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ポルシェのデザイナーがマカンEVの難しさについて語る。「ポルシェらしさを守ると古臭く見える」「新しすぎると、それはポルシェではない」

ポルシェのデザイナーがマカンEVの難しさについて語る。「ポルシェらしさを守ると古臭く見える」「新しすぎると、それはポルシェではない」

| ポルシェは結果的に「EVのデザインとガソリン車のデザイン」を区別しないことにしたようだ |

ただし異なるパワートレーンを積む両者を「ポルシェらしく」見せることには困難を伴う

さて、ポルシェは「マカンEV」を1月25日に発表するとアナウンスしていますが、実車の公開はシンガポールにて行われ、その様子はポルシェによって世界中へと中継される予定となっています。

そして今回、新型マカンEVについて語ったのがスタイルポルシェ(ポルシェのデザイン部門)のボス、ミヒャエル・マウアー氏。

ポルシェはこの新型マカンEVについて「第2世代」だと述べていますが、ここで同氏が語る「進化」について見てみましょう。

ポルシェである以上、マカンも「スポーツカー」として認識されなくてはならない

まず、ミヒャエル・マウアー氏が述べるのは「マカンはスポーツカーとして認識されねばならない」ということ。

今回の新型マカンは、当社が既存の確立された製品アイデンティティを電動化した最初のモデルです。すべての新しいモデルは、ポルシェ製品ファミリーおよび当該モデルの一部として明確に認識できる必要があり、同時に「新しいスポーツカー」として認識される必要があります。

Porsche-Macan-EV (4)

つまりマカンEVは「SUV」「EV」であってもポルシェとして、さらに踏み込めばポルシェのスポーツカーとして見られる必要があり、 「典型的なポルシェ」でありながらも、新時代を切り開く「革新的」なクルマである必要があり、それらの間の適切なバランスを取らねばならないと認めています。

ポルシェの新型車はポルシェらしくあるべきで、しかし伝統的すぎてはならず、新しすぎてもダメだということになりそうですね。

なお、 ポルシェでは、ブランドの特徴を表す 3 つの重要なコンセプト、つまり「フォーカス」、「テンション」、「目的」を定義しているそうですが、これは先日ポルシェの公式コンテンツとして公開された「ポルシェ911をデザインするプロセス」における手法とよく似ており、様々な人々がデザインに関わるという状況において、明確に進む方向性を示すことの重要さをしめしています(一部の自動車メーカーは、そのクルマを開発する際、同様に”指標”を定めて共有することがあり、スズキだとジムニーのイメージに「サイ」を用いており、それが開発担当者の間での基準となっている)。

ポルシェ
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「フォーカス」、「テンション」、「目的」はポルシェにおいてどう機能するのか

そこでこれらの定義がどう機能するのかに関し、たとえば「フォーカス」だと、インテリアでは「常にドライバーが最も重視されること」「ドライバーにとって重要なすべてのコンポーネントが、直接アクセスできるようにその周囲に配置されること」。

これはカーブディスプレイの採用によって一歩前進したといい、ドライバーにとって理想的な、わずかに湾曲した形状のフローティング ディスプレイの採用によって新しい要素を盛り込むことができるようになったとされ、一つの例が「ミニマリストモード」。

これによってドライバーは希望に応じ、運転に重要なインストルメントパネルの要素のみを選択することができ、絶対に必要なものだけに集中することができるようになるといいますが、これはかつてのボルボに搭載されていた「夜間に必要なメーターのみをライトアップする」という考え方によく似ているかもしれません(そしてメルセデス・ベンツとは真逆の考え方でもある)。

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なお、ポルシェは新型カイエンにてはじめて「フルデジタル」メーターを採用して賛否両論が巻き起こりましたが、このデジタルメーターの採用はけして「流行に乗った」わけではなく、あくまでもポルシェが追求する「フォーカス」に則ったもので、さらにはポルシェが創業当初から掲げる「(様々な意味で)ドライバーに負担をかけない)」という考え方を突き詰めたものであったということもわかります。

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「典型的なポルシェ」と「革新的」とのバランスは極めて困難

そしてミヒャエル・マウアー氏は「典型的なポルシェ」と「革新的」とのバランスの難しさについても触れており、ここではポルシェ最大の市場である中国(ただし2023年に北米市場に逆転されている)の嗜好、そして中国を中心にどんどん登場する新しいトレンドやライバルへの対応の必要性についても触れることに。

