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BYDがEUの関税を回避するためトルコに工場を建設すると発表。なおトルコはこの混乱に乗じ中国の自動車メーカーの誘致を図るなど水面下で動いているようだ

| トルコにとってはEUの「対中国関税」は思わぬチャンスということに |

トルコで自動車を生産しEUへと輸出すればトルコ内の関税は免除、EUでの関税もゼロ

さて、つい一週間ほど前には欧州が中国製EVに対する追加関税の導入を行ったところですが、今回はBYDがトルコに新しい電気自動車およびプラグインハイブリッド車生産工場を建設する予定との報道。

この「トルコ工場」で生産することで”中国製”ではなくなり、これによって”中国製EVに対する輸入関税”を回避できるようになるわけですが、この工場の建設費用は10億ドル規模だとも報じられていて、つまりはそれだけの費用を投じたとしても欧州へとEVとPHEVを輸出することで「モトを取ることが可能」だと踏んでいるのだと考えられます。

マクサス
ついに中国製EVに対する欧州の追加関税発効、報告書の中では助成金のみならず「融資条件、用地取得費用、販売奨励金」など多岐にわたる補助があったことが判明

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この動きは最初から予想できたことではあるが

なお、EUが中国製EVに関税を課したとしても、今回のトルコ工場建設のように抜け道はいくつもあり、かつこの関税自体が4ヶ月間のみの「暫定措置」だとされているので、もともとEUはさほど本気で中国製EVの流入を食い止めようというつもりはなかったのかもしれません。

一方、BYDも「現在の関税が暫定措置であるならば」その解除を待ったほうが良さそうではあるものの、このトルコ工場は欧州以外の地域への輸出の視野に意入れているのだと思われ、欧州の追加関税導入の有無にかかわらず進出する予定があったのだとも考えられます。

そしてこの工場はトルコのマニサ県に建設され、2026年末に生産を開始した後、年間で約15万台の生産能力を発揮し、約5,000人の雇用を発生させる予定だとされるので、トルコとしても雇用の創出に繋がり、「ウエルカム」なのでしょうね。

BYDはトルコ工場を起点とすることで様々な展開が可能となる

現在、BYD製EVにつき、欧州(EU)へとクルマを輸出する際、現地では従来の10%の関税に加え、19.9%の追加関税が課されるため、合計で29.9%の関税を(インポーターが)支払わねばなりませんが、BYDにとって幸運なことに、トルコはEUの関税同盟に加盟しており、そこで製造された車両は追加関税なしでヨーロッパに輸出でき、つまりトルコで生産を行えば19.9%の関税どころか10%の基本関税も払わずに済むということになり、よって今よりも安く欧州内でクルマを販売できる可能性も出てきます。

ただ、現在の「中国生産分」については、土地の取得費用や運転資金の援助、その他もろもろの補助金を中国政府から得て安価に生産できているとされているので、トルコで生産するとなればこのぶんの(中国政府からの)援助が得られない、もしくは減額されることも考えられますが、当然ながらBYDはそれらを含めてまでの計算を行っているはずで、なんらかの勝算を持っていることは間違いないものと思われます(すでに中国政府との話し合いが持たれ、なんらかの合意が得られている可能性も高い)。

この「トルコに工場を建設する」という契約は、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領がイスタンブールで主催したイベントで発表されており、同じ場でBYDは「トルコの技術エコシステム、強力なサプライヤー基盤、素晴らしい立地、熟練した労働力などの独自の利点により、この新しい生産施設へのBYDの投資は、BYDの現地生産能力をさらに発展させ、物流効率を高める」と述べており、ここを起点に「世界へ」羽ばたくことになるのかも。

ちなみにですが、トルコは自国の電気自動車産業を保護するため、外国で製造されトルコへと輸入される自動車に(パワートレインに関係なく)40%の関税を課すという判断を行っており、しかしレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は中国の習近平国家主席に対し、トルコでの生産に投資するブランドには、この40%の関税が免除されるという意向を伝達済み。

よって、今回の「BYDがトルコに工場を建設する」という話は単にBYDとトルコのみの話ではなく、「欧州での高額な追加関税を逃れるためにはトルコに工場を建設すべし」というレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領の(EUの対中国車関税に乗じた)戦略が裏にあり、BYD以外にも続々トルコに工場を建造する中国の自動車メーカーが登場したり、あるいは中国が国策として「国営工場を」トルコに作り、それを中国の自動車メーカーに「間借りさせる」といったこともありうるんじゃないかと考えています。

参考までにですが、昨年トルコで生産された自動車は140万台以上で、その約70%はヒョンデ、トヨタ、ルノー、フォードが占めており、興味深いことに、外国の自動車メーカーはホンダが1997年に工場を開設して以来、トルコに新しい自動車工場を設立していないのだそう。

よってトルコが今回のBYDを皮切りに、中国の自動車メーカーの工場誘致に成功したとなると、その経済の発展に大きく寄与することになり、レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は大きくその評価を上げることとなりそうです。※トルコは今回、うまくEUの関税を利用することで労せずしてBYDの誘致に成功し、うまく立ち回ったと言えるだろう

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