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スポーツカーの考え方が二極化している現実について考える。「速さ追求」「楽しさ追求」

2017/11/23

最近のハイパフォーマンスカーは「効率追求組」と「楽しさ追求組」に分かれる?

最近のハイパフォーマンスカー市場は「二分」されている、と感じることがあります。
これは勝手にぼくが考えているだけではあるものの、大きく分けると「スーパーカー」と「スポーツカー」。
「スーパーカー」は言わずとしれたフェラーリやランボルギーニ、マクラーレンを筆頭としたもので、これらはエキゾチックなスタイリング、強力なパワー、最先端の技術や素材・デバイスが与えられたグループ。
効率を重視するために「マニュアルトランスミッション」を持たない(マニュアル・トランスミッションは時代遅れだと考える)車たちですね。
※高価であることも一つの特徴

「マニュアル・トランスミッション」が一つの境界線

対する「スポーツカー」はロータスを筆頭に、「軽量、シンプル」な車。
主には重量1トン以下で、重量増加を嫌ってマニュアル・トランスミッションを採用する車ということになります。
ただ、こちらについて考え方を拡大すると、ポルシェ911Rやアストンマーティンのマニュアル・トランスミッション車も含まれるかもしれず、というのもこれらは「数字上の速さや、効率だけを追求しているわけではなく」、操る楽しさを重視した車であると考えられるため。

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アストンマーティンの車は「パワーの割に」0-100キロ加速が速くありませんが、それは「効率的」に前に進む(加速する)事よりも「ちょっと暴れたほうが楽しい」と考えているのか、トラクションコントロールが「テールスライドするように」設定されているためのようで(実際に運転した印象。実際にアストンマーティンがそう考えているかは不明)、フェラーリやマクラーレンのようにストイックに「速さ」を追求するタイプとは異なるようですね。

ポルシェは「効率」と「楽しさ」とを切り分けている

なおポルシェは「運転する楽しさ」と「サーキットでの速さ」について完全に切り分けた考え方を示した最初のメーカーだと考えられ、たとえば991では「GT3」系にマニュアル・トランスミッションを用意しなかったことでもその考え方がわかります(速く走るために、マニュアルではすでに優位性がないという考え方を示している)。

ただ、911Rの発売によって「楽しさ」を追求する人も相当数いて、ポルシェという「スポーツカーメーカー」にとってそれは無視できないものである層だということも判明し、そこでポルシェが取った戦略が「911カレラT」、そして「GT3にはマニュアルを用意するが、”RS”と名がつくモデルにはマニュアル・トランスミッションを用意しない」というもの。

ポルシェGT部門による最新のコメントだと、「マニュアル・トランスミッションはサーキットを速く走るには適しておらず、したがって”すべてが速さのため”となるRSにはマニュアル・トランスミッションがマッチしているとはいいがたい」としており、実際に911GT2RSは「PDKのみ」。
つまり「PDKは効率と速さに優れるが、マニュアル・トランスミッションは楽しさに優れる」ということだとも捉えることができますね。※マニュアル操作が苦手な人、身体的に難しい人もいるので、必ずしもMTが楽しいわけではない

最近あらたな「ニッチ」=隙間が登場している

実際にそれを裏付けるように、最近登場してきた少量生産スポーツカーは「マニュアル・トランスミッション」を持つ場合が多いようにも思います。

スクーデリア・キャメロン・グリッケンハウス(SCG)、ダラーラがそれに該当しますが、両方ともスポーツカーやレーシングカーにかけては筋金入り(ダラーラについては世界トップクラス)。
そういったメーカーが「(効率では一歩譲る)マニュアル・トランスミッション」を採用しているというのはひとつの「異変」なのかもしれません。

少し前までであれば、こういった少量生産メーカーであっても「速さ追求」のためにデュアルクラッチ・トランスミッションを採用することが多く、しかし最近だと「マニュアル回帰」。

これにはいくつか理由があると考えていて、まずは「フェラーリやランボルギーニ、マクラーレンの車が速くなりすぎた」こと。
以前だと車の「速さ」はエンジンパワーや重量といったところに大きく左右されたものの、最近だとアダプティブシャシー、エアロダイナミクスなどが占める割合が高くなり、そういった分野は小規模生産メーカーには手を出しにくいため。
資金や販売量の問題もありますし、そもそもサプライヤの協力を取り付けられるかという問題もあり、大手メーカーとは同じ路線で争っても勝てない、ということですね。

