
Image:Volkswagen
| ID. Unyx 08は中国 シャオペン(Xpeng)との共同開発 |
エントリーモデルながらも大きな車体がその自慢
フォルクスワーゲンが中国専売となる電動SUV「ID. Unyx 08(与众08、ユニックス08)」を正式発表。
このモデルは同社が中国の電気自動車メーカー小鵬汽車(Xpeng)と共同開発したもので、従来のVWデザインとはまったく異なる新しいデザイン言語を採用していることが大きな特徴です。
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「中国で、中国のために」。VWが上海にて「今までのEVとは全く違うデザインや装備」を持つ次世代EVコンセプト3台を中国向けに発表、現地の嗜好へと対応
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■フォルクスワーゲン、中国で“新しい顔”を採用
かつてフォルクスワーゲン・グループは中国市場で絶対的なシェアを誇っていたものの、今では地元メーカーの台頭によってその牙城が崩れ去ったという「危機的状況」。
こうした状況を受け、VWは「In China, for China(中国のための中国開発)」なるスローガンを掲げて対中戦略を強化しており、今回のID. Unyx 08はその象徴ともいえる存在です。
なお、中国は「世界最大の自動車市場」であり、しかし日米欧いずれの市場とも異なる嗜好や性質を持つことで知られており、一昔前ならまだしも、現在の中国では「海外仕様をそのまま」持ち込んでも中国の嗜好にマッチせず、そして価格もまったく競争にならないという現状が存在します。
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もはやクルマのデザイン、機能は「中国の嗜好」に合わせねば自動車メーカーは生き残れない。VW/ポルシェのデザイナー「中国市場のために変革の必要性を感じている」
| いつの間にか、中国市場においてフォルクスワーゲンは「支配者」から「落伍者」となりつつある | これを挽回するには、今までの常識に囚われない変革を目指さねばならない さて、フォルクスワーゲンは「かつ ...
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簡単に言えば、中国市場は「テクノロジー志向」であり、先進的なライティングやインフォテイメントシステム、自動運転を好み、視覚的に「未来」を感じさせるクルマが好まれます。
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これで中国人は見分けがつくのか・・・?最新の中国車はどれもデザインや車名が似すぎていてボクにはさっぱり区別がつかない。なぜそうなったのかを考えてみた
| 中国のビジネスにおける基本戦略は「差別化」ではなく「模倣」である | よってヒット商品が出ればすべて「右へ倣え」に さて、ぼくがいつも思うのが「最近の中国車はどれも同じようなデザインばかりになって ...
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加えて「小さなヘッドライト」「スプリットヘッドライト」「グリルレス」「LEDライトバー」「パノラミックルーフ」「格納式ドアハンドル」「サッシュレスドア」といった顕在化した好みも見受けられ、これらを持たねば正直「売れない」レベル。※さらに車名は「アルファベット数文字+数字」が好まれる
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日産が中期計画に基づく対中戦略車第一号「N7」発表。内外装は中国で好まれる「お約束」デザインを採用、ネーミングまでもが「アルファベット+数字」という中華スタイル
| 日産はフロントに「日産らしい」Vモーションデザインを採用したというが、やはり日産車というよりは中国車である | しかしそれが現代における「海外の自動車メーカーが生き残る道」なのだと思われる さて、 ...
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さらには外観だけではなく「考え方」も全く異なり、「運転して楽しい」という要素はほぼ重視されず、むしろ「運転しなくていい」「運転中にほかのこと(スマホを見たりSNSに投稿したり)ができる」クルマを求めるのが中国市場であり、そもそもの日米欧の自動車メーカーがこれまで作ってきたクルマとは全く異なる製品が求められるわけですね。
そしてこういった「中国市場の要求」をうまく満たしたのが中国の自動車メーカーで、それによって大きくシェアを伸ばしており、その反面、その要求を取り入れず「ワールドワイド」モデルで勝負していた日米欧の自動車メーカーは中国の顧客の要望との乖離」が生じてしまい、それがどんどん拡大すると同時に「シェアを失ってゆく」ことに。
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中国にて日産が発売した「N7」が異例のヒット。「現地自動車メーカーとの協業」によって生産する現地専用EVは日本メーカーにとっての救世主に?
