
| もはや中国のEV市場において日米欧の自動車メーカーが逆転を狙うのは不可能であるようにも思われる |
正直、ここで抗うよりは「撤退」を決めたほうがダメージが小さく抑えられるのかもしれない
世界最大の電気自動車(EV)市場である中国で異変が起きており、2026年第1四半期にはEVの新規登録台数が約20%も急落することに。
さらにはこれまで市場を牽引してきたドイツの「ビッグ5(VW、アウディ、BMW、メルセデス、ポルシェ)」のシェアが過去最低の1.6%まで落ち込むという衝撃的な事態に陥っています。
この記事の要約
- 市場の冷え込み: 中国のEV登録台数がQ1で約20%減少。免税措置の終了が直撃
- 独メーカーの危機: ドイツ5社の合計シェアがわずか1.6%。販売台数は前年同期比55%減
- 補助金打ち切りの代償: 特に低価格帯のEV需要が蒸発し、BYDなどの地元メーカーも苦戦
- 生き残りへの新戦略: ドイツ勢は中国企業との提携を加速させ、コスト40%削減で逆転を狙う

補助金バブルの崩壊:なぜ20%も減少したのか?
中国のEV市場が急減速した最大の理由は「購入税免税措置」の段階的終了だといい、2026年1月より、それまで全額免除されていた新エネルギー車(NEV)の購入税が「半分免除(5%課税)」へと変更されたことが主要因だと分析され、例えば20万元のEVを購入する場合、昨年まではゼロだった税金が約8,800円(約2万円相当)発生することになりますが、このコスト増により、特に価格に敏感なエントリー層の買い控えが加速したのだと報じられています。
なお、クルマの価格に比較すると「2万円」というのはさほど大きくはないように思えるものの、金額そのものよりも「(これまで)払わなくても良かったものを払わないといけなくなった」という心理的な抵抗のほうが大きいのかもしれません。
主要メーカーの影響
そしてこの免税措置の終了の影響をもっとも色濃く受けたのは中国で大きなシェアを誇るBYD、そしてGeely(吉利)だといい、これらはいずれも「価格に敏感な」層を中心とするブランドです。
そして失った販売をカバーするために「輸出」を積極的に行う方針が明かされており、となると(中国国内だけではなく)海外市場においても日米欧の自動車メーカーが「さらなる脅威のもとに」置かれることを意味します。
- BYD: 国内販売が約40%減少。在庫を補うため、10万台規模の輸出増でカバーを試みている
- Geely: 国内の落ち込みを輸出(前年比2倍)で補う戦略

-
-
【激震】中国国内の自動車販売が「マイナス34%」、その一方で輸出は「58%の爆増」——いま中国で起きている王者の交代劇と構造変化とは
| もはや中国市場の変化は世界中の自動車市場への変化を及ぼすまでに | 今後「輸出」によって世界中の自動車市場が中国車の侵攻にさらされることは間違いない 世界最大の自動車市場、中国でいま異変が起きてい ...
続きを見る
「ドイツ車神話」の終焉か? シェア1.6%の衝撃
もっとも深刻なのはドイツ車ブランドで、第1四半期(Q1)に登録された120万台のEVのうち、ドイツ5社の合計はわずか1万9,200台。
かつて中国市場の3分の1を支配していた面影がまったく感じられないという状況で、正直なところ「もう中国でEVビジネスをする意味はないんじゃないか」という感じでもありますね。※日本だと、(EVだけではないが)メルセデス・ベンツ、BMW、フォルクスワーゲンの3社あわせて同時期に約25,000台のクルマを販売している
| ブランド | Q1販売減少率 (前年同期比) |
| フォルクスワーゲン (VW) | -72% |
| BMW | -65% |
| メルセデス・ベンツ | -14% |
特にVWとBMWの落ち込みが激しく、現地の「デジタル機能重視」な若年層のニーズに応えきれていない現状が浮き彫りになっており、いかに現地自動車メーカーとの協業姿勢を強めたとしても「この状況を挽回できる」見込みは「非常に薄い」とも考えています(何より中国車との価格差が”比較検討するレベル”を超えている)。

