
| 直6にこだわる自動車メーカーも少なくはないが |
直列6気筒はなぜ「優れている」と言われるのか?
直列6気筒(i6)は、特に欧州メーカーや日本車ファンの間で「V6よりも優秀」と語られることが多いエンジン形式で、理由としては以下のような点が挙げられます。
- 完全なバランス:直6は自然に一次・二次振動が打ち消され、スムーズに回転。結果として信頼性が高く、耐久性にも優れる。
- トルク特性:ピストン運動が互いに打ち消し合うため効率よくパワーを伝達し、低回転から豊かなトルクを発生。
- 整備性の高さ:シリンダーが一直線に並ぶため、プラグ交換などの作業がしやすい。改造やチューニングにも適している。
- エキゾーストサウンド:ジャガーEタイプやトライアンフTR6など、往年の名車の「心地よい直6サウンド」は多くのファンを魅了。
さらに、トヨタ「2JZ」や日産「RB26」といった直6ターボは、1,000馬力超えも可能な“伝説的エンジン”として今なおチューニング文化を支えており(日産のL28も同様である)、圧倒的な支持を得ているのが直6というエンジン形式です。
参考までに、スープラが「GRスープラ」として復活するに際し、トヨタがBMWを選んだのは、「(当時トヨタが持たず、しかしかつてのスープラの魂でもあった)直列6気筒エンジンを持っているのがBMWだったから」。
つまり、それくらい直6には(V6にはない)魅力が存在するということになりますね。
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実際にV6より優れているのか?
直6神話は「感覚」だけではなく、実際にV6よりも優れた出力を持つユニットが多く、たとえば米国市場で販売される「直6」「V6」の比較だと以下の通り。
- 2024年シボレー・シルバラード 3.0L直6ディーゼル
- 305馬力 / 495lb-ft
- 305馬力 / 495lb-ft
- 2021年フォードF-150 3.0L V6ディーゼル
- 250馬力 / 440lb-ft
同排気量でも直6の方が出力・トルクともに勝っており、直6の優位性が数字によって示されています。
また、BMW 740i、ジャガーF-Pace、マツダCX-90といった現行モデルも直6を採用しており、維持費はやや高額になるケースもあるものの、信頼性やパフォーマンスにおいて直6は十分に健在といえます。
Image:BMW
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なぜ最近は直6が少なくなっているのか?その理由とは
しかし現在の自動車市場を見渡してみると、直6エンジンを製造するメーカー、そしてそれを搭載する車種は減少傾向にあることが見て取れます。
その理由として考えられるのは以下の通りですが、自動車業界の「トレンド」「コスト」に大きな理由があり、となると今の状況で「直6を製造し、搭載する」自動車メーカーは「コストよりも性能を重視している」と考えることができるのかもしれません。
- エンジンの長さ:直6は構造上長くなり、エンジンスペースに余裕がないSUVやセダンでは不利。
- 前輪駆動との相性:現代の主流であるFFレイアウトでは、横置きに収まるV6の方が有利。
- 汎用性の高さ:V6は多くの車種に搭載できるため、メーカーにとってコスト効率が良い。
- 設計の自由度:V6は直6に比較し、左右どちらのハンドル形式にも対応しやすく、グローバルモデルに搭載するのに向いている。
一方、フルサイズピックアップや高級車など、スペースに余裕のある車種では直6が生き残っており、この現状を鑑みるに、「主には(ほとんどの市場で過半数の販売を占めるようになった)SUVの流行が直6を駆逐しつつある」と捉えることも可能です。
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まとめ
直列6気筒は「バランスの良さ・トルク特性・サウンド」といった点で多くのファンを惹きつけ続けてきましたが、パッケージングとコストの観点から、グローバル市場では依然としてV6が主流です。
それでもBMWやマツダ、そしてトヨタの次世代直6など、直列6気筒は確実に“復権”の兆しを見せており、エンスージアストにとっては、これからも注目すべきエンジン形式であることは間違いないものと思われます。
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参照:Carbuzz