| 残念ながらこのナナサンカレラをもってしても優勝は叶わなかったが |
その希少性、ユニークな装備はマニアを刺激してやまない
さて、ポルシェ911カレラRS 2.7というと「ナナサンカレラ」として知られる希少車ではありますが、なんとそのナナサンカレラに「ポルシェ公式」ラリーカーが存在しており、今回モントレー・ジェット・センター・オークションに出品される、とのこと。
予想落札価格は最高で300万ドル(現在の為替レートにて約4億2000万円)だと見られており、ナナサンカレラの上に「実戦に参戦したラリーカー」という付加価値が加えられた超高額エスティメイトとなっています。
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このポルシェ911カレラRS 2.7はこんな経歴を持っている
そこでこのポルシェ911カレラRS 2.7の生い立ちについて触れてみると、ポルシェがファクトリーレースカーとして使用されることを目的としたわずか25台の911カレラRS 2.7およびRSR 2.8のうちの1台として生産ラインから(ポルシェによって)抜き取られています。
この911カレラRS 2.7のシャシーナンバーは「285」で、シャシーナンバー「288」とともにポルシェにとっての”特別なミッション”のために選ばれたのだそう。
その特別なミッションとは「973年のイースト・アフリカン・サファリ・ラリーで優勝すること」で、というのも、ケニアで開催されるこの伝統のイベントは、ポルシェが優勝していない最後の偉大なラリー協議であると考えられていたからだとされています。
ポルシェはこのイベントに挑むため、より頑丈な(より背の高い)ショックアブソーバー、シャシー補強、アルミニウム製スキッドプレート、より大きな燃料タンクなどを装着。
そして面白いことに、イベントを観戦している人々が「万が一クルマがコースから外れてしまった場合に」クルマを押して道路に戻せるようにと設計された「観客用ハンドル」を(リヤウインドウ両脇に)装備しています。
残念ながらこのポルシェ911カレラRS 2.7は優勝こそ叶わなかったが
このポルシェ911カレラRS 2.7はイギリスのチームがドライブするために準備され、当初はイエローのカラーリングとボッシュのスポンサーロゴが施されていたそうですが、レース本番では3,293マイル(5,300km)のフィニッシュラインからわずか3時間のところで”オイルパイプの緩み”によるエンジントラブルでリタイヤすることに。
ただしポルシェはそこで諦めず、同年末にフィンランドで開催された1,000湖ラリーに向けて再チューンされた状態で挑み、そこでは全43ステージのうち20ステージで優勝し、最終的に総合3位という成績を残します。
その結果、ポルシェは翌年の1974年のイースト・アフリカン・サファリに再度参戦することを決め、ポルシェは前年の失敗を教訓に、より強化されたトランスミッションとショックアブソーバーを装備し、今回出品されている状態の「ホワイトにブルーのストライプ」へと再ペイントされることに。
ただしフロントスピンドルの破損により1974年大会本戦への出走は叶わなかったものの、姉妹車であるシャシーナンバー288は2位に入賞し、ポルシェにとって満足の行く結果を残した、という記録も。
一方このシャシーナンバー285はアフリカに留まり、その場で地元のエンスージアストへと売却された後に70年代にかけラリーへの参加を続け、その後は人知れず表舞台から消えることになったそうですが・・・。
2000年代になると、ドイツ・カレラRSクラブの会長と幹事であるガブリエル・マーラー・クルツェンベルガー氏とウーヴェ・クルツェンベルガー氏が元FIA世界モータースポーツ評議会代表であるスリンダー・サッティ氏からこのクルマについてに話を聞いたことから事態が急変することに。
このクルマの存在を知ったガブリエル・マーラー・クルツェンベルガー氏とウーヴェ・クルツェンベルガー氏は、この911カレラRS 2.7を買い取ってドイツに持ち帰り、しかしエンジンが焼け付いていたりボディに大きな損耗があり、必ずしてもその状態は良くなかったといいます。
ただし両名は3年にわたる徹底的なレストアを施し、そしてようやく現在の姿へと回復することとなっていますが、その後はさまざまなクラシック・ラリーに参加するなど現在に至るまで現役生活を続けているようですね。
その素晴らしいレストア内容、希少性、競技歴、現在のコンディションが評価されて「最高で4億2000万円」というエスティメイトが出されることとなっており、しかし「わずか2台しか存在しない」という911カレラRS 2.7「ラリー」であるということを鑑みるに、もっと高い価格にて落札される可能性もありそうです。
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