
| この数年、自動車業界は「困難続き」である |
欧州での紛争、コロナ、半導体にエネルギー。さらには輸送上の問題も
停戦合意が報じられたイラン紛争ではあるものの、このまま収束に向かうとしても今後エネルギー市場だけでなく世界の自動車産業に深刻な影を落とすことは間違いなく、たとえこの紛争が終結した場合でも自動車業界が受けるダメージは計り知れないと言われます。
専門家によれば、2027年までに世界全体で累計140万台以上の新車販売が失われるとの予測が出ており、最大の懸念は世界の原油の「喉元」であるホルムズ海峡の混乱だとされ、ここで 「なぜ戦争が止まってもクルマの供給は戻らないのか?」「日本への影響は?」という疑問にあわせ、 物流の停滞、保険料の暴騰、そして生産遅延など、ぼくらの手元に新車が届かなくなる「半導体に次ぐ第二のショック」について考察してみたいと思います。

【この記事の要約:3つのポイント】
- 140万台の販売ロス: 紛争の影響により2027年までに甚大な販売機会損失が発生する見込み
- ホルムズ海峡の麻痺: 公式な閉鎖がなくとも、海域の「回避」によって物流コストと保険料が跳ね上がり、車両価格を押し上げる
- 日本・アジアへの波及: 原油高と部品供給の遅れにより、日本、韓国、中国の自動車生産が鈍化するリスク
なぜ「明日戦争が終わっても」解決しないのか?
多くの人は「戦争が終わればすぐに物流も元に戻る」と考えがちではあるものの、自動車産業のような巨大なサプライチェーンにおいて、一度止まった歯車を再び回すには膨大な時間がかかります。
実際のところ、S&Pグローバル・モビリティの予測によれば、物流が通常の状態に戻るのは早くて2026年後半。紛争の余波による供給不足は、2027年まで「負の遺産」として残り続ける、という試算が出されています。

市場への具体的ダメージ予測
| 影響を受ける項目 | 予測される事態 |
| 2026年の販売減 | 世界全体で80万台〜90万台の減少 |
| 2027年の販売減 | 紛争のノックオン効果(連鎖反応)により、さらに500万台減少 |
| 主な被災地域 | 湾岸協力会議(GCC)諸国で約20万台の不足 |
| 主なコスト増 | 海上運賃、船舶保険料、燃料サーチャージの暴騰 |
ホルムズ海峡の「事実上の封鎖」が招く地獄絵図
現在、ホルムズ海峡は公式に閉鎖されてはいませんが、多くの海運会社が「立ち入り禁止区域」と見なしており、これによって自動車を運ぶ専用船は大幅な迂回を余儀なくされているというわけですね。
- 納期の長期化: 中東を経由する物流ルートが寸断されることで、欧州車のアジア向け、あるいは日本車の欧州向けデリバリーに数ヶ月単位の遅れが生じる
- 価格への転嫁: 物流コストの増大に加え、リスク回避のための保険料が跳ね上がっており、これは最終的に「新車価格の値上げ」として消費者に跳ね返ってくる

日本・アジアの自動車生産への影響
この紛争は単に「クルマが運べない」という問題に留まらず・・・。
- 原油価格の急騰: 産油国に近いエリアでの紛争はダイレクトに燃料価格を押し上げる
- 生産コストの増大: 日本、韓国、中国のメーカーは石油化学製品(プラスチックや樹脂パーツ)の原材料を依存しており、これらが生産コストを圧迫
- 工場稼働の鈍化: 部品供給の不安定化により、国内工場の稼働停止や減産が再び現実味を帯びている
結論
イラン紛争は、もはや「遠い国の出来事」ではなく、ホルムズ海峡の混乱は、ぼくらがディーラーで注文したクルマの納期を遅らせ、見積書に記載される価格を押し上げる直接的な要因となっています。
今後、紛争が長期化すれば、140万台という数字はさらに膨らむ可能性がありり、新車の購入を検討している場合、情勢を注視しつつ、これまで以上に早めの決断を行う、ならびに長期化する納期への覚悟を決めることが必要になるのかもしれません。

参考:自動車は「動く石油製品」である
クルマはガソリンを燃やして走るだけでなく、その製造工程においても膨大な石油を消費します。
バンパー、内装パネル、タイヤ、さらには塗装に至るまで、石油化学製品なしではクルマを作れないというのが実情で、中東の紛争が「ガソリン代が高くなるだけ」と思ったら大間違いなのはそのためです(加えて、自動車の製造や販売が単一の国のみで完結しないということにもあらためて思い知らされる)。
今回の紛争は、半導体不足からようやく回復しつつあった自動車業界にとって、最もタイミングの悪い「冷や水」となったことは間違いなく、今後、ぼくらは「欲しい時に、適正な価格でクルマが買える」というこれまでの当たり前が、いかに脆い地政学的なバランスの上に成り立っていたかを痛感することになるのかもしれません。
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