| 一方で911、718ボクスター・ケイマンが大きく成長しスポーツカー復権の兆しも |
SUV市場はそろそろ過密になっている可能性があり、いくつかのメーカーでは成長が停止している
さて、現在自動車メーカー各社が2023年の販売状況を公開しているところですが、今回はポルシェが「2023年には320,221台を販売し、2022年に比較して3%増となった」とアナウンス。
ポルシェAGのセールスおよびマーケティング担当取締役、デトレフ・フォン・プラテン氏は「この結果は、世界的な経済不確実性の時代においても、当社のブランドは引き続き魅力的かつ高級なものであり続けた証明にほかなりません。昨年、私たちは特に、販売地域における非常にバランスのとれた立場から恩恵を受けました。 私たちは今後もこの調和のとれた市場分布を最適化してゆきます」とコメントしています。
なお、ここでいう販売地域のバランスとは「中国で大きな落ち込みを記録したものの、ほか地域でカバーできた」ということを指している、と考えられます。
2023年におけるポルシェの販売はこういった内容となっている
そこでポルシェの2023年の販売実績について紐解いてみたいと思いますが、最も大きな、そしてこれまでとの変化は中国市場が−15%を記録し大きく落ち込んだこと。
中国は少し前に北米を抜いてポルシェにとってナンバーワンの市場となっているのですが、これまでは成長の一途をたどり、しかし今回「非常に」大きく販売が減少しており、ポルシェはこれについて「この地域で継続している厳しい経済状況によるもの」だと分析しています。
なお、中国市場は上下が大きく、過去にはフェラーリやランボルギーニ、ロールス・ロイスもこういった中国市場の浮き沈みに悩まされてことがあり、よって中国市場に依存しすぎない(売れるだけ売るのではなく、やや飢餓感を持たせる)といった戦略を採用しているとも言われていますね(そうすれば需要の減退を受注残でカバーできる)。
一方でこの中国市場の落ち込みをカバーしたのは北米市場であり、ここでは9%伸びて86,059台を販売することにより中国を抜き「首位に返り咲く」こととなっています。
そのほか、欧州(ドイツを除く)でも70,229台(12%増)を納車し、お膝元のドイツでは32,430台(10%増)を販売したほか、海外および新興市場の販売地域での販売台数は16%増加して52,220台へ。
このまま中国が沈んでゆくのかどうはか静観を要するものの、ポルシェとしては「古くからの市場」に大きく助けられたということになりそうです。
もっとも売れたポルシェは「カイエン」
そして市場から「モデル」に目を移してみると、もっとも売れたモデルはやはりカイエンで、これは87,553台となっており、しかし前年比だと−8%。
ただしこれは「新型へと移行するに際し、販売欠格期間があったこと」「ハイブリッドモデルのソフトウェアアップデートにより納車できない期間があったこと」が原因だとされ、このー8%はまず心配する必要がない範囲だと説明されています。
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その次に売れたのはマカンであり、全ラインアップで87,355台が販売され、これは「前年とほぼ同数」。※これまで大きく伸びたマカンの成長が止まったことは注目に値し、プレミアムSUV市場が飽和に達しているのかもしれない。BMWでもSUVの成長が止まっている
パナメーラは34,020台が販売され、しかしニューモデルは2024年からのデリバリーなのでここにはカウントされず。
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718ボクスターと718ケイマンは20,518台(13%増)となっており、ちょっと前の伸び悩みから一転して成長を記録しているほか、911は24%増となる50,146台を販売するなど「スポーツカー復権」の兆しも見られます。
ピュアエレクトリックモデルのタイカンも17%の成長を見せて40,629台が納車されており、いずれのモデルも好調であったと考えて良さそうですね。
前出のデトレフ・フォン・プラテン氏は2024年について困難な年になると予想しており、「私たちは将来に向けた基礎を築くことに注力し、6つのモデルシリーズのうち4つをリニューアルしました。これらによって、これからの1年間、これまでよりも多くの製品が段階的に導入され発売されることになります」とコメント。
しかしこのモデルラインアップ刷新にもかかわらず「2024年が困難になる」と見ているのは”中国市場がさらに厳しい状況に見舞われる”と予想しているためで、この落ち込みを避けるために販売構造(販売地域構成)のバランスを保つこと、特にASEAN市場を強化し続けることに言及しており、これまで以上に価値志向の成長と安定した売上レベルに注力することについても言及しています。
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参照 / Photo:Porsche