| ポルシェは自らを「エンジニアリングカンパニー」と呼び、様々な新技術開発に取り組んでいる |
加えてフォルクスワーゲングループ内では技術面でのリーダー的役割を担っているようだ
さて、ポルシェは現在ターボエンジン搭載モデルのラインアップが多数を占めますが、ポルシェはその状況においてもトップレンジには「ターボ」の名を冠しています。
たとえば、911シリーズにおいては、ベースグレードの911カレラであっても現在ターボエンジンを搭載していますが、それでも911シリーズのフラッグシップである911ターボには別途「ターボ」をいう名を与えています。
これが「911ターボのみがターボエンジンを持っていた時代」であればいざしらず、911の(GT3系を除く)すべてがターボエンジンを持つに至った現代においてもあえて「ターボ」の名を用いているあたり、そして逆にターボエンジンを搭載するほかの911に対してターボの名を与えないあたり、ポルシェがいかに「ターボ」という名称を重視しているかがわかろうというものです。
加えて、ピュアエレクトリックモデルであるタイカンは(当然ながら)タービンを持たないものの、それでもトップレンジには「ターボ」の名が与えられており、つまりポルシェにとってのターボとは、単なる機能の範疇を超え、フラッグシップとしての”象徴”を意味する言葉となっているわけですね。
ポルシェは「ターボ」に並々ならぬ情熱を持っている
なお、ポルシェは自動車業界においては比較的早い段階からターボを採用し、「世界初のターボカー」であったBMW2002(1983年)に遅れること2年、1985年に930ターボを発表しています。
この930ターボに使用されていた技術は、レーシングカーである「911カレラRSRターボ」に由来しますが、これは当時のレギュレーションによって「プロトタイプから、市販車をベースへと車両の主軸が移る」こととなり、しかし市販モデルの911でパワーを稼ぎ出そうとなると、そのエンジンキャパシティに限界が生じ(エンジンコンパートメントのサイズに限りがあり、大排気量マルチシリンダーエンジンを積むことができない)、これを解決するため、「小排気量、6気筒エンジンであっても」大パワーを獲得するための手法としてターボチャージャーを投入することとなります。
そしてポルシェはすでに1972年にポルシェ917/10K、917/30Kにおいてターボチャージャーを実戦投入しており、そのノウハウを活用したということになりますが、この考え方はポルシェ創業者であるフェルディナント・ポルシェの「小さくて効率的なスポーツカーを作る」という基本的な思想を反映させたもので、それが現代に至るまで受け継がれているという解釈も可能であり、つまりターボとはポルシェにとってのDNA(同業当初は技術的に実用化できなかった)だということになるのかもしれません。
ポルシェは991世代の911ターボに搭載すべくクワッドターボを開発していた
そして今回、ポルシェにてEフューエル(合成燃料)マネージャーを務めるマルコス・マルケス氏が語ったのが「991世代の911ターボに搭載するため、ポルシェがクワッドターボを開発していた」という事実。
この991世代の911は2011年~2019年にかけて発売されていますが、この世代の911ターボには「クワッド(4)ターボを積む」という計画があったといい、実際にポルシェはシーケンシャル4ターボを開発してテストを行っていた、とのこと。
同氏によれば「パワー面においても十分な成果を上げることができており、シーケンシャル方式を採用することで、あらゆる回転域でのパワー/トルク増加を確認できたといい、しかし「パッケージングの問題」さらには「追突された場合の修理費用が非常に高額になる」といった懸念から見送られたのだそうですが、もちろんこれを搭載していたら車両価格が高額になりすぎていたのかもしれません。
ただ、このクワッドターボに関する技術は2001年のヴェイロン(8リッターW16クワッドターボ)に生かされているといい、同じフォルクスワーゲングループ内にて開発コストをなんと吸収できたというのがせめてもの救いであったと言えそうです。
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