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| 「918スパイダー」にはザルツブルクカラーがオプション設定されていたが |
この記事を5秒で理解できる要約
- 世界に一台のカスタム: 20年前のポルシェ「カレラGT」が、伝説のル・マン優勝車「917」のザルツブルク・デザインで現代に蘇る
- 新車状態への完全復元: ポルシェの「ファクトリー・リコミッション」により、V10エンジンからカーボンパーツまで全てを分解・刷新
- 職人技の結晶: 複雑な曲面を持つカレラGTに合わせ、手作業で塗装されたインディアンレッドとホワイトの美しいリバリー
- 内装のこだわり: インディアンレッドのアルカンターラと、918スパイダー由来の難燃素材を組み合わせた究極のコクピット
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ポルシェが「あの」917Kに採用されていた”超軽量”キーをオブジェ化して発売。さらにはカレラGTのキーも「コレクターズアイテム」として登場
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夢が形になる場所。ポルシェ「ソンダーヴンシュ」が生んだ奇跡の一台
「20年連れ添った愛車を、当時の新車状態に戻し、さらに自分の理想のデザインを注ぎ込みたい」
そんなクルマ好きなら誰もが一度は抱く贅沢な夢をポルシェのカスタマイズ部門「ソンダーヴンシュ(Sonderwunsch:特別注文)」が叶えたというニュース。
今回、ポルシェが公式コンテンツとして、プエルトリコの自動車業界の重鎮、ビクター・ゴメス氏が所有する2005年型カレラGTを「ファクトリー・リコミッション」という魔法によって”走行距離0kmの状態”へと生まれ変わらせた、と紹介しています。
ここでは、単なるレストアを超えた、ポルシェの情熱と技術の粋を集めたこの特別なプロジェクトの全貌を見てみましょう。
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伝説の再来:ザルツブルク・デザインとカレラGTの融合
今回のプロジェクトの最大の特徴はその外観。
1970年、ポルシェにル・マン初の総合優勝をもたらした伝説の「917ザルツブルク」(ゼッケン23番)のカラーリングがカレラGTのボディへと見事に再現されています。
なお、このボディカラーはポルシェにとって非常に重要なもので、918スパイダーにもオプション設定されたほか、コンセプトカー「917リビングレジェンド」にも用いられていることでも知られます(そのほかポルシェ963、さらには様々なコラボグッズ、オプションにもその魂が息づいている)。
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ポルシェはときどき「とんでもない」ハイパーカーを市販しようと考える自動車メーカーである。過去には様々なコンセプトにてこんなハイパーカーが企画されていた
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困難を極めた「デザインの適応」
ただ、このザルツブルグカラーをカレラGTに用いようとしたとして、そもそも917とカレラGTではボディの形状も寸法も全く異なります。
そのため、デザイナーのグラント・ラーソン氏(カレラGTのデザインを担当した人物)は、単に色を塗るのではなく、カレラGTの抑揚のあるボディラインに合わせてラインをテープで引き直し、完璧なバランスを追求することとなったようですね。
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- 手書きの美学: 赤と白のカラーリングはステッカーではなく、熟練の職人による手作業の塗装
- 最新の保護技術: 実際にプエルトリコの公道を走らせるため、この貴重な塗装は透明な保護フィルムで守られている
- マットカーボンのコントラスト: ルーフやディフューザーにはマットブラックのカーボンを採用し、クラシックなカラーリングの中に現代的なシャープさを加えている
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職人技の極致:ファクトリー・リコミッションと圧巻のスペック
なお、この「ファクトリー・リコミッション」とは、単なる修理ではなく、車両を一度完全に解体し、あらゆるボルトやワッシャーに至るまで点検・交換し、「新車状態(ゼロ・キロメーター)」に戻すプロセスです。
さらには現代風のタッチが随所に盛り込まれ、ブラックのホイール、そしてホイール内側に入る「Carrera GT」の文字など、当時には存在しなかったディティールも再現され、完全に「レストア」の域を超えることに。
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ポルシェ・カレラGT「ザルツブルク仕様」主要スペック
| 項目 | 詳細内容 |
| ベース車両 | 2005年型 ポルシェ カレラGT |
| エンジン | 5.7L 自然吸気 V型10気筒(フルオーバーホール済) |
| 最高出力 | 450 kW (612 PS) |
| 最大時速 | 330 km/h |
| 車両重量 | 1,380 kg |
| 内装素材 | インディアンレッド・アルカンターラ、マットカーボン |
| 特筆事項 | 918スパイダー用FIAテキスタイル(シート中央部) |
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インテリア:情熱の「インディアンレッド」
ドアを開けると、そこには広がるのは鮮烈なインディアンレッドインテリア。
ダッシュボード、ドアパネル、さらにはフロントのラゲッジスペースに至るまでアルカンターラで統一され、シート中央には次世代のハイパーカー「918スパイダー」に使用されている難燃性のFIAテキスタイルが採用されるなど、新旧のハイパフォーマンスモデルが見事に融合しています。
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結論:受け継がれる「走る情熱」
今回のカレラGTの復活は、単に高価な車を綺麗にしたという話ではなく、それはポルシェが持つモータースポーツの歴史への敬意と、オーナーの「これからもこの車と共に走りたい」という純粋な愛が結実した姿です。
「新車状態に戻り、走行距離も0km。まさに自分のアイデアが形になった最高の状態だ」と語るビクター・ゴメス氏。
プエルトリコの太陽の下、この赤いカレラGTがV10エンジンの咆哮を響かせる姿は、多くのファンに勇気と興奮を与えてくれることとなりそうですね。
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参考までに、カレラGTに積まれるV10エンジンは、もともとル・マン24時間レースに出場するために開発されていた純粋なレーシングエンジンがベースとなっており、そういった経緯もあって、今でも「世界で最も官能的なサウンドを奏でるエンジン」の一つとして称えられています。
そして参戦こそ叶わなかったものの、いまこうやって「ポルシェに初めてル・マンでの勝利をもたらした」917と結びついたことは単なる偶然ではないのかもしれません。
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参照:Porsche



















