
| かつては「輸入車における不動の王者」でもあったが |
もはや現在のフォルクスワーゲンにはその面影すら感じることが難しい
さて、現在日常的に使用する「ちょっとコンパクトな」クルマを探しており、いろいろとディーラーを見て回っている状態です。
そこでフォルクスワーゲンのクルマも見てみるか・・・と思ってディーラー検索をかけてみたところ、近所にあった2件が両方とも閉店しており、ちょっと足を伸ばさねば展示車を見たり試乗することもできない状態に。
いったい何が起きているのか調べてみると、日本市場におけるフォルクスワーゲンの販売台数が大きく落ち込んでいることが分り、それに伴ってディーラー網も縮小の一途を辿っているという事実が見えてきます。
この記事の要約
- フォルクスワーゲンの販売台数はこの10年で「半減」
- 2026年のディーラー数は2025年比で約6%減、ディーラー網の整備が進む
- ただしディーラーの整理が販売減少に追いつかず「1店舗あたり」の販売が加速度的に減少
- フォルクスワーゲンの販売が減少した理由は「5つの」多重的な要因によるものである

VWの日本における販売台数の推移
そこで日本におけるフォルクスワーゲンの販売台数を見てみたいと思いますが、数値を拾える範囲では2014年がピークとなっており、JAIA(日本自動車輸入組合)のブランド別新車登録台数を中心に整理すると以下のようになっています。
なお(ピークである2014年から)2015年の減少は排ガス不正問題の影響によるもので、ここからフォルクスワーゲンの転落が始まったのかもしれません。
| 年 | VW販売台数 | 前年比 | 2014年比 |
|---|---|---|---|
| 2014 | 67,438台 | ― | 100% |
| 2015 | 54,766台 | ▲18.8% | 81.2% |
| 2020 | 36,574台 | ▲22.0% | 54.2% |
| 2021 | 35,213台 | ▲3.7% | 52.2% |
| 2022 | 32,226台 | ▲8.5% | 47.8% |
| 2023 | 31,815台 | ▲1.3% | 47.2% |
| 2024 | 25,653台 | ▲19.4% | 38.0% |
| 2025 | 31,031台 | +20.9% | 46.0% |
ちなみにディーラー数はそこまで遡ることができず、日本ソフト販売の全国チェーン店舗データによると以下の通り。
- 2024年4月:292店舗
- 2025年4月:288店舗
- 2026年4月:272店舗(5.6%減)
なお、この数値は「正規ディーラー企業数」ではなく「店舗数」で、日本ソフト販売自身も公開情報を基にしたチェーン店舗データであり、すべての店舗を網羅するものではないとしていることろは要注意(したがってVWジャパン公式の「正規販売店数」と完全に同一ではない)。

1店舗あたり年間販売台数は大幅減
販売台数が大きく減っているのに「店舗数」がそこまで減っていないとなると、当然ながら1店舗あたりの販売台数も減っていて・・・。
2014年
67,438台÷ 約272店舗= 約248台/店舗
2025年
31,031台÷ 272店舗= 約114台/店舗
となり、単純計算では、1店舗あたり販売台数が約248台 → 約114台に減少し、月あたりだと9.5台しか販売しておらず、輸入車ブランドの中では「そこまで」価格帯が高くはないことを考慮すると、「採算割れ店舗」が多数出ているであろうことも推測できます。
なぜVWディーラーがこれまで残ってきたのか?
そこでちょっと気になるのが「フォルクスワーゲンのディーラーがなぜ生き残っているのか」ということですが、ここにはVWならではの特殊事情があり、というのもVWディーラーは、単純に「VWの新車だけを売っている会社」ではないからで、多くの販売会社が以下のビジネスを複合的に展開しています。
- 新車販売
- 認定中古車
- 整備・車検
- 板金修理
- 部品
- 保険
- 他ブランド
そしてVWは既存ユーザーの母数が非常に大きく、したがって、新車販売が減っても、「既存VWユーザーの整備・車検・代替需要」によって一定の収益を維持できるという面があるわけですね。

ただ、現在フォルクスワーゲンが進める「電動化」がディーラーの負担になっているという話もよく聞かれ、それに対応する設備を導入したり、メカニックを訓練する費用も馬鹿にならず、例えば愛知県では、トヨタ系の愛知トヨタWESTが2026年3月をもってVW事業を終了して5店舗を閉鎖する動きが報じられ、愛媛県でも「VW松山」「VW今治」の2店舗が2026年3月31日で閉店しています。
一方で面白い例もあり、2026年5月にはラングローブが新たにVW大阪豊中を開設していて、つまり、VWが全国から一斉撤退しているというより、「不採算店舗を閉鎖する一方、商圏によっては新しい販売会社に入れ替わる」という「再編」が起きていると考えた方が正確です。
フォルクスワーゲンは再び「成長」の軌道に乗るか
この販売減少が続く中、新しい販売会社が名乗りをあげるという事実には驚かされますが、これは2024年が「31,815台 → 25,653台」へと19.4%(約6,200台)減少したのに対し、2025年には「25,653台 → 31,031台」と5,378台の増加を見せているからだと考えられます。
したがって「VW日本市場がそのまま崩壊している」とまでは言えず、ここから回復すると考えた販社がフォルクスワーゲンの取り扱いを開始しているのかもしれません。
なぜ2025年に回復したのか?
そして「なぜ2025年に販売が回復したのかについて考えてみると、大きな原動力は「商品力の拡充。
特に、以下のモデルのリニュアールが成功したとされ、2025年はGolfだけで1万台を回復したとも報じられていますね。
- Golf
- T-Cross
- T-Roc
- Tiguan
- Passat

