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パナソニックが米電池メーカーと提携し新型バッテリーの開発と製造へ。全固体電池と同様のエネルギー密度を持ち、中国産バッテリーよりも安価に製造できる可能性

2023/12/15

パナソニックが米電池メーカーと提携し新型バッテリーの開発と製造へ。全固体電池と同様のエネルギー密度を持ち、中国産バッテリーよりも安価に製造できる可能性

| このまま中国バッテリーメーカーの独走を許すパナソニックではない |

シリコンバッテリーは現在の戦況をひっくり返す可能性を持っている

さて、米シラ・ナノテクノロジーズ(Sila Nanotechnologies)は充電時間を大幅に短縮しながらもEVの航続距離を最大40%延長できるという革新的な「シリコン負極バッテリー」並びにその製造方法を開発しており、その新型バッテリーをメルセデスベンツGクラスのEV版(EQG)に使用すると報じられています。

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そして今回、そのシラ・テクノロジーズとパナソニックとが「10分間の充電で500マイル(約805km)走行可能なEV用シリコンパウダー電池に関する提携」を行うとの報道。

シラ・テクノロジーズは元テスラの従業員によって設立される

なお、このシラ・テクノロジーズは元テスラの「7番目の」従業員によって設立された会社であり、今回の提携において、パナソニックはシラ・テクノロジーズのシリコン粉末技術を使用してEVの航続距離を延長し、充電時間を大幅に短縮することを目指すことになりますが、 目標は(上述の通り)「10分間の充電で805kmぶんの航続距離を確保できる」だけの性能を持つバッテリーの開発・製造を行うこと、そして業界全体における中国製バッテリー供給への依存を減らすこと。

このコラボレーションの中核となるイノベーションは、シリコンアノード、特にシラ・テクノロジーズの持つタイタン・シリコン・アノードパウダーの新規製造にあり、これはナノ構造シリコン粒子で構成されていて、従来のリチウムイオン電池に(通常)用いられるグラファイトの代替品として機能するのだそう。

既存のバッテリーはこのコンポーネントにグラファイトを使用していますが、このシリコンパウダーは(理論的に)約10倍の電力を蓄えることできる可能性があり、しかし充電中にシリコンベースのアノードが膨張する傾向を持ち、これによって表面の亀裂や効率の低下につながるという課題が生じます。

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シラ・テクノロジーズはこの課題を解決

この問題に対処するため、シラ・テクノロジーズはシリコンとグラファイトを組み合わせて亀裂に耐えられる構造を作成したそうですが、同社CEO、ジェネ・ヴェルデチェルフスキー氏は「ここに至るまでに12年と80,000回の反復を要しました。これはレーズンパンのようなもので、レーズンがシリコンであり、レーズンの周りにふわふわしたマトリックスがあり、粒子自体の大きな外皮が付いています。 皮はスペースを保持しており、レーズンが膨張するとパンは脇に移動します。 足場はシリコンを保持しているのではなく、膨張に対応しているのです」とコメント。

パナソニックはこの「開発に12年かかった」技術を活用してエネルギー効率を全固体電池(ソリッドステートバッテリー)と同様のレベルまで向上させ、生産においても既存のリチウムイオンバッテリー生産プロセスに統合することでコストを引き下げる計画を持っていますが、コストについて言えばこのシリコンバッテリーは大きな可能性を秘めており、というのもシリコンは地殻内で2番目に一般的な元素であり (1 番目は酸素)、シリコンを豊富にかつ安価に入手できるため。

これによってパナソニックは「安価なグラファイトを入手でき、低コストのバッテリーを製造する中国の電池メーカーと競争できる」可能性が生じるわけですね。

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そしてこの技術は「中国と同じ土俵で勝負するのではなく(同じ材料を使用してより安く作ろうとするのではなく)」次世代技術によって大きく中国をリードできる可能性を秘めていて、中国以外のバッテリーメーカーが「状況をひっくり返す」ことができるチャンスをもたらします。

なお、このシリコンバッテリーはシラ・ナノテクノロジーズのほか、グループ14テクノロジーといった別の会社によっても開発が進められており(ポルシェはこちらと提携し、新型EVにこのバッテリーを組み込むと言われている)、もしかすると現在のEV市場における「中国一強」の状況をひっくり返すことができるのかもしれません。

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ただ、現実的にこのバッテリーがどれくらい量産可能であるのかはわからないものの、EV市場の需要を満たせるレベル(と価格)で生産できるのであれば、「高価で少量しか作れない」ソリッドステートバッテリーの意味がなくなってしまい(ソリッドステートバッテリーのほうが航続距離が長いのかもしれないが、そのコストを正当化出来ない)、ソリッドステートバッテリーの研究につぎ込んだ各社のコストが「無駄」に終わってしまう可能性もありそうです(ここが発展途上にある技術の革新過程における恐ろしい点である)。

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