
| 正直、ここまで来ると「撤退」も考えねばならないレベルである |
ジャーマンスリーは中国に「してやられた」のかもしれない
欧州の高級車ブランド(BMW、メルセデス・ベンツ、アウディなど)にとって、中国市場はかつての「金のなる木」から「苦境の戦場」へと変貌。
販売店(ディーラー)の倒産や撤退が相次ぐ、深刻な小売現場の現状を考察してみましょう。
記事の要約
- 利益率の消失: 中国の高級車ディーラーの半数以上が赤字。BMW、メルセデス・ベンツ、アウディの「BBA」が苦戦
- 販売網の縮小: 第2・第3地方都市を中心に、アウディなどの正規販売店が相次いで閉鎖・営業停止
- 泥沼の価格戦: 在庫処分のための「公式・非公式」の大幅値引きが横行し、売れば売るほど赤字が出る状況
- 中国ブランドの台頭: XiaomiやAITO、Nioなどの現地EVブランドがショールームを奪取。ユーザーの関心が「機械的ラグジュアリー」から「デジタル・ラグジュアリー」へ完全シフト
欧州ブランドの「神話」が崩れる時
「ベンツやBMWなら、黙っていても売れる」——中国ではそんな時代もあったものの、方々で報じられる通り、そういった話はいまや「過去のもの」に。
2026年現在、中国の高級車市場では、欧州メーカーが価格を数百万から1,000万円単位で引き下げる一方、それを販売するディーラーが経営破綻するという壊滅的な小売パニックが起きているとの報道。
これまではステータスの象徴だったドイツ車ではありますが、最新のEV性能とデジタル体験を武器にする中国ブランドにシェアを奪われ、販売店は「在庫の山」と「消えた利益」に頭を抱えているというのが直近の状況です。
ディーラーを襲う「逆ザヤ」の恐怖
現在、多くの高級車ディーラーは、メーカーからの販売ノルマを達成するために、車両の仕入れ値よりも安い価格で販売する「逆ザヤ」の状態に追い込まれています。
- 収益性の悪化: 2025年上半期のデータでは、中国の全ディーラーの52.6%が赤字を計上。2026年に入ってもこの傾向は加速しており、黒字を維持できているのはわずか30%程度に留まる
- 店舗閉鎖の波: 最近では、北京や江蘇省、浙江省などでアウディの正規販売店が突如閉鎖され、プリペイドのメンテナンス代金が返金されないなどのトラブルも発生。2025年だけで約2,000もの「4S(販売・サービス等)」店舗が市場から姿を消したと推計される
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2026年 中国高級車市場の現状
欧州の伝統的なプレミアムブランド(BBA)と、勢いづく中国ブランドの対比が鮮明になっており・・・。
主要メーカーの販売・経営状況比較(2025-2026予測)
| 項目 | 欧州高級ブランド (BMW/メルセデス等) | 中国EVブランド (Xiaomi/AITO等) |
| 販売動向 | 10〜20%の減少 (前年比) | 30〜50%の増加 (前年比) |
| 主な武器 | 伝統的なブランド力、走行性能 | AI、自動運転、スマートコックピット |
| 値引き幅 | 10%以上の公式値引き + 大幅な裏値引き | 比較的安定(または戦略的な一発価格) |
| ディーラー状況 | 統廃合・縮小が加速 | 旗艦店が都市中心部に進出 |
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この状況をなんとかすべく、ジャーマンスリーの一部は「値引きを公然と認め」値引き後の価格を正式な価格として改定を行ったり、アウディは「現地専用」として”AUDI”ブランドの展開を開始することに。
しかしいずれも特効薬とはなりえず、状況はさらに悪化するばかりというのが現在の状況というわけですね。
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市場の変化:求められるのは「走るスマホ」
なぜここまで欧州ブランドが苦戦しているのか。
それは、中国の消費者が求める「高級」の定義が変わったからだとされ・・・。
- 「機械」から「デジタル」へ: 伝統的なブランドが「革の質感」や「ドアの閉まる音」を追求する一方、中国の若年層は「AIアシスタントの賢さ」や「スマホとの完全な同期」を重視している
