
| “フェラーリの顔”がマクラーレンへ——衝撃のニュースが判明 |
現時点では「取締役」にとどまるが
フェラーリの歴史において最も影響力のある人物の一人、ルカ・コルデロ・ディ・モンテゼーモロが、今やそのライバルであるマクラーレンの親会社の取締役に就任したことが明らかに。
これはRedditユーザーによって最初に発見されたもので、英国の登記機関「Companies House」にて”McLaren Group Holdings Limited”の取締役として彼の名前が登録されていることが確認済み。
マクラーレンはこの数年でCEOの交代、経営母体の変更、そしてさらにCEOの交代など大きな変動がもたらされていますが、これは「今後」さらなる変化をむかえるであろうことを示唆しています。
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ルカ・ディ・モンテゼーモロとは何者か?
ルカ・ディ・モンテゼーモロ(Luca Cordero di Montezemolo)はフェラーリのF1チームでキャリアをスタート。
1991年にはエンツォ・フェラーリの後継者としてフェラーリに再び加わり、2014年までの在任期間に同社のロードカー事業とF1活動の両方を黄金期へと導いた伝説的な経営者で、主な経歴は以下の通りです。
- 出身と学歴: 1947年にボローニャで生まれ、ローマ大学と米国のコロンビア大学で学ぶ(イタリア貴族の出身である)
- フェラーリでのキャリア:
- 1973年にフェラーリに入社し、エンツォ・フェラーリのアシスタントを務める
- 1974年にはフェラーリのスポーツ部門を指揮し、1975年から1977年にかけてニキ・ラウダと共にF1世界選手権を優勝に導く
- 1991年にフェラーリの社長に就任し同社を再建。特にF1チームの立て直しに尽力し、ミハエル・シューマッハらを擁して黄金時代を築きあげる
- 2014年にフェラーリ会長を退任
- フィアットでのキャリア:
- フィアット・グループの関連会社の社長などを務めた後、2004年から2010年までフィアット会長を兼務し、経営危機にあったフィアットの再生に取り組む
- その他の役職:
- イタリア産業総連盟(Confindustria)の会長を務めたことも
- 1990年のサッカーW杯イタリア大会の組織委員会の委員長を務め、成功に導く
- アリタリア航空の会長も務める
このほか「ビジネスの場ではロレックス・サブマリーナーを愛用していた」「長年イタリアで”抱かれたい男”トップに君臨していた」という話も聞かれますが、そのカリスマ性と経営手腕によってヨーロッパで最も有名なビジネスリーダーの一人として知られています。
フェラーリ時代には「他の企業との重役を兼任していること」を度々問題視され、さらには当時のCEOであったセルジオ・マルキオンネ氏とソリが合わなかったことも報じられるなど「居心地が悪くなったのか」上述の通り2014年にはフェラーリ会長を退任する形となり、フェラーリそしてフィアットとは「関係性を絶っている」わけですね。
参考までに、ルカ・ディ・モンテゼーモロの「結婚祝い」として、フィアット会長が直々にフェラーリへと360バルケッタをワンオフモデルとして制作させ贈呈したことがあり、この一件を見ても「いかにルカ・ディ・モンテゼーモロがフィアットグループからの信頼を得ていたか」がわかります。
なお、彼の時代に誕生したフェラーリの名車には、以下のモデルなどがあり、限定車やワンオフモデルを積極的に展開してブランド価値を高め、フェラーリを単なる自動車メーカーから「夢の象徴」へと昇華させた立役者としても知られますが、その一方で品質や快適性を飛躍的に向上させ、フェラーリを「一部のエンスージアストのための乗り物から、セレブに愛されるラグジュアリーアイテム」にまで押し上げたことも特筆すべき功績です。
- F355
- 360モデナ
- 550マラネロ
- F50
- Enzo
- 599 GTB
- 458イタリア
- F12ベルリネッタ
- ラ・フェラーリ
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フェラーリ360には1台のみ「バルケッタ」が存在する。当時のCEOの結婚祝いとして製造された特別な一台がエンツォ・フェラーリ博物館に展示中
Image:Ferrari | 個人的に贈呈されたワンオフモデルではあるが、現在はフェラーリの所蔵となっているようだ | 現在のフェラーリは「法人」としての性格が強くなりすぎ、二度とこういったモデルが ...
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マクラーレンでの役割とは? F1ではなく「ロードカー部門」
注目すべきは、今回彼が名を連ねたMcLaren Group Holdings Limitedは、マクラーレン・オートモーティブ(スーパーカー部門)を管轄する持株会社で、F1チームを擁するマクラーレン・グループ(バーレーン資本)とは別の法人構造となっており、現時点ではモンテゼーモロ氏がF1活動に関与する予定はないということ。
逆に同氏は「マクラーレンの市販車に関わる」ということになり、これはフェラーリにとってひとつの「脅威」かもしれません。
これまでにも「フェラーリの副社長がロータスのCEOに」「フェラーリの開発担当上層部がアストンマーティンやマクラーレンに」「スクーデリア・フェラーリのCEOがランボルギーニCEOに」ほか様々な驚きの人事が行われていますが、今回ほどの「衝撃」をもたらす例はほかになく、各方面に大きな衝撃を与えることは間違いないものと見られます。
背景には中東資本の経営刷新構想
ここ最近のマクラーレンのロードカー部門の動きについて触れておくと、2023年12月、アブダビを拠点とする投資ファンドCYVNホールディングスがマクラーレン・オートモーティブを買収し、傘下の英国EVスタートアップForsevenと統合してロードカー部門の経営改革を進めています。
2025年5月にはフォーセブン(Forseven)CEOだったニック・コリンズ氏(元ジャガー・ランドローバーR&D部門トップ)がマクラーレンのCEOに就任するなど、組織再編が進行しており、今後はさらなる変革が進む可能性があると見られているわけですね。
ルカ・ディ・モンテゼーモロ起用の狙いは「フェラーリの奇跡」を再現?
マクラーレン・オートモーティブは近年、モデル展開の遅れや品質面での課題から販売低迷が続いており、その中で、フェラーリを「復活」させたルカ・ディ・モンテゼーモロ氏の手腕に期待が集まっていることは明らかで、以下のような「成長要素」をマクラーレンに注入できる人物として、彼の存在は極めて大きな意味を持つものと見られます。
- ブランド価値の再構築
- 限定車戦略の再考
- 高収益モデルの開発
- エレガンスと革新性のバランス
今後の注目ポイント
- モンテゼーモロ氏が経営戦略にどこまで関与するのか
- 新CEOとの連携体制
- マクラーレンの次期EV戦略
- フェラーリとのブランドポジション再定義
今後、マクラーレンが「第二のフェラーリ」として復活を果たすのか、それとも新たな個性を確立するのか——注目すべき局面が訪れています。
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