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BMWが「あえて」シングルターボを選ぶ理由とは?ツインターボ神話を覆す驚異の効率性についての考察、直6にこだわり続けたからこそ可能となった真実とは

BMWが「あえて」シングルターボを選ぶ理由とは?ツインターボ神話を覆す驚異の効率性を考察する。直6にこだわり続けたからこそ可能となった真実とは

| BMWはターボ技術では常に最先端にある |

この記事の要約(30秒でわかるポイント)

  • 進化の鍵: 「ツインターボ(N54)」から「シングル・ツインスクロールターボ(N55)」への移行
  • メリット: 部品点数の削減による軽量化、低コスト、信頼性の向上
  • 性能向上: 排気干渉を抑える技術により、燃費が最大9%改善し、ラグも解消
  • 合理性: 直列6気筒の特性を活かし、パッケージングの効率を最大化

ターボの常識が変わる?BMWが「シングル」にこだわった背景

かつての高性能車の証といえば「ツインターボ」。

しかし、BMWは2009年頃を境に、主力エンジンをあえてシングルターボ(TwinPower Turbo)へと切り替え始めています。

一見すると「スペックダウン」のようにも思えますが、実はそこには「究極の効率化」という明確な意図があり、なぜ、世界を代表する”エンジン製造会社”であるBMWがシングルを選んだのか。

その答えは、単なるコスト削減ではなく、物理的な「排気の流れ」に隠されています。

「世界初のターボ車」を投入したBMW。さらにはツインターボにて新たな時代を切り拓き、N54とN63エンジンが残した“革新の20年”を振り返る
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Image:BMW


シングルターボがツインターボを凌駕する「3つの理由」

BMWが採用した「ツインスクロール・テクノロジー」は、従来のシングルターボの弱点を完全に克服するもので・・・。

1. 排気干渉の解消(ツインスクロールの魔法)

直列6気筒エンジンでは、各気筒の排気が重なり合うと互いの流れを邪魔してタービンの回転効率を下げてしまいます。

ツインスクロールは、排気経路を2つに分けることで、この干渉を防ぎ、低回転から鋭いレスポンスを実現しているわけですね。※ツインスクロールターボは「ツインターボ」ではない

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Image:BMW

2. 圧倒的なエネルギー効率

ツインターボに比べ、配管やコンポーネントが簡素化されるため、排気による熱エネルギーが逃げにくくなります。これにより、N55エンジンでは先代比で最大9%の燃費向上を達成することが可能となっています。

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Image:BMW

3. パッケージングと信頼性の両立

エンジンルーム内のパーツが減ることで熱がこもりにくくなり、故障リスクが低下します。

また、空いたスペースを他の先進装備や衝突安全対策に充てることが可能となり、「軽量コンパクト」を実現できるというわけですね。

なお、BMWはM3やM4に代表される「縦型」キドニーグリルについて、「そこへ冷却系を集中させることにより、空いた他の場所を空力向上等に使用することができるようになり、パッケージング効率が向上した」と述べており、直6にこだわったことでツインスクロールターボ、そしてそれを核とした独自のパッケージングが可能となったのだとも考えられます(様々なエンジン形式に手を出さなかったことによる恩恵でもある)。

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一方、BMWはV8においても「ホットV」を始めて採用していますが、こういったエンジンへの執着ともいえる姿勢はさすが「Bayerische Motoren Werke AG=バイエルン発動機製造株式会社」という名のとおり、という印象ですね。

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BMW 3.0L 直6エンジンのスペック比較

名機と言われた「N54(ツインターボ)」、そしてその後継「N55(シングル・ツインスクロール)」の違いをまとめてみるとこんな感じ。

項目N54 (Twin Turbo)N55 (TwinPower Turbo)
ターボ数2基(小型×2)1基(ツインスクロール)
燃費効率標準約9%向上
構造の複雑さ複雑(配管多)シンプル(軽量)
主な特徴高いチューニング耐性素早いレスポンス・低排出
採用車種例335i (E90初期) など335i (E90後期), M2 など
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Image:BMW


なぜポルシェやアウディは今も「ツイン」なのか?

BMWがシングルに移行した一方、ポルシェ911やアウディS4などは依然としてツインターボを採用しています。

この違いは「エンジンの形状」にあり・・・。

  • V型や水平対向エンジン: 左右にバンクが分かれているため、それぞれのバンクに1つずつターボを置くほうが配管が短くなり効率的
  • 直列エンジン(BMWの得意分野): すべての排出口が片側に並んでいるため、1つの高性能なツインスクロールターボに集約するほうが理にかなっている
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つまり、BMWのシングルターボ採用は、彼らのアイデンティティである「シルキーシックス(直6)」を最も輝かせるための最適解だったということに。

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結論:シングルターボは「進化の証」である

「ターボが2つある方が偉い」という時代は終焉を迎え、現在BMWが示すのは「少ない部品で最大のパフォーマンスを発揮する」という、まさに設計や製造技術が高度に進化した時代ならではの知的なアプローチです。

メンテナンスコストが抑えられ、環境負荷も低く、それでいて官能的なレスポンスを楽しめる。

BMWのシングルターボは、ドライバーにとっても「最も賢い選択」のひとつというわけですね。

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Image:BMW

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参照:jalopnik, BMW

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