逆転の一手:中国企業との「禁断のタッグ」
そこで苦境に立たされたドイツ勢はプライドを捨て、そして一縷の望みを託して中国メーカーとの提携を強化しており・・・。
コスト40%削減の「中国専用モデル」戦略
- アウディ: SAIC(上海汽車)と共同で、中国専用ブランド「AUDI」を立ち上げ
- VW: 小鵬汽車(Xpeng)と提携。北京モーターショーで発表した「ID. Unyx 09」などは、現地開発によりコストを40%以上削減することに成功
- BMW / メルセデス: 現地企業と組み、中国独自のロングホイールベース仕様(iX3、i3など)を投入し、居住性を重視する中国市場に特化
-
-
フォルクスワーゲンが「中国のために、中国内で」開発した新型EV、ID. Unyx 08を正式発表。これまでのVWとは全く異なるデザインを採用、これが中国専売VWの新しい顔に
Image:Volkswagen | ID. Unyx 08は中国 シャオペン(Xpeng)との共同開発 | エントリーモデルながらも大きな車体がその自慢 フォルクスワーゲンが中国専売となる電動SUV ...
続きを見る
結論:2026年は「淘汰の年」になる
バンク・オブ・アメリカのホースト・シュナイダー氏は、「近い将来のV字回復はほぼ不可能」と予測していますが、これは家電やPC、スマートフォンなどの工業製品を見る限り「そうだろうな」と思えるところ。
そして失われたシェアは二度と戻らないかもしれず、各自動車メーカーは生き残りの方法を模索する時代に入ったのだとも考えられます。

なお、面白いのは「中国メーカーは輸出」へ、「ドイツメーカーは中国現地化」へという逆の動きを見せていることで、つまり現在のEV業界は世界規模での「戦場」と化していること。
これから自動車業界がどうなるのかは予測がつかず、妥当な線だと「中国の自動車メーカーが支配する」こととなるのかもしれませんが、自動車は事情に高い買い物なので(中国以外だと)中国の自動車メーカーが広く受け入れられずに「日米欧の自動車メーカーとの協業」を選ばねば輸出がうまくゆかず、そこで「共存」の道が拓けるのかもしれません。
新たな知見:「EV」から「REEV」へ流れるユーザー
参考までに、EV(純電気自動車)の販売が苦戦する一方、中国では今「REEV(レンジエクステンダー付きEV)」が急成長しています。
2026年初頭にはEV市場の12%を占めるまでに拡大しており、充電の不便さをガソリン発電で補うこの方式は「補助金カットの影響を受けにくい実用的な選択肢」として、ドイツ勢にとっても無視できない競合となっており、REEVのラインアップが非常に少ない欧州勢が「さらに不利になる」状況を作り出しているわけですね。
あわせて読みたい、関連投稿
-
-
VW傘下「シュコダ」が「中国市場での販売が96%減少し」完全撤退を決定。その代わり「インド・東南アジア」へと注力するという大博打に
Image:Skoda | かつての「稼ぎ頭」が陥った、嘘のような現実 | しかしこれはどのブランドにとっても「明日は我が身」である フォルクスワーゲン(VW)グループの良心とも称されるブランド、「シ ...
続きを見る
-
-
【世界シェア35%超】中国車の販売が「過去最高」を更新。トヨタ・VWを追い詰めて世界の新車の「3台に1台以上が中国車」
| 衣類や玩具、家電のように、自動車も「中国製」が当たり前となるだろう | 【この記事の3点まとめ】 中国市場が世界の3割以上を支配: 2025年の世界販売台数9,647万台のうち、中国は3,435万 ...
続きを見る
-
-
VWグループが中国で8%の販売減。BYD、吉利に抜かれ3位に転落するも「外資No.1」の座を死守。反撃のための”超強気”な大逆転計画とは?
Image:Volkswagen | フォルクスワーゲンは中国にて大胆な「新製品ラッシュ」を計画している | この記事の要点まとめ 販売減少の原因: 2025年の中国販売は前年比8%減の約269万台。 ...
続きを見る