- スピード感の欠如: 中国ブランドが数ヶ月単位でソフトウェアをアップデートするのに対し、欧州勢の開発サイクルは依然として数年単位。この「デジタル・ギャップ」が致命傷となっている
- 中国ブランドへの愛着:徹底した愛国教育、中国企業の”愛国心を利用した”プロモーションによって、海外の高級ブランドが「時代遅れ」「中国に敗北を喫した」と捉えられ、プレミアム感が失われている
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これは「かつて日本市場においても輸入車のシェアが95%を占めていたが、その後、日本の消費者の好みに合わせた国産車がシェアを伸ばした」状況にもよく似ています。
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そしてその日本市場でも、たとえばかつて日本のメーカーが圧倒的なシェアを占めていた電子機器や家電といった市場につき、中国の製品に押されて相次ぎ日本のメーカーが「電子機器」「白物家電」から撤退しているという状況を見るにつけ、自動車業界においても遅かれ早かれ「同様のことが起こる」可能性が推測され、まさに「歴史は繰り返す」ということなのかもしれません(日本のブランドは残るかもしれないが、中身は中国製になるかもしれない)。
さらに中国は日本とは異なり、「舶来信仰」が強くないため、海外の自動車メーカーが中国市場において今後も存在感を発揮し続けることは非常に困難だとも考えられ、海外勢の失地挽回は容易ではないだろうと考えています。
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中国のビジネスモデルとは
中国のビジネスモデルにおいて特徴的なのは「売れたものを模倣してそのシェアを奪い取る」というもので、何かがヒットすれば雨後の筍のように同じような会社や製品がニョキニョキと出てくるわけですが(シーインやアリエクを見てもわかると思う)、中国政府もこれをうまく利用して「国の成長」につなげており、おおよそは以下のような戦略を採用しています。
- 外国資本を中国国内へと導入
- 外国資本の資金によって国内の市場を開拓・拡大
- 外国企業の技術を国内へと移転
- 拡大した市場めがけて一気に国内企業が大量になだれ込む
- レッドオーシャン化した市場で弱者が淘汰され、強いものが生き残る
- 国内企業を「優遇」することで外国企業は競争に生き残れなくなって撤退
- 中国国内で資本を循環させることが可能に
実際のところ、数年前までは中国の街なかにおいても外資系企業の看板ショップ、や外資系飲食店をたくさん見かけたものですが、この数年はそれらが「中国資本へと」置き換えられる例が多発しており、”用済み”となった海外ブランドがどんどん排除されているといった印象も。
結論:2026年は「販売網再編」の1年になる
ただしBMWやメルセデス・ベンツもただ手をこまねいているわけではなく、ディーラーへの財政支援を行ったり、2027年までに全店舗を最新の「デジタル体験型」リテール形式に移行するなどの対策を急いでいるのが「現在地」。
しかし、過剰な在庫と不採算店舗の整理は避けられず、2026年を通じて中国全土でさらなるディーラーの淘汰が進むことは間違いないとも見られているのが現状であり、欧州ラグジュアリーブランドにとって中国市場での「生き残り」はもはや製品の問題ではなく、崩壊しかけている「販売エコシステム」をどう立て直すかという、極めて困難なフェーズに突入しています。
そしてこの立て直しが「不可能」という可能性もゼロではなく、それにかかるコストがメリットを上回るならば、そして将来的に市場を奪還できる見込みがないのであれば、「中国市場からの撤退」を考えねばならないのかもしれません。
参考:「4S」店舗とは?
中国の自動車販売で一般的な「4S」とは、Sale(販売)、Sparepart(部品)、Service(アフターサービス)、Survey(情報フィードバック)の4つの機能を備えた正規ディーラーのこと。
かつてはこの4S店舗を持つことがブランドの信頼の証でしたが、現在はメーカー直販モデルや「都市型ショールーム」へのシフトが進み、この巨大なコストを抱える4Sモデルが経営を圧迫する一因となっています。
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参照:CarNewsChina




















