
| ポルシェは「押し付け」ではなく、常に顧客の要望に沿ったクルマを作ろうとしてきた |
その意味では、ポルシェの歴史は「顧客とともに歩んできた」歴史でもある
さて、多くの人々がポルシェを世界で最-も素晴らしい自動車ブランドのひとつだと捉えていることに疑いの余地はなく、たとえ他のライバルが魅力的なデザインや倍の馬力を誇ったとしても、ポルシェは他に類を見ないブランド体験と一貫性を提供しており、そのためポルシェを所有することはほぼ通過儀礼のように考えられています。
そんなポルシェのラインアップの中においても、特に911は最も優れたクルマの一つだと考えられており、多くの顧客が高度なカスタムをポルシェに依頼し、またポルシェも多くの特別仕様車をリリースしています。
ポルシェはどうやってカスタム車両や限定モデルを製造しているのか
ポルシェが限定版モデルを作るプロセスは長く、時間がかかり、時には苦労も伴うものの、同社はこの技術を完璧にしていて、限られた台数のモデルを作ることによって「誰でも手に入れられるクルマ」をさらに特別にし、さらにパフォーマンスを高め、これによって販売価格(利益)を引き上げているわけですね。
そしてこの価格にもかかわらず、ポルシェには常にそのすべての限定版を購入しようとする熱心なファンが存在し、ここでどうやってポルシェが「特別な911を作っているのか」を見てみましょう。
Image:Porsche
まず、ポルシェが限定版や一台限りのワンオフモデルを作る理由を理解するためには、Exclusive Manufaktur(エクスクルーシブ・マヌファクトゥア)とSonderwunsch(ソンダーヴァーシュ)の歴史を知る必要があエクスクルーシブ・マヌファクトゥアは1986年にポルシェ・エクスクルーシブとして設立され、(一般のユーザーにも)よりアクセスしやすい部門で、ほぼすべてのポルシェのモデルにカスタマイズオプションを提供しています。
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ポルシェがこれまでの「エクスクルーシブ」を超えるカスタムを実現する「ソンダーバーシュ」をスタート!今までにできなかったようなワンオフモデルの製作も可能に
| ポルシェはこれまでにも数々のカスタムモデルを作ってきた | ポルシェは通常オプションに加え、特別なオプションを車輌に反映させる「エクスクルーシブ・マヌファクトゥア」を持っていますが、今回はさらにエ ...
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なお、その期限は1962年にアルフレッド・クルップ・フォン・ボーレン・ウント・ハルバッハ氏が、自身の356 Bクーペにリアウィンドウワイパーを取り付けて欲しいという注文を行ったことがきっかけだといい、以降ポルシェは様々な顧客のリクエストに応えることとなったようですね。
そして「ソンダーヴァーシュ」は”特別な願い”という意味を持つドイツ語で、この言葉の意味の通り、通常のオプションそしてエクスクルーシブ・マヌファクトゥアでも対応できな範囲のリクエストを実現する部門。
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さよならポルシェ911ダカール・・・。ポルシェが「911ダカール最後の1台」を特別仕様へとカスタム。オーナーの要望にて特別なブルーが調合される
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さらに(その顧客の)独占性を高め、一台限りのモデルの製造に特化した部門ということになりますが、その起源は1978年にまで遡ることができ、「無限の想像力と無限の資金を持った」顧客によって注文がなされたことが”はじまり”だとされています。
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ポルシェが個人オーナーのために「当時存在しなかった」993スピードスターをワンオフにて製作。993ターボ、993RSのほか最新要素も取り入れる
Image:Porsche | この993スピードスター「LT」には細部に至るまでオーナー、そしてポルシェの愛情と情熱が込められている | 当時は一般的ではなかった「ブラックアクセント」、最新の「クワ ...
