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| ポルシェはやはり「電動」に集中した戦略を継続 |
ポルシェが電動モータースポーツに「本気」を示す時
ポルシェにとってモータースポーツはブランドのDNAそのものであり、これまではル・マンやF1など「伝統的なモータースポーツ」の成功がその歴史を形作ってきたという事実も。
しかし今、その焦点は明確に「電動モータースポーツ」へとシフトしていて、現フォーミュラEのマニュファクチャラーズ世界チャンピオンであるポルシェがこの電動トップカテゴリーにおける野心をさらに明確にする、と発表を行っています。
まだまだフォーミュラEは盛り上がらないが
現在ポルシェはフォルクスワーゲン・グループに属していますが、同グループは様々な想定外の事情によって思うような利益を得られず、よって「台所事情が苦しい」状況です。
そのために選択と集中が要求されているわけですが、結果的にポルシェはWECから撤退し「フォーミュラEとIMSAに集中」することとなり、一方で同じグループ属するアウディはF1での勝利を目指すなど、各ブランドがそれぞれの使命をもって「頂点」を目指すことに(ブランドごとにカテゴリが”被る”と費用負担の無駄が生じるため、それぞれ被らないように慎重に費用対効果が高いカテゴリが定められている)。
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そしてポルシェが「WECから撤退しつつもフォーミュラEへの取り組みを強化する」理由としては、「WECの人気がある地域ではポルシェは一定のポジションを確立しており、よってそこで勝利を挙げたとしても費用対効果が薄い」と考えた可能性が高く、一方でフォーミュラEは「これから」盛り上がる可能性が高く、そこで絶対的な地位を築くことで今後の電動化社会におけるビジネスを有利に進めたいという意図が強いのではと推測しています。
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ただ、現時点ではフォーミュラEは「ほぼ盛り上がらず」、現在のチャンピオンがどのチームとドライバーなのかを知る人は少ないかと思いますが、「どこかで」風向きが変わり、F1のように大きく盛り上がる場面が出てくるのかもしれません。
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600kW超の次世代マシン「GEN4」の衝撃
そこでポルシェは2026/2027年シーズン(シーズン13)から自社で最大4台のレースカーを投入し、さらにカスタマーチーム1チームも参戦させるという最大6台体制での参戦計画へ。
これは、ポルシェがフォーミュラEを単なる広告塔ではなく、「未来の市販車開発に直結する重要な技術開発の場」として捉えていることの証明であるとも考えられますが、ポルシェがこの大掛かりな体制拡大で迎えるのは、次世代のフォーミュラEマシン「GEN4」規定が適用されるシーズン。
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現在、GEN3マシンで最大350kWの出力となっているのに対し、GEN4ではそのパワーが大幅に向上して600kW(816PS)以上になると予想され、これはフォーミュラE史上最大の性能向上でもあり、まさに電気自動車の技術革新のスピードを象徴しているかのようですね。
「フォーミュラEは、他のレースシリーズと比較して、コストとリターンのバランスが非常に魅力的です。また、私たちの市販スポーツカーに関連する技術ソリューションをさらに開発する機会を与えてくれます。」
ポルシェ モータースポーツ部門副社長 トーマス・ラウデンバッハ氏
参戦台数を増やすことは、すなわちデータ収集量、開発の加速、そして技術的な優位性を確保することに直結し、ポルシェはここでの勝利による知名度やイメージの向上に加え、市販車開発における郵政も確保したいと考えている、ということになりそうです。
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大規模な「運用体制の転換」と人材育成
ポルシェは単にマシンを増やすだけでなく、その運用コンセプトそのものを調整するといい、計画では2つ目のチームもポルシェの開発拠点であるヴァイザッハに拠点を置く予定なのだそう。
ラウデンバッハ氏は「追加のマシンをマーケティングするにあたり、単に現在の体制を拡大するだけでなく、できる限り独立性を高めたい」とも語り、これは競争原理を最大限に活用し、内部で技術開発を競わせる狙いがあることを示唆しています。
ドライバー以外の「才能」の発掘
ポルシェの狙いはドライバーだけに留まらず、電気自動車の時代において「求められるエンジニアリングのスキル」は従来のモータースポーツとは全く異なることを挙げ、ポルシェはフォーミュラEを未来のEV技術を支える人材育成のプラットフォームとしても活用しようとしているようですね。
「私たちは、この運用の転換を利用して、ドライバーだけでなく、あらゆるレベルで新しい才能を発掘し、育成したいと考えています。」
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まとめ:電動化時代の「ポルシェ モータースポーツ」の未来
来年はポルシェ モータースポーツにとって75周年という記念すべき年。
その成功の物語は、今後、電動モータースポーツの活躍によっても形作られていくことになりますが、ポルシェがフォーミュラEに大規模なリソースを集中投下することは、以下のような重要なメッセージを世界に発信することと同義だと考えていいのかもしれません。
- 電動化はポルシェの未来: モータースポーツの頂点に立つことで、EV技術のリーダーシップを確立する
- 技術のフィードバック: レースで磨かれたバッテリー管理、インバーター、モーター技術は、次期型タイカンや他のEV市販車にフィードバックする
600kW超のGEN4マシンを駆るポルシェの姿は、ぼくらの知る「伝統的なポルシェ」の遺伝子を受け継ぎつつ、電動化時代に即した新しい「速さ」を追求するポルシェの未来そのものを体現することになのだと考えてよく、その活躍に期待がかかろうというものですね。
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参照:Porsche

















