| なんだかんだいいながらBMWのデザイン戦略は「成功した」と言っていいだろう |
現代において、「デザイン」は自動車における重要なコアバリューのひとつとなっている
さて、BMWは先日「新型5シリーズ / i5」を発表したところですが、そのフロントグリルがそこまで大きくなく、かつ縦型の「ビーバートゥース」でなかったことに胸をなでおろした人も多いかもしれません。
5シリーズが奇抜なジャンボキドニーを採用しなかった理由としては(以前にBMWグループのデザイナー、エイドリアン・ファン・ホーイドンク氏が語ったように)「3シリーズと5シリーズは普通の、そして保守的な人が買う可能性が高いため、奇抜なデザインを避けている」というものだと認識していますが、実はもうひとつ”別の”理由があるようです。
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BMWのデザイナー「なぜ4シリーズや7シリーズには奇抜なデザインを採用し、3シリーズや5シリーズは普通なのか」
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なぜ新型BMW 5シリーズはジャンボキドニーグリルを採用しなかったのか?
この「もう一つの理由」については、先週開催されたコンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステにて明かされており、そこでエイドリアン・ファン・ホーイドンク氏が”より伝統的な外観にたどり着いた経緯”をメディア・ラウンドテーブルの場で語ったわけですね。
私たちは初期デザインの段階で縦型グリルを試しましたが、ヘッドランプを変えても、すぐに7シリーズのイメージに近づいてしまうことがわかりました。ただ、5シリーズと7シリーズがあまりにも接近しすぎていると、あまり良くないというフィードバックを特定の市場から得ており、よって5シリーズに縦型グリルを与えることは禁物だと判断したのです。
この判断は、BMWのデザインに関する幅広い見直しの一環として行われたようで、エイドリアン・ファン・ホーイドンク氏は「ここ数年、BMWが採用してきたスモール、ミディアム、ラージ商品群のデザインアプローチはあまり良いとは言えませんでした」とも説明しています(上層部が自社の過ちを認めるのはかなり珍しい)。
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これに関してエイドリアン・ファン・ホーイドンク氏は「もし、販売台数をさらに伸ばしたいのであれば、それぞれのクルマに強い個性を持たせ、人々が選択できるようにする必要があると気づいたのです。例えば(ここ最近までのように)スモール、ミディアム、ラージで同じデザインを作ると、選択肢が少なくなってしまいます。私たちは、このままでは限界があると考え、よって、それを断ち切る必要があったのです」とコメント。
つまり、デザインが金太郎飴的になってしまうと、そのデザインを好きな人が2シリーズ、3シリーズ、4シリーズ、5シリーズの間でどれを購入するか迷ってしまい、自社内で食い合いが生じて販売が伸びないこと、そしてそのデザインを好きな人以外がBMWの顧客になり得ないために「他社の顧客を獲得する」ことが難しいということなのだと思われます。
よって、現在のBMWは「シリーズごとに大きくデザインを分け」自社内で競合が生じないよう、そして願わくば他社の顧客を奪えるようにデザインを考えているということなのかもしれません(よって2シリーズや7シリーズはほかシリーズと共通性が低いデザインを持っているのだと考えられる)
BMWのキドニーグリルにはこんな効果がある
そしてエイドリアン・ファン・ホーイドンク氏は続けて「グリルを水平方向に長くすると、よりスポーティに見える傾向があるように思います。そして、縦長にすれば、存在感やステイタスが増す。そのため、5シリーズではキドニーグリルを水平にするべきだと考えたのです」。
さらには「4シリーズや7シリーズ、XMのデザインが酷評されていることを受け、5シリーズでは無難なデザインを採用したのではないか」という質問に対してはBMWのチーフデザイナー、ドマゴイ・デュケック氏が「けしてそうではありません」と反論しており、「XMや7シリーズのデザインについて、私たちを非難する人たちがいるのは理解しています。しかしXMや7シリーズには、表情豊かでステイタス志向のお客様がいらっしゃいます。一方で3シリーズや5シリーズは目立ちたくないという嗜好を持つお客様が選ぶクルマなのです。自分の功績を、違う形で表現できるクルマが欲しいのです。近所の人が "ああ、いいね "と言ってくれるようなクルマを求めていらっしゃいます。よって、わたしたちは、様々なお客様の、様々な要望に答えるべく、デザインを多様化し、最適な方法を採用しているのです」とも。
実際のところ、BMWのデザインが何かと騒がれるようになってからはBMWの販売も伸びており、なんだかんだ言われながらも個性が強いデザインに惹かれる人も少なくはなく、よって現時点では「BMWの思惑通り」に物事が進んでいるのかもしれませんね。
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参照:Motor1