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そしてこのエクスクルーシブ・マヌファクトゥア、ソンダーバーシュともにポルシェのツェッフェンハウゼン工場を拠点としており、そこで働くチームと密接に協力し、顧客の求めるビジョンを実現している、ということに。
このツェッフェンハウゼン工場は”世界で最も進んだ自動車生産施設”だとされ、限定版911の製造において重要な役割を果たしていますが、この工場は現在2億5000万ユーロの費用を投じた改修が進行中で、タイカンに使用された自動化技術をさらに拡大する計画だと報じられています。
具体的には911モデルにも「フレックスライン」を拡張対応し、ひとつのラインにおいて異なるパワートレインやバリエーションに対応した生産できるようにすることだといい、これは先日「どうやって様々な911を製造しているのか」というプレスリリースによって示された通りです。
Image:Porsche
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ポルシェ911のラインアップは現在18種。これにらに限定モデルやオプション装着車両、さらにはレーシングカーまでもが同じ工場のラインで生産中。一体ポルシェはどうやってこれを成し遂げたのか?
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ポルシェのワンオフモデルにおける真髄は最先端の素材と芸術的な仕上げにある
ただ、ポルシェは「真の魔法はポルシェの職人たちの手に委ねられている」と述べ、つまりはオートメーション化されていない部分にこそ重要な部分が隠されていると説明しており、彼ら職人はエンジンの組み立てや、限定版モデルを特別にするための細部の仕上げを担当し、これら人間の技と自動化が融合することで、911 S/TやターボSなどの”細部にわたる品質が保証される”こととなるのだそう。
エクスクルーシブ・マヌファクトゥアには(通常)1,000を超えるオプションが存在し、カーボンファイバーや本物の木材、911 S/Tのヘリテージデザインパッケージや911ダカールのラリー仕様パッケージなど、さまざまなカスタマイズが可能です。
内装では、ポルシェ独自のサドルリーワーク(皮革加工専門)部門が手作業で加えるレザーの追加などがあり、これらももちろんすべて手作業にて製作が行われます。
さらにこの上のソンダーバーシュプログラムとなると、ユニークな外装色やオーダーメイドオプションが他の車両との違いを際立たせることとなり、ここでは顧客の要求に応じ、独自のサーキット専用モデルを作り上げることもできる、とのこと。
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ポルシェのカスタム部門「エクスクルーシブ」の知られざる事実5つ。初代ターボSはエクスクルーシブ製
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ポルシェの限定モデルの実現には最大で4年もかかる
これら「顧客の要望によるカスタム車両」のほか、ポルシェは独自に限版モデルを発表していますが、この製造は非常に精密なプロセスをたどり、さらに完璧への深いコミットメントが求められます。
そしてこの限定モデルの市販には最大で4年を要し、これはソンダーヴァーシュの「2-3年」に比較しても非常に長い期間となっており、たとえばちょっと前に発表された(映画”カーズ”との提携による)911サリー・スペシャルはその典型的な例で、一見するとさほど大きな変更に見えないものの、各ディテールは慎重に再配置されることに。
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「ポルシェ911×カーズ」!これまでには見たことがないレベルのこだわりが詰め込まれた911GTSサリー・カレラがついに完成。至るところまでカーズ仕様に
| おそらくピクサー、そしてポルシェのスタッフは大いに楽しみながらこのサリー・カレラを作ったに違いない | 予想落札価格は出ていないが、「とんでもない」価格になることだけは間違いない さて、ポルシェと ...
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すべての限定そしてワンオフモデルは完全な検査を受け、音響的・機能的にテストされ、最終的に顧客の手に渡る前に高い基準をクリアすることが義務付けられ、しかしポルシェは「各限定版モデルは愛情のこもった作品であり、ポルシェの社員だけでなく、顧客自身もその一部となって完成させた、価値が高いクルマである」と締めくくっています。
Image:Porsche
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ポルシェ「中国の落ち込みを、911や限定モデルなどの高利益車種の好調な販売がカバーしている」。今後も限定モデルを多数展開する路線に変更はないもよう
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参考までに、主なポルシェの限定モデルは以下の通り。
- 2009年 911スポーツクラシック・・・250台
- 2010年 911スピードスター・・・356台
- 2011年 911カレラGTS B59・・・5台
- 2012年 911クラブクーペ・・・13台
- 2015年 911GTSクラブクーペ・・・60台
- 2017年 911ターボS エクスクルーシブ・・・500台
- 2019年 935・・・77台
- 2021年 911ターボデュエット・・・10台
- 2022年 911(996)クラシック倶楽部クーペ・・・1台
- 2022年 911サリースペシャル(カレラGTS)・・・1台
- 2024年 911S/T・・・1,963台
- 2,025年 911ターボS 50Years・・・1974台
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参照:Porsche