一般的に、ここでも適切なバランスをとることが、ポルシェのような確立されたブランドにとって絶対に不可欠であると思います。 強力なアイデンティティを持つブランドは、あらゆるトレンドを惜しげもなく追従するわけではないという事実も踏まえています。 場合によっては、すべてのトピックにおいて先手ではない方が良い戦略となることがあります。 トレンドや影響を注意深く精査し、それらがブランドに適合するかどうかを批判的に検討するという考えですね。 これが私たちが独自のアイデンティティを長期にわたって維持する唯一の方法なのですが、 これはさまざまな市場にも同様に当てはまります。 一例として、アジアでは、自動車のデジタル要素が非常に重要な役割を果たしており、デザインはヨーロッパの観点と比較して全体的により遊び心があります。 それはポルシェにとって何を意味するのでしょうか? その結果、私たちはこれらの要件を注意深く検討することになります。 同時に、ポルシェが世界中でこれほど愛されている理由は、明確なブランドDNAと長い伝統、そして私の言葉で言えば「一貫した履歴書」であると私は強く信じています。

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加えて同氏は「ポルシェが時代遅れで最新ではないと認識されるリスク」抱えていることについても認めており、これについてはポルシェだけではなく「長い伝統や特徴的なデザインを持つブランド」すべてに当てはまることなのかもしれません。

それらのブランドは「(そのブランドのクルマにつき)この部分はこうでなければならない」という成約があり、これが各々のブランドアイデンティティを構築するわけですが、一方では「古臭く」見える部分もあるかもしれず、その一方で中国の新興自動車メーカーは歴史がないためにそういったことを気にせず自由にデザインを行うことができ、ここがポルシェにとっての「悩ましい」部分なのかもしれませんね。

フォルクスワーゲン
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自動車のデザインは技術的用件にあわせて変化する

今回の「マカンEV」はこれまでの内燃機関を持つマカンとは全く異なる技術的要件を持ち、つまり「フロントにエンジン、そこからトランスミッションと排気管が生える」という構造を持たず、しかし車両全体としては「ポルシェに見える」必要があるものの、これについてもミヒャエル・マウアー氏は「まだまだ課題が残される」とコメントしており、マカンEVにおいては「パワートレーンを置き換える」だけではなく、様々な苦労があったことについても語っています。

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自動車の技術的要件は常に設計の絶対的な基礎となります。 それは、車両内のさまざまなコンポーネントの配置であるパッケージングの非常に初期段階から始まります。 このパッケージングは基本的なプロポーションにとって非常に重要です。古典的なポルシェのフライラインは、どんな配置でも実現可能ではありません。 電動パワートレインは、新たな可能性を開くと同時に新たな課題ももたらします。巨大なエンジン ブロックがないため、フロント ボンネットの典型的な形状や起伏をより明確に解釈できるようになります。 同時に、(車両駆動用の)バッテリーはまだかなり大きいため、多くのスペースを占有し、車両の定義となる幅と高さの比率を乱す可能性があります。 そしてもちろん、エレクトリックスポーツカーの航続距離に関しては、空力が大きな役割を果たします。 しかし、それは私たちにとってまったく馴染みのない状況ではありません。 ドライブトレイン技術を超え、私たちは設計に影響を与える課題に常に直面しているのです。

そして最後にミヒャエル・マウアー氏は重要な決定事項について触れており、それは「EVをEVとして強調せず、内燃機関搭載車とデザイン上の差異を設けない」ということ。

EV登場初期には「EVにはEVらしい未来的なデザインを与える」手法が(自動車業界で)流行したものの、最近ではアルファロメオ、そしてBMWも「EVと内燃機関車とを区別しない」という方針に動いており、これは今後他の自動車メーカーでも追随が見られる動きかもしれません。

一般的に、ポルシェは電気モデルを内燃エンジンのスポーツカーと完全に区別しないことに決めました。 ポルシェはポルシェであり続けます。そして電気ポルシェであっても、そのセグメントではスポーツカーです。 この観点からすると、私たちが実証済みのポルシェ デザインのDNAを放棄していないのは当然です。 多くを明かすことなく、新型マカンは一見すると明らかにポルシェ、そしてマカンです。 私たちは、ポルシェにとってこのセグメントのスポーツカーの典型であるプロポーションを基本的に維持していると言えます。 デザインは内外装ともに研ぎ澄まされ、よりスポーティでダイナミックな雰囲気を醸し出しています。 そして、ドライビングプレジャーは確実にデザインに反映されています。

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参照:Porsche

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