
Image:MINI
| 車種によっては60%超にものぼると言われるMT比率ではあるが |
ミニ、マニュアル車を完全廃止|たった3%の選択がもたらした結末
長いあいだ、ミニクーパーは「走る楽しさ」「ゴーカートフィーリング」を重視するクルマとして多くのファンに愛されています。
そこにはシャープなハンドリング、遊び心あふれるシャシー、そして3ペダル(マニュアル)で繋がるドライバーとの一体感といった重要な要素があったわけですが、その最後の「純粋なドライビング体験」がとうとう終焉を迎えるという報道がなされることに。
需要わずか3%|マニュアル廃止の決定打
ミニは、かねてよりマニュアルトランスミッションの販売を段階的に終了する方針を打ち出していましたが、2025年6月、ついに「完全廃止」を正式発表。
実際のところ、ミニは随分前からマニュアル・トランスミッション車の廃止を計画していたようで、ぼくがミニJCW(ジョンクーパーワークス)を購入した際にもMT車を選ぼうとしたものの、「生産予定がない」としてその注文を拒否されています。※その後、まずはJCWからMTが廃止されるとアナウンスされている
ミニ購入者のMT選択率はわずか3%
現在、一部車種では「MT人気」が報じられ、BMW Z4はMT車の投入によって人気が急上昇し、その結果として「販売終了の予定を覆し、予定よりも長く販売されるようになった」とも。
ただしミニの場合は「そうはならず」、これはもはや「ミニとMT」とのマッチングが低くなっており、ミニが「走りが楽しいクルマ」として認知されていないことを意味するのかもしれません(一方、ミニは”走りが楽しい”イメージを押し出しており、ここにメーカー側と消費者との大きなギャップがある)。
ただ、今回ミニがマニュアル廃止を選んだ背景には、2025年以降に導入される欧州排ガス規制「EU7」の存在も大きく影響しているとされ、「この少ないMT比率のために、EU7に適合するよう改良を加えるだけのコストを割くことはできない」という判断となったのだと思われます。※EU7の影響がなく、改良の必要がなければ、今後もしばらくMTを販売し続けていたのかも
- ミニのグローバル販売データによると、マニュアルを選んだのはわずか3%(約30人に1人)
- 圧倒的にオートマチック(AT)が支持されており、マニュアルの存続はもはや「ビジネス的に成立しない」と判断される
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マニュアル・トランスミッションの継続は「開発コスト」に見合わない
なお、MTはATに比較すると排ガス規制をクリアすることが難しいといい、北米だと「騒音規制に適合しない」という理由からMT仕様のほうが「サウンドが静か」という例も。
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こういった事情を踏まえると、マニュアル・トランスミッション仕様は「単にトランスミッションを入れ替えただけ」ではなく、様々な課題が存在するということもわかりますね。※メルセデスAMGはこの改題解決のためのコストを嫌い、MTを用意していない
- EU7ではマニュアル車も厳格な排ガス・燃費試験をクリアする必要がある
- しかし販売台数が極めて少ないマニュアルのために、莫大な開発・認証コストをかけるのは非効率
参考までに、ミニ・オーストラリア&ニュージーランドのゼネラルマネージャー、アレックス・ブロッコフ氏は次のように述べています。
「マニュアルの顧客需要は非常に低い。排出ガス規制への適合や開発リソースを考えると、マニュアルの優先順位は完全に外れました。」
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競合も次々と「マニュアル離れ」
ブロッコフ氏はさらに「競合車にももはやマニュアルがほとんどない」と指摘。
実際のところ、手頃な価格帯のマニュアルスポーツカーは急速に市場から姿を消しつつあり、一部の高級スーパーカーではオプションとして残るケースはありますが、「庶民的なスポーツモデル」でのマニュアルはもはや絶滅危惧種です。
Image:MINI
まとめ|マニュアルの終焉は時代の流れか
- ミニのマニュアル車は正式に販売終了
- 選択率はわずか3%、需要は世界的に低下
- EU7排ガス規制がマニュアル消滅を加速
- 競合も次々とオートマ(AT)専用化
ミニに限らず、マニュアル車は世界的に「絶滅危惧種」となりつつあり、愛好家にとっては寂しいニュースですが、これが現在の市場の現実なのかもしれません。
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