
| ボクは軽量ホイールが大好きである |
この記事の要約
- 加速性能: 最軽量と最重量のホイールで、中速加速に0.31秒の差が発生
- 回転質量の重み: 単なる車重増よりも「ホイールの重さ」の方が加速への悪影響が大きい
- サーキットでの結論: ラップタイムで1.6秒以上の大差。レースの世界では「致命的な差」に
- 最大のメリット: タイム以上に「ステアリングの手応え」と「操縦の楽しさ」が劇的に変化する
1. 「ホイールの軽量化」はコスパに見合うのか?
バネ下重量の軽減は、クルマ好きの間で「エンジン出力を上げるより効果的」と語られることも。
しかし、高価な軽量ホイールに交換して、実際にどれほどのタイム短縮に繋がるのかという疑問を抱くのもまた事実であると思います。
そこで今回、YouTubeチャンネル「Tyre Reviews」のジョナサン・ベンソン氏が行った、BMW M3(F80型)を用いた興味深いテストデータから、軽量ホイールがもたらす「真のメリット」と「意外な限界」を見てみましょう。
2. 徹底比較:9kg vs 23kg、加速とブレーキの真実
テストでは20ポンド(約9.07kg)、38ポンド(約17.2kg)、52ポンド(約23.6kg)という3種類の異なる重さのホイールを用意(よく23.6kgのホイールを見つけてきたな・・・)。
なお、結果に正確性を期すため、タイヤはすべて同じブリヂストン製を使用して検証を行っています。
加速テスト(時速50kmから140kmへの加速)
- 20ポンド(最軽量): 5.76秒
- 38ポンド: 5.93秒
- 52ポンド(最重量): 6.07秒
最軽量と最重量の差は0.31秒。
体感では分かりにくい差ですが、ここで注目すべきは「回転質量」の影響で、最軽量ホイール装着車に130ポンド(約59kg。車体重量を最重量ホイール装着者と同じにするという意図で)の重りを積み、”車重を重くして”加速に挑んだ場合のタイムは5.88秒。
つまり、「ホイールが重くなること」は「車体が重くなること」よりも加速を鈍らせることがデータで証明されたわけですね(なぜスポーツカーメーカーが極限まで、そして肉抜きなど様々な手法を使用しホイールの重量を削りたいかがよくわかる)。
ブレーキングテスト
路面状況の影響もあり正確な数値化はなされなかったものの、計算上、最軽量と最重量では停止距離に約60cm(2フィート)の差が出るとされています。緊急時のこのわずかな差が、安全性を分ける鍵になるかもしれません。
3. サーキット走行:ラップタイムに現れる「絶望的な差」
ストリートでの加速差はわずかでしたが、サーキット(1周約100秒のコース)では結果が顕著に現れており・・・。
| ホイール重量 | ラップタイム | 最軽量との差 |
| 20ポンド (約9kg) | 99.13秒 | --- |
| 38ポンド (約17kg) | 99.92秒 | +0.79秒 |
| 52ポンド (約23.6kg) | 100.74秒 | +1.61秒 |
モータースポーツの世界において1.6秒という差は、勝敗が決する以前の「別次元のタイム」と言え、コンマ数秒を争う競技者にとって、軽量ホイールがいかに不可欠な武器であるかが分かりますね。
関連知識:ホイールの材質による違い
今回のテストでは「重さ」に焦点が当てられましたが、実は「素材」「製造方法」も重要です。
- 鍛造(たんぞう): 高圧で叩き出すため、軽くて非常に強い。プロ向け
- 鋳造(ちゅうぞう): 型に流し込むため安価だが、強度を出すために重くなりがち
- カーボンファイバー: 究極の軽さを誇るが、非常に高価で衝撃にシビア
ただし最近は「鋳造」ホイールであっても製造工程の進化によって「鍛造ホイール並み」の軽さを実現するものもあり、比較的リーズナブルな価格にて「軽さを買える」というありがたい状況も発生しています。
4. スペック以上に重要な「フィーリング」の変化
データ以上にベンソン氏が強調したのは、ドライバーに伝わる「質感」の違いです。
- 軽量ホイール: 「クルマが自分と一緒に踊っているよう」と表現されるほど。ステアリングを通じてフロントアクスルの状況が手に取るように分かり、運転の自信に繋がる
- 重量級ホイール: ホイールが重くなるにつれ、路面からのフィードバックが薄れ、クルマとの対話が遮断される感覚に陥る
正直なところ、この「数字に現れない感覚」は非常に重要だと考えていて、ぼくがほとんどのクルマにおいて「軽量ホイール」を装着してきたのはこれが理由となっています。
具体的には「加速しながら車線を変更する(とくに上り)」といった日常的な操作においてもその「違い」が大きく感じられ、この「違い」のためにぼくは大枚をはたいているわけですね。
実際のところ、このユーチューバーも以下のように結論付けており、ぼくもこれには両手を挙げての賛成です。
「街乗りだけであれば、加速のコンマ数秒のために大金を投じる必要はないかもしれない。しかし、運転の楽しさを追求するなら、軽量ホイールは間違いなく正解だ」
5. 結論:軽量ホイールを買うべきか?
軽量ホイールは、単なるドレスアップパーツではなく、カーボンファイバー製ホイールなどは数百万円することもありますが、その価値は「タイム」以上に「ドライバーの感覚を研ぎ澄ますこと」にあります。
- 競技志向・峠を楽しみたい: 軽量ホイールは最高の投資である
- 街乗り・見た目重視: 性能差は体感しづらいため、デザインや予算を優先しても後悔は少ない
要は自分の愛車に何を求めるのか次第ということになり、しかし今回示されたデータは(特にスポーツカー乗りにとって)ひとつの指標、そして軽量ホイールを装着するための「根拠」となるかもしれません。
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参照:Jalopnik, Tyre Reviews




















