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直列6気筒エンジンを発明したのは誰なのか?直6は歴史的に航空機と密接な関係を持ち、なぜ「航空機に適していた」のか?

直列6気筒エンジンを発明したのは誰なのか?直6は歴史的に航空機と密接な関係を持ち、なぜ「航空機に適していた」のか?

Image:BMW

| はじめに:なぜ直列6気筒(I6)は愛されるのか |

直6エンジンと言えば「BMW」を連想するが

シルクのように滑らかで、驚くほどパワフルな直列6気筒エンジン。

その洗練された性能と独特なエンジン音から、多くのドライバーに高く評価されてきたという歴史をもっていますが、この完璧なバランスを持つエンジンはジャガーEタイプ、日産スカイラインGT-R、トヨタ・スープラ(A80)、そしてもちろん、BMWのM1以降の多数のモデルなど、数々の伝説的な名車に搭載されてきたことで知られます。

特にBMWは、その直6エンジンによって長年にわたり伝説的な評判を築いており、業界最高の6気筒エンジンにBMWのB58型を推す声も少なくありません。

しかしこの至高のエンジン形式を発明したのはBMWではなく、では一体どの企業が最初にこの技術を生み出したのか?という疑問が沸き起こり、今回はそのナゾを解き明かしてみたいと思います。

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Image:BMW

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1. 直6エンジン最初の搭載車:オランダの「スパイカー(Spyker)」

直列6気筒エンジンを搭載した最初の自動車として広く認識されているのは、オランダのメーカー、スパイカー(Spyker)が1903年に発表したレーシングカー。

【スパイカーの功績】

  • 1903年:ベルギー人エンジニア、ジョセフ・ヴァレンティン・ラヴィオレットのアイデアのもと、スパイカー 60 HPを開発
  • この「スパイカー 60 HP」は、その最高出力(60馬力)から名付けられ、ガソリンエンジン車として世界初の全輪駆動(AWD)システムも採用
  • この技術は1906年のバーミンガム・ヒルクライムで勝利を収めるなど、当時のレース界で大きな存在感を示すことに

ただし、スパイカーの直6エンジンは「特定のレースカーのために開発された特別なエンジン」であったため、量産車として初めて直6を世に送り出したメーカーではない、という意見もあるようですね。

なお、現代のスパイカーは「なんとか存続している」状態で、時折ニューモデル発表などのニュースもあるようですが、実際に生産が行われているのかどうかは「わからない」状態です。

2. 直6エンジンの「量産化」を最初に行ったのはイギリスの「ネイピア(Napier)」

スパイカーとほぼ同時期に、直列6気筒エンジンを初めて量産体制に乗せたのがイギリスの老舗エンジニアリング企業、ネイピア(Napier)。

【ネイピアの功績】

  • 1808年創業のネイピアは、1900年に自動車製造に進出
  • 実業家のS.F.エッジの強い働きかけもあり、創業者モンタギュー・ネイピアは6気筒エンジンの開発を推進
  • 1904年:ネイピアは、量産を前提とした直列6気筒エンジンを搭載した最初の自動車を発表

ネイピアは初期のイギリス自動車界で主要な勢力となり、自動車レースにも深く関与。

しかし第一次世界大戦中に航空機エンジンと救急車製造に注力した後、自動車製造への勢いを回復できず、1925年に自動車事業を終了しています。

3. BMWと直6エンジン:空から路上へ

BMWが直列6気筒エンジンを初めて製造したのは、同社が設立された年である1917年ですが、特筆すべきは「自動車用ではなかった」ということ。

【BMWの直6の歴史】

  • 1917年:BMW初の直6エンジンである、19リッター自然吸気の「IIIA Flugmotor」を開発。この巨大なエンジンは、フォッカー D.VII戦闘機に搭載され226馬力のパワーを発生
  • 1933年:BMWは、この戦時中のエンジン開発で培った専門知識を応用し、初めて直6エンジンを搭載した自動車、BMW 303を発表

この経緯こそが、BMWの直6の物語の本当の鍵であり、彼らは「空」での成功を、やがて来たる路上の成功へと見事に繋げたわけですね(ネイピアは残念ながら同様の成功を実現できなかった)。

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Image:BMW

BMWのエンブレム
ちょっと待って・・・!BMWロゴは「プロペラと空を意味してない」とBMWが公式に否定。今までボクが信じてたのは何だったの

| BMW「90年間、その通説を否定してこなかったのもまた事実だ」 | https://www.flickr.com/photos/110074903@N02/49897283197/in/datep ...

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なぜ初期の航空機にI6エンジンが好まれたのか?

では、初期の航空機に直列6気筒エンジンが特に適していたのはなぜなのか?

それは、直6エンジンの滑らかで振動の少ない動作が、当時の比較的脆かった木製フレームと布製の表面を持つ航空機に対し「より小さい負荷しか与えなかったため」。

つまるところ、振動が少なく滑らかであったという理由から積極的に(当時の航空機に)採用されたのが直6エンジンということになりますが、その卓越した「スムースさ」が、自動車の世界でも高性能と高級感を求めるドライバーに長く愛され続ける理由となっているわけですね。

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Image:BMW

まとめ

直列6気筒エンジンは、レースのためにスパイカーによって開発されたのち1903年に初めて自動車に搭載され、その翌年にはネイピアによって量産化の道が開かれます。

そして、その技術を航空機から転用し、現代までその名を轟かせたのがBMWであり、BMWが現在の直6の代名詞的存在であることは間違いないものの、そのルーツにはオランダとイギリスの先駆者たちの貢献があったことを知ると、自動車の歴史における奥深さを感じることができるようにも思えます。

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参照:Jalopnik

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