
Image:Porsche
| ポルシェ ePTM 徹底解説:マカンEVが実現する、効率と性能を両立する驚異の四輪駆動とは |
電動版「PTM」は機械式PTMに比較して5倍の速度での処理を可能とする
ポルシェの電動化を語る上で外せない、革新的な四輪駆動システム「ePTM」についてポルシェ自らが語るコンテンツが公開。
125年という長い歴史を持つポルシェの四輪駆動技術がエレクトリックモーターという新たな動力源を得て「リアルタイム制御」の域に到達したことが明確になっており、ここではポルシェ・トラクション・マネジメント(PTM)が「ePTM」としてどう生まれ変わったのか、その圧倒的な反応速度とドライビングモードごとに変わる駆動配分の哲学を見てみたいと思います。
ePTMが変える3つの常識
- 反応速度は従来システムの5倍:駆動輪の空転をたった10ミリ秒(0.01秒) で検知し駆動力を最適な車輪に配分
- モードで性格が変わる「賢い四駆」:効率優先の「ノーマル」、トラクション重視の「スポーツ」、悪路対応の「オフロード」と、目的に応じて駆動配分を自動最適化
- 「仮想的な差動制限」でオフロード性能を確保:物理的なセンターデフロックに頼らず、電制で前後軸の回転差を抑制し、悪路での脱出性を高めている
Image:Porsche
フェルディナント・ポルシェの夢を、電気で「リアルタイム」に実現する
125年の系譜:ハードウェアからソフトウェア制御への大転換
ポルシェの四輪駆動の源流は、創業者フェルディナント・ポルシェが1900年に開発した「ローナー・ポルシェ」にまでさかのぼります。
近代だと約40年前に「ポルシェ・トラクション・マネジメント(PTM)」として実用化されたこの思想は、エンジンとプロペラシャフト、機械式ディファレンシャルというハードウェアの組み合わせによって「駆動力を必要とする車輪に必要なだけ送る」ことを実現してきたわけですね。
しかしマカン エレクトリックに搭載される「ePTM」は、このアプローチを根本から変えるもので、前後車軸に独立して配置された2つの電気モーターを、パワーエレクトロニクスによって個別に、かつほぼリアルタイムで制御するソフトウェア中心のシステムへと進化することに。
これによって従来の機械式パートタイム四駆システムと比べ約5倍もの反応速度を実現している、と説明されています。
駆動配分の哲学:モード選択がクルマの性格を決める
さらにePTMの真の凄さは単に速いだけではない「選択と集中」にもあります。
- ノーマルモード:効率と航続距離を最優先。可能な限り後輪駆動(2WD)で走行し、必要最小限で前輪モーターを作動させる「省エネ四駆」
- スポーツ / スポーツプラスモード:トラクションとダイナミクスを最優先。積極的に前輪モーターを作動させ、四輪のグリップを最大限に引き出し、コーナリング性能と加速安定性を高める「攻めの四駆」
- オフロードモード:悪路での脱出性を最優先。四輪駆動を基本とし、電制による「仮想のセンターデフロック」機能で前後軸の回転差を抑制。さらにサスペンションの地上高を最大40mm上げ、本格的な不整地走行を可能にする
ePTMを支える周辺技術とマカンEVにおける統合制御
ePTMと連携する「三位一体」の高性能システム
ePTM単体でも高性能ですが、ポルシェはそれをさらに高次元で統合する二つのシステムを提供します。
- ポルシェ・トルクベクタリング・プラス(PTV Plus):主にマカン ターボに装備。後輪左右の駆動力を電子的に配分しコーナーでの旋回性能(ターンレスポンス)と安定性を劇的に向上させ、ePTMによる前後配分とPTV Plusによる左右配分が連携し、四次元の駆動力制御を実現
- ポルシェ・アクティブサスペンション・マネジメント(PASM):新開発の「ツーバルブ技術」採用ダンパーにより、コンフォートとスポーツの間の調整幅を拡大。荒れたアスファルトでの乗り心地と高速山道での精密な車体姿勢制御を両立
統合制御が生み出す「ポルシェらしい」電気自動車体験
これらのシステムは個別に作動するのではなく選択されたドライビングモードの下で高度に連携し、例えば「スポーツプラスモード」ではePTMがトラクション重視の配分に切り替わり、同時にPTV Plusがより機敏なトルク配分を、PASMが硬めのダンパー設定を選択することに。
これにより、ドライバーは単一のモードセレクターを操作するだけで車両全体の性格を「効率重視」から「完全なるスポーツ」までシームレスに変化させることができる、と説明されています。
ePTMは四輪駆動システムではない。ポルシェの「運転する喜び」という哲学を、電動化時代に最適化した「神経系」である
ポルシェePTMの開発は、単に電気自動車用の四駆システムを新調したわけではなく、それはフェルディナント・ポルシェが夢見た「理想の駆動力配分」を21世紀の技術で限りなく理想に近づけるための”延長線上にある挑戦”です。
10ミリ秒という人間の神経伝達速度に迫る反応時間、ドライビングシチュエーションに応じて自律的に性格を変える適応力、そしてサスペンションやトルクベクタリングとの有機的な連携。
これら全ては「運転する喜び」という不変の哲学を電動化という新しい手段で追求し続けるという「ポルシェの確固たる意志の表れ」にほかなりません。
電気自動車は「単なる移動手段」にもなり得ますが、ポルシェはePTMのような技術を通して、電気自動車が「これまでにない次元のドライビングダイナミクスを提供する乗り物」 であり得ることをマカンEVをもって世界に示そうとしているということになり、これはポルシェが電動化時代においても紛れなく「ドライバーズ・カー」の頂点に立ち続けるという力強い宣言となりそうですね。
合わせて読みたい、ポルシェ関連投稿
参照:Porsche

