VWの販売効率が悪化した5つの理由
逆に「ちょっと戻って」フォルクスワーゲンの販売が衰退した理由について考えてみると、以下の5つの要因が見えてきます。
- Golf/Poloという従来の大量販売車が弱くなった
- SUV化への対応が遅れた
- EV戦略が日本市場では十分に機能しなかった
- 「VWなのに価格が高い」という問題が出てきた
- 商品力で国産車に対抗することが難しくなってきた
① 最大の問題は「Golf/Poloの大量販売力」が落ちたこと
これはかなり重要で、VWの日本市場は長年、Golf + Poloが販売の大きな柱となっており、ところが、この2車種の販売力が大きく落ちているのが今の状況で(たしかにこれらを見かける機会が極端に減った)、特にPoloは、日本で輸入車を買う層にとって「200~300万円台で買える欧州車」という非常に重要なポジションを持っていたわけですね。
ところが現在では価格が上昇し、VWのエントリーモデルとしての魅力が以前ほど強くなく、一方でGolfもモデルチェンジの谷間などによって販売が落ち込んでおり、実際のところ2024年のVW販売低迷については「Golfの世代交代期、Poloの存在感低下」が大きな要因として指摘されています。という構造があります。

② SUV化では「他社に顧客が流れた」
今でこそSUVラインアップを強化しているフォルクスワーゲンではありますが、BMWやアウディ、メルセデス・ベンツが自社内で「セダンやハッチバックからSUVへ」と顧客を誘導できたのに対し、フォルクスワーゲンではラインアップ的にそれができず、結果的に多くの顧客が流出した、とも分析されています(競争の厳しい現代において、同一ブランド内での買い替えによる顧客の維持は非常に重要である)。
③ EV戦略が日本では完全に想定外になってしまった
これも非常に大きな要素だと考えられ、VWは世界的には早い段階からEVへ大きく舵を切っていて、その代表が、ID.3 / ID.4であったわけですが、ところが日本ではEV市場そのものが欧州ほど急速には拡大せず完全に「空振り」。
テスラやヒョンデ、BYD、メルセデス・ベンツ、BMWといった競合に対し「VWのEVが欲しい」という新規客を呼び込めず、しかしVWはEVに注力していたために既存モデルの改良が送れてしまい、これもまた「ポロとゴルフの販売を落としてしまった」遠因とも言えそうですね。

④ 「VWなのに高い」という問題
これも「かなり大きい」問題で、昔のVWには、「国産車よりちょっと高いけれど、輸入車としては手頃」という絶妙なポジションがあり、「輸入車=プレミアム」という考え方が通用していた時代には、これが「フォルクスワーゲンを選ぶ理由」としても機能していたわけですね。
しかしその後、「(あまりに台数が増えたからか)VWは高級車ではない」という認識が広まってしまい、しかしミニやシトロエン、プジョーのように強い個性や優れたデザインを持たなかったため、「選ぶ理由がなくなってしまった」のかもしれません。
つまるところ、「この値段を出すなら他ブランドのクルマ買うわ・・・」となってしまったのが問題であったのだと思われます。
⑤ 国産車に対抗できなくなった
そしてダメ押しが「ほかの輸入車はもちろん、国産車に対しても競争力を失ってしまった」こと。
上述の通りフォルクスワーゲンは「ガソリン車を捨てる」覚悟でいたために既存モデルのテコ入れ、ガソリンエンジン搭載のSUV拡充には積極的ではなく、これによって製品の「進化が止まって」しまい、しかしその間に国産車はグローバルモデルを中心に「世界で戦える」実力を身につけてゆき、ここでVWのクルマが国産車に「追いつき、追い越される」という現象が発生してしまったのだと捉えています。

「VWは日本市場でのビジネスモデルを作り直している」
上述の通り、ラインアップの見直しによって2025年には持ち直したVWではありますが、まだまだ先行きは不透明。
現在のラインアップは「老朽化したガソリン車と、とんでもなく高価なEV(ID.Buzzは車両価格ほぼ900万円である)」という構成となっており、ブランド内での顧客の循環が進む構成ではなく、いまだ「VW内での買い替えが期待できないまま」だから。
さらには直近で有望な新型車の導入が期待できず、日本に入ってきたとしても国産車を超えるコストパフォーマンスを実現することは非常に難しいものと思われ(円安が主な要因)、メルセデス・ベンツ、BMW、アウディのような「ブランド力」、ミニのようなデザイン性、ボルボのような「他にないポジション」を持たないのがフォルクスワーゲン。
よって今後の苦戦は間違いなく、復活への道のりは困難の連続であろうと考えています。

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