そしてもうひとつは「車両価格」。
上述のフェラーリやランボルギーニやマクラーレンについては「車両価格が高くなりすぎて」おり、それはやはり「最先端の技術や素材を使用している」ことや、そのための研究開発費が車両価格に加算されているため。
現在、ランボルギーニやフェラーリ、マクラーレンにおいても「エントリー」モデルで2500万円くらいとなっており、「ここまで高性能で高価なモデルではなく、もうちょっと安くて楽しく走れるモデルはないものか(扱えないような高性能の車を、必要以上に高い価格で買うことはできない)」と考える人が多く出てきている、とも考えられます。

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最後は「性能」ですが、これはもう完全に「性能を試す場」がごく限られるところにまでスーパーカーの性能が高くなってしまっている、ということですね。
となると「気軽に乗れない」「その性能を満喫できない」ということになり、「もうちょっと気軽に楽しめるスポーツカーがほしい」という人もいると思われます。

たとえばマクラーレンの場合、650Sだと(ぼくの腕では)「もう速すぎて」恐怖しかありませんが、540Cでは「安心して踏める」ためにより楽しく走れるわけですね。
よって、「スポーツカーは単にパワーがあって速ければいい」というものでもないんだなあ、と感じたこともあります。

同じ理由で、ランボルギーニ・ウラカンはぼくにとって「行き過ぎた」高性能車であることは間違いなく、それでもウラカンを選んだ理由の多くはパフォーマンスよりも「スタイル(デザイン)」。
同じように考えている人も多いはずで、つまりはスーパーカーにとってそのスタイリングも重要な(顧客にお金を支払わせるための)要素であるとも考えられますね。

なお、かのワルター・ロール氏も「(最新の)ポルシェ911GT2 RSは速くなりすぎてしまい、ミスをすることが許されない車になってしまった」と語っており、高性能化が必ずしも「楽しさとイコール」ではないのでしょうね。

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要はスーパーカーは「スーパー」になりすぎてしまい、その「下」に新たな市場が生まれた(そしてそれはかつてスーパーカーが位置していたのかもしれない)、「別の」要望が発生した、とも考えられます。

「ニッチ」は少量生産スポーツカーにとってのチャンスに

そういった「ニッチ」は言い換えると「チャンス」で、これが最近少量生産スポーツカーメーカーが多く出てきている理由、そして(ロータスのような)既存スポーツカーメーカーが生き残れる機会なのかもしれません。

もはや扱えないレベルにまで「行き過ぎた」スーパーカーではなく、扱える高性能、そして自在に操れるマニュアル・トランスミッションを持つ、ということがそれら少量生産スポーツカー/既存スポーツカーメーカーの「存在意義」とも考えられます。

かつて、少量生産スポーツカーというとケーニグセグやパガーニのように「スーパーカーを超えるレベル」ではあったものの、今や(メジャーメーカーの)スーパーカーを性能で超えるのは難しくなり、「であれば」と考え方をシフトさせた少量生産スポーツカー/既存スポーツカーメーカーも多いのかもしれません。

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なお、「扱える高性能」「楽しさ」を求める傾向が強いのは、メルセデス・ベンツやBMWのなど各社「ドリフトモード」を装備しはじめていること、ロータスやアストンマーティンの販売が伸びていることを見ても推し量ることができそうです。※ジンガーやその亜流もここに含めていいのかもしれない

ロータスは究極のパワーをもって最高速を競う車でも、ニュルブルクリンク最速を争う車でもありませんが、実際に走行した「楽しさ」は天下一品であり、アストンマーティンもまた加速やサーキットのタイムを主張する車ではないものの(これからはそういったモデルも出てくるはずですが)、運転したときの「ニヤリ」としてしまう楽しさにおいては比類のない車。

そう考えるとイギリス人は車の楽しみ方を「わかっている」のかもしれず、とにかくハイパフォーマンスカーにおいては「これまでにない」新たな曲面を迎え、そしてその方向性や人びとの嗜好は多様化している、とも言えそうですね。

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