式
テスラは車両全体をOSで制御しているため、一般的な自動車のようにCarPlayがインターフェース全体を上書きすることは不可能です(ここがソフトウエア定義車両の難しいところでもある)。
そのためテスラ版CarPlayは、
- テスラOS内の1つのウインドウとして動作
- 車両設定・HVAC(エアコン関連)・ADAS(運転支援)などは引き続きテスラOSが管理
という形式になる見込みで、より深く車両に統合する「CarPlay Ultra」については多くのメーカー同様、テスラも採用しない方針と見られます。
なお、この「アップルカープレイ」に実際に対応できる時期は未定だとされ、まだシステムは開発中の段階にある、とのこと。
導入の背景は「販売不振」。25〜38%の購入者が“CarPlay非対応車は買わない”
テスラがこれまでに「絶対導入しない」としていたアップルカープレイに対応するという「方針転換」最大の理由は深刻な販売減速。
McKinsey & Co. の調査によれば・・・。
- EV購入者の25%
- ガソリン車購入者の38%
が「Apple CarPlayを使えない車は絶対に買わない」と回答しているそうで、テスラは現在取りこぼしているこれらの層にアピールすることを今回の目的としているわけですね。
実際のところ、スマホ世代にとってCarPlayは“必須装備”であり、テスラが販売を伸ばす上で無視できない要素なのかもしれません(実際、さらにこの需要は高まってゆくものと思われる)。
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こうやって聞くと「テスラは容易にその信念を曲げた」ようにも見えますが、別の角度から見ると「販売伸長のためには信念を無視してまで株主の期待に答える」会社であると考えることもでき、信念に固執して販売が伸びず、そのまま「潰れてしまう」会社よりはよっぽどいい、とも考えています。
テスラが拒否する中、他社も“追従”…しかし状況は変わりつつある
テスラはCarPlay非対応の象徴的存在でしたが、他社にも「非対応」が存在し・・・。
- リビアン(Rivian):CarPlay/Android Auto非対応
(ただしGoogle Mapsと統合し、ルート案内は可能) - GM:EVからスマホミラーリング全面廃止、今後の全車種でも非採用へ
これらメーカーの主張は概ね共通しており、その言い分としては「CarPlayやAndroid Autoでは、EVのバッテリー情報と連携できず、最適な充電ルート案内ができない」から。
しかし実際には、ポルシェ・マカンEVに搭載される「Apple Maps EV ルーティング」など、CarPlayを通じた「EV(バッテリー事情)と連携した高度なルート案内」が実現しつつあるというのもまた事実。
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つまり、「技術的にできないから非採用」という理由は、すでに成立しなくなっていると言える状況でもあり、今回の「テスラがアップルカープレイ採用」という事情についても、「技術的に可能になったから」という理由がいくばくかは関係しているのかもしれませんね。
テスラはEV専用機能をCarPlayに統合するのか?
現時点では、テスラのCarPlay対応が、
- ただの基本ミラーリングなのか
- 充電ルート案内などEV特化機能を含むのか
はナゾのまま。
ただし、今後の販売戦略を考えると、
“最低限のCarPlay対応”に留める可能性も高いのでは、と見られます。
テスラは車両OSを完全に自社で管理したい企業であり(なんといっても自社をして「自動車メーカーではなくソフトウエア会社」だと表現している)、Appleに主導権を渡したがらないから(あるいはアップルにノウハウを渡したくない)で、ここだけは「絶対に譲れない部分」なのかもしれません。
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まとめ:テスラの“絶対方針”がついに崩れる。業界への影響も甚大
今回の動きで明らかになったのは以下の点。
- テスラがついにApple CarPlayのサポートを開発中
- Android Autoは依然として非対応
- 販売不振と消費者調査が方針転換の決定打
- Rivian、GMなど、テスラ追従メーカーへの影響も確実
- EV特化のCarPlay機能を提供するかは不明
長年「CarPlay不要論」を掲げてきたテスラが方針を変えたことで、今後は他社もミラーリング非対応を正当化しづらくなるのは間違いなく、EV市場の競争が激化する中、消費者の声がテスラを動かしたひとつの例となりそうです。
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参照:Jalopnik

















