
Image:Rimac
| リマックの資本関係はけっこう「ややこしい」 |
この記事の要約(30秒でわかるポイント)
- トップ交代: 創設者メイト・リマックが「リマック・テクノロジー」のCEOを退任
- 新CEO就任: 大手サプライヤー・コンチネンタル出身のヌルディン・ピタレヴィッチ氏が昇格
- 狙いは「量産」: 試作段階から、数万台規模の「シリーズ生産」への完全移行を強化
- 供給先の拡大: BMW、ポルシェ、ヒョンデ等へ、e-アクスルや全固体電池技術の供給を加速
なぜ今、リマックは「トップの座」を譲ったのか?
ハイパーカー界の風雲児、メイト・リマック。
彼が自身の名を冠した技術部門「リマック・テクノロジー(Rimac Technology)」のCEOを退任するというニュースが業界に大きな衝撃を与えることに。
しかし、これは「引退」というよりも、むしろ、リマック社が「小規模な技術集団」から「世界的な巨大サプライヤー」へと脱皮するための、極めて論理的な戦略であり、メイト・リマック氏自身はグループ全体のプレジデント、およびブガッティ・リマックのCEOとして、引き続きハイパーカー開発の最前線に立ち続けることも明かされています。
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新体制がもたらす「EV供給ビジネス」の産業化
新たにCEOに就任したヌルディン・ピタレヴィッチ氏は、世界最大級のサプライヤーであるコンチネンタルで12年のキャリアを積んだ、いわば「量産のプロ」。
同氏による新体制のもと、リマックテクノロジーはさらなる拡大を目指します。
組織変更のポイントと新リーダーシップ
| 役職 | 氏名 | 背景・役割 |
| 新CEO | ヌルディン・ピタレヴィッチ | 元コンチネンタル。プロトタイプから量産(シリーズ生産)への移行を指揮。 |
| 新COO | マルコ・ブルクリャチッチ | 戦略プロジェクト責任者を歴任。組織の実行力とチーム力強化に注力。 |
| グループ会長 | メイト・リマック | リマック・グループ全体の統括。ブガッティおよびリマックの車両開発に専念。 |
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供給先ブランド(主要パートナー)
ここでリマックグループの構造を記しておくと以下の通り。
- リマックグループ・・・株主構成はメイト・リマック37%、ポルシェ24%、ヒョンデ14%、その他の投資家が残りを占めるという内訳
- ブガッティ・リマック・・・リマックグループ55%、ポルシェ45%という出資比率で構成される。なお、傘下にはこれまでのブガッティである「ブガッティ・オトモビル」、リマックの市販車部門であるリマック・アウトモビリ」が収まる
- リマック・テクノロジー・・・リマックグループの100%子会社
リマック・テクノロジーはこのとおりリマックの100%子会社ではあるものの、もはや自社ブランドのためだけの組織ではなく、以下の主要メーカーに対し、心臓部となるコンポーネントを供給しています。
- BMW
- ポルシェ
- ヒョンデ(現代自動車)グループ
- ブガッティ(トゥールビヨン用システム等)
そして今回の「メイト・リマック氏が「リマック・テクノロジーのCEOを降りる」ことについてはここに理由があるんじゃないかと考えていて、表向きの理由こそは「ブガッティ、そしてリマックの車両開発に専念」というものですが、過去には「自身の名を冠したクルマを発売する人物が、ほかの自動車メーカーに技術を提供するうえで公平性を保てるのか」という懸念が提示されたことがあり、そしてヒョンデにとっては「自分たちの研究成果が、リマックにより近い位置にあるポルシェの利益に直結するのでは」という疑念を払拭できなかったという報道も。
よって今回の退任によって、メイト・リマック氏はリマック・テクノロジーから一線を引き、その公平性と透明性を保とうということなのかもしれません。
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ヒョンデがリマックとの提携を解消したとの報道。ポルシェがリマックへの出資比率を拡大したことでヒョンデが気分を害したもよう
| ただし現時点では事実関係は確認されておらず、ウワサの域を出ていない | リマックはポルシェ、ヒョンデのほかにもフェラーリやアストンマーティンとも提携している さて、2019年にヒョンデとリマックと ...
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リマック・テクノロジーが描く「2026年以降のロードマップ」
今回の人事刷新により、リマックは以下の3つの重要領域で攻勢を強める見通しです。
- e-アクスルの量産拡大: 昨年、すでに数万規模のシステムを納入。今年はさらなるシリーズ生産の拡大を狙う
- 全固体電池(ソリッドステート)の開発: EVのゲームチェンジャーとされる次世代バッテリーの早期実用化に向けた投資を継続
- Tier 1としての地位確立: 単なるパーツメーカーではなく、車両全体のソフトウェアやECUまでを一貫して提供できる「信頼されるパートナー」への進化
リマックは「第2のボッシュ」になるのか?
多くの人は「リマック=世界最速のEVを作る会社」だと捉えているかもしれませんが、今回の人事から見える彼らの真の狙いは「世界中のEVの『中身』を支配すること」。
かつてガソリン車時代にボッシュやデンソーが担った役割を、EV時代においてリマックが担おうとしており、ぼくらが将来乗るBMWやポルシェの加速性能や航続距離を決めるのは、実はリマックの技術なのかもしれません。
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結論
メイト・リマックが「経営の細部」を後続に委ねたことは同社が成熟した企業へと進化した証でもあります。
2027年の海外進出を見据えるシャオミのような新興勢力にとってもリマックは強力なライバルであり、同時に不可欠なパートナーとなる可能性も。
「天才の閃き」と「産業の規律」が融合した新生リマック・テクノロジーの活躍にますます期待がかかるところですね。
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