| 販売済みガソリン車のエンジンを「モーター」に置き換えるコンバージョンキットは大きなビジネスになりそうだ |
フォードはもうじき「ピュアエレクトリックパワートレーンを持つ、マスタングにインスパイアされたSUV」を発表することになりますが、それに先駆けワンオフにて制作されたマスタングのEVコンバージョン、「リチウム(Lithium)」を公開。
これはWebasto(ドイツの自動車関連企業)とのコラボレーションによって製造されたクルマで、その出力はなんと900馬力。
フォードの製品開発部門管理者によると「フォードはその歴史上、もっとも有名なクルマをエレクトリック化するという決断を下した。これは我々が、その顧客に対し、エレクトリックパワートレーンがどれほどのパフォーマンスを持つことになるのかを示す良い機会だ」。
つまり、このあとに発表されることになる「マスタングにインスパイアされたエレクトリックSUV」に注目を向けるための前哨戦だとも言えそうですね。
6速マニュアル・トランスミッション装備、トルセンデフを持つ走り志向
このマスタング・ベバスト・リチウムは外観こそ通常のマスタングと「ほぼ」同じですが、ボディパネルはカーボン製、車高はノーマル比で1インチダウン。
サイドスプリッター、リアディフューザー、そして「スケルトン」ボンネットは専用装備となり、ボンネット上のグラフィックにて「エレクトリック」を主張することに。
そのパワーを最大限に引き出すために6速マニュアル・トランスミッションを備え、ホイールは鍛造20インチ、フォード純正の「パフォーマンス・トラック・ハンドリングパッケージ」、さらにはそのパフォーマンスに対応するために(シェルビーGT350用の)ブレンボ製ブレーキシステム、ボディ補強のためにストラットタワーバーが装着されています。
そのパワートレーンは「デュアルコア」モーター(Phi-Power製)そして800ボルトバッテリー(ベバスト製)にて構成されますが、フォードによると「より高いパワーを発生し、しかし発熱量は少なく、そして軽い」。
画像を見る限りではガソリンエンジンとの入れ替えとして装着できそうな雰囲気ですが、シボレーもガソリンエンジンとの置き換えが可能な「eクリート」エレクトリックパワートレーンを発表しており、今後アメリカの自動車メーカーは「販売済みのクルマのエンジンをモーターに置き換える」というビジネスを推し進めるのかもしれませんね。
なお、このエレクトリック・マスタングに6速MTが装備されるのは上で述べたとおりですが、これはゲトラグ製(MT82)とのこと。
そしてトルセンデフも与えられており、ドライブモードには「バレー(パーキング)」「スポーツ」「トラック(サーキット)」「ビースト」が用意されるなど「走りを意識している」ということに。
フォードは「マスタングっぽいSUV」のティーザー動画にて「誰がEVは走って楽しくないと言ったんだ?」というアンチテーゼを投げかけていて、つまりは多くの人が持つ「EV=遅い、EV=楽しくない」という固定概念を様々な手法にて覆そうとしているのかもしれません。
【動画】え?マスタングにインスパイアされたエレクトリックSUV?フォードが「マッハE」と見られる新型EVのティーザーを開始
この方法は欧州の自動車メーカーとも完全に異なるもので、「自動車を楽しむ」「カスタム文化が根づいている」アメリカならでは方法でもあり、もしかするとこのやり方で一気にEV普及やEVコンバージョンが進むのかも。
なお、フォードはEV製造のため、2022年までに115億ドルもの投資を行うという計画を持っており、上述の「マスタングにインスパイアされたエレクトリッククロスオーバー」のほか、大人気のトラック「F-150」のフルエレクトリック版を発売する、とも言われています。
現段階でEV普及の壁はいくつかあり、その大きなものは「価格」ではありますが、そのほかにも「遅い」「なにかを我慢しないといけない」というイメージがEV販売の障壁になっているという調査もある模様。
しかしこの「フォード式」のEVプロモーションであれば、人々のEVに対するイメージを大きく変えることになるのかもしれません。