| 他のLMDh規定マシンとは異なるコンセプトを採用し、それが吉と出るか凶と出るのかは本番を待つしかない |
カーナンバーは「50」「51」を選択
さて、フェラーリはつい先日、ル・マン24時間レースを走ることとなるハイパーカー「499P」を公開していますが、今回はその実車や、実際に走行する様子を捉えた動画が公開されています。
この499Pの実車はイモラ・サーキットで開催されたフェラーリのイベント「フィナーリ・モンディアリ」にてお披露目されており、実際にサーキットでは(来年の)レースデビューに先駆けての走行も行われたようですね。
-
フェラーリがル・マン24時間レースを戦うハイパーカー「499P」を公開!50年ぶりの耐久レースのトップカテゴリに復帰、勝利にかける情熱は計り知れない
| フェラーリはこの499P開発のためにF1、そしてGTレースにおけるノウハウを集結させている | そのルックスは意外とスマートだった さて、フェラーリが予告通り2023年シーズンのFIA世界耐久選手 ...
続きを見る
フェラーリは50年ぶりに耐久レースのトップカテゴリに復帰
なお、フェラーリはル・マン24時間に参戦するにあたり、ポルシェやBMW、ランボルギーニのようにLMDh規定を選択しておらず、つまりはダラーラ、マルチマチック、リジェ、オレカといった経験豊富な指定コンストラクターのシャシーを使用せず、自社でシャシーを設計しています。
このLMDh規定を利用するメリットとしては、上述の4社の豊富な経験値がすぐに手に入ること、そしてル・マン24時間含むWEC以外のレース(具体的にはIMSA)に参戦できること、そしてWEC用とIMSA用のマシンを作り分ける必要がなくコストが安く済むこと。
なお、WECは欧州が中心、IMSAは北米中心のレースであり、自動車メーカーとしては両方に参戦してそのプレゼンスを高いと考えるわけですが、これまではそれぞれが別々のレギュレーションにて運営されていたので、両方に参戦すると「両方のレギュレーションにそれぞれマッチしたレーシングカー」を作る必要があったわけですね。
ただ、2023年から「LMDh(ル・マン・デイトナ・ハイブリッド)」規定が導入され、これによって双方のレースに同じ車両で乗り入れることが可能となり、自動車メーカーとしては「比較的安価なコストで」欧州と北米市場両方にアピールできるということで、BMWやキャデラック、ポルシェ、ランボルギーニなどが復帰もしくは参戦を決定している、という状態です。
しかしフェラーリはこのLMDh規定を利用しておらず、上述の通り車体を自社で開発することとなったわけですが、フェラーリとしては50年ぶりの耐久レースへのトップカテゴリへと復帰を果たすことになり、いかにフェラーリといえど、「50年ぶり」に製作するプロトタイプレーシングカーの競争力を、耐久レースの常連であるダラーラ、マルチマチック、リジェ、オレカのレベルに持ってゆくことは簡単ではないかもしれません。
それでもフェラーリは自ら「自社設計」の道を選んだということになり、そこにはそれなりの勝算があるのだろう、とも考えています。
フェラーリ499Pは4WD
そこでこのフェラーリ499Pですが、パワーユニットはV6ガソリンエンジンとエレクトリックモーターというハイブリッド。
レギュレーションによって合計出力は500kWh(680馬力)、エレクトリックモーターの出力は200kWhに制限されているので499Pも規制ギリギリの680馬力を発生することになりますが、V6ガソリンエンジンは296GT3に積まれるものと多くを共有していますが、ポルシェやBMWがV8を選んだのとは異なる道を歩んでおり、その理由は「軽量コンパクトだから」。
ちなみにLMDh規定を採用すると、ハイブリッドシステムも指定のものを使用しなくてはなりませんが、フェラーリの場合は自由にハイブリッドシステムを設計でき、重量バランス等を考慮すると「V6がベスト」という選択肢となったのかもしれません。
なお、フェラーリは今後電動化時代を迎えるにあたり、バッテリーも自社で製造することを公表していますが(モーターはどうなのかわからないが、この勢いだと自社で製造しそうだとは思う)、モータースポーツで培った知見をダイレクトに市販車にフィードバックするという意味においても、LMDhではなく「自社」による開発や製造を選んだという可能性もありそうです。※2026年のF1と同じく、2023年のル・マンではそれまでの経験がリセットに近い状態に持ってゆかれる可能性があり、その中で既存コンストラクターと組む意味が薄く、であれば自社ですべてを新設計すべきと考えたのかも
-
フェラーリがEV用の工場用地を取得し「第3の組立ライン」を建設中との報道。生産能力を拡大することは間違いなく、投資家向けの説明会で発表
| フェラーリは新社長のもとでエレクトリック化を加速させる | さらにフェラーリをSUVのラインアップを3モデルに拡大する可能性も さて、フェラーリはブランド初となるEVの発売を2025年に前倒しして ...
続きを見る
そして499Pではガソリンエンジンは後輪を、エレクトリックモーターは前輪を駆動することになりますが、フェラーリは前輪のエネルギー回生とブレーキ・バイ・ワイヤを統合したこのシステムについて「耐久レースで成功するための一つのキー」だともコメントしており、減速にかかるエネルギーをいかに貯め込み放出するかということを重視しているのかもしれません(これはF1でも同じである)。
その他のスペックとしてはバッテリーシステムに900Vアーキテクチャを採用し、車体重量が1030kg(レギュレーションによる規制)ということもアナウンスされています。※パッケージングについてはまだまだ謎が多い
フェラーリはこの499Pについて、カーナンバー「50」「51」の二台を走らせるとコメントしていますが、ドライバーやチームの布陣については発表されておらず、こちらも追加情報を待ちたいところですね。
フェラーリ499Pに関する動画はこちら
あわせて読みたい、ル・マン24時間レース関連投稿
-
ポルシェがル・マンとIMSAを走るレーシングカー「963」を公開!成功を収めた「962」「959」オマージュ、そして現行モデルや未来のモデルとの関連性も
| ここ最近、各社ともレーシングカーと市販車との関連性を強く押し出している | 2023年からは多くのライバルとともに戦うことになり、その戦闘力には期待したい さて、ポルシェが2023年からIMSAウ ...
続きを見る
-
ランボルギーニがル・マン用レーシングカーのスペックとティーザー画像を公開!680馬力のV8ツインターボ搭載、ハイブリッドに車体重量1,030kg
| ただし、このランボルギーニ製レーシングカーの名はまだ公開されていない | ランボルギーニは2024年から「はじめて」ル・マン24時間レースに参戦の予定 さて、ランボルギーニはル・マン24時間レース ...
続きを見る
-
アキュラがIMSA用レーシングカー「ARX-06」公開!ほかチームのようにV8ではなくV6を搭載し許容回転数10,000rpm、出力は680馬力
| アキュラARX-06のデザインは市販車を強くイメージ | シャシー開発パートナーはオレカ(ORECA) さて、アキュラがル・マン24時間レースとIMSAを走るレーシングカー、「ARX-06」を発表 ...
続きを見る
参照:Automoto.it, Varryx