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よって、トヨタ、ホンダ、マツダ、日産など日本の自動車メーカーも現地の協力を得て「中国専売」のクルマを発表し挽回を図っているというのが直近の状況となりますが、今回発表されたID. Unyx 08は、現在中国で求められる要素をほぼ全部入りにて再現した「フォルクスワーゲンがその存亡をかけて中国に全力で訴える」意欲作となっています。
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【マツダEZ-60】中国市場で若年層に大反響。「先端技術」「広い室内」が評価され、これまでのマツダの「人馬一体」が見向きもされず
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■もはや「フォルクスワーゲン」に見えない新デザイン
ID. Unyx 08は、従来のVW車とほぼ共通点がない新しいビジュアルを採用しており、 バッジを外して見れば「もはやフォルクスワーゲンと認識するのは難しいほど」。
主な特徴としては・・・。
- スプリット式ヘッドライト
- フラッシュドアハンドル
- フレームレスドア
- ブレンボ製ブレーキ
- “オオカミ”モチーフのサードブレーキライト
などのプレミアムEVとしての要素がふんだんに盛り込まれ、ただし、ブラックアウトされたAピラーやサイドの濃いトリム処理などの「賛否が分かれそうな」部分も見られます。
なお、上述の通り中国市場では「好みが集約されている」ため、多くのEVメーカーが消費者の歓心を買うために「同じようなクルマ」を作ってしまい、ぞれぞれを見分けることが非常に難しくなっていますが、フォルクスワーゲンは「中国に媚びた」といえども独自のディティールを随所に採用していて、そこはVWにとっての「矜持を保った」ところなのかもしれません。
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■サイズは「ランドクルーザー250なみ」
ID. Unyx 08は、中国・安徽省にある「フォルクスワーゲン安徽」で生産され、ボディサイズは全長5,000mm、全幅1,954ミリ、ホイールベースは3,030mmと非常に大きく、ランドクルーザー250(全長4,925ミリ、全幅1,980ミリ、ホイールベース2,850ミリ)よりも大きめです。※中国では大きなクルマ、居住空間最大化を目的としてホイールベースの長いクルマが好まれる。ボディサイズに対する室内用席という、中国ならではの評価指標もあるようだ
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■Xpeng G9とプラットフォームを共有、最大500馬力の4WD仕様も
中国工業情報化部(MIIT)の認証情報によると、この車は小鵬汽車G9と多くの構造を共有しており、パワートレインはシングルモーター仕様とデュアルモーター仕様が用意され、上位モデルでは約500馬力を発生するもよう。
■航続距離700km、800V急速充電対応
バッテリーはCATL製リン酸鉄リチウム(LFP)電池を搭載し、航続距離は700km(CLTC基準)。
さらに800V急速充電システムにも対応しており、このシステムは中国最大規模のVW研究開発センターで開発が行われたこともアナウンスされています。
なお、現時点で価格の発表はなく(じき予約が開始されると思われる)、納車開始は2026年前半からの予定です。
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■「In China, for China」戦略の一環として
ID. Unyx 08は、フォルクスワーゲンが中国市場専用に開発する約30車種のEVのひとつですが、同グループではアウディがSAICと提携して新ブランド「E5 Sportback」を立ち上げるなど中国市場向けの新戦略を加速させており、つい最近ポルシェも「ドイツ国外では初となる研究開発センターを中国に開設する」と発表したばかり。
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フォルクスワーゲンにとってID. Unyx 08は、単なる新型EVではなく「生き残りを懸けた再出発点」というべき存在であり、今後の「巻き返し」に期待がかかるところです。
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やはり注目点は「中国ブランドのEVばかりが売れる状況において、海外自動車メーカーが”中国の嗜好に対応した”EVを投入すれば(割高であっても)売れるのかどうかということで、もしこれが「売れる」となれば、中国の自動車市場は新しい局面を迎えるということになるのかもしれません。
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参照:Volkswagen

















