| 時代が一周まわり、「レトロな」日産のスポーツカーに注目が集まったのだと考える |
GT-R、フェアレディZとも「時代を超越した」「タイムレスな」存在になったと捉えていいだろう
さて、日産(USA)が2023年通年の販売台数を公開し、乗用車トータルでは288,257台となり、これは昨年比で+12.4%であったと発表。
ただし今回の発表で注目すべきはもっとも販売が伸びたのがGT-R(584.2%)、次いでフェアレディZ(573.4%)であったということで、これについて考えてみたいと思います。※EV除く
参考までに、主力車種のヴァーサは85.2%、セントラは41.6%、ローグ(エクストレイル)は45.6%増だったので、いかにGT-RとフェアレディZ(北米では単に”Z”)の伸びが大きいかがわかりますね。
なぜ2023年の販売においてGT-Rが伸びたのか
なお、GT-Rの2023年通年の販売台数は390台(’昨年は57台)、フェアレディZは1,771台(昨年は263台)なので、「そもそもの母数」が少なく、よって少し販売台数が伸びれば「前年比」の増加率も大きく跳ねることになるのですが、これら両者ともにここ数年、全く売れていないに等しい状況であっただけに”販売が伸びた”こと自体が異例であるとも考えられます。
そしてこの伸びについては、(北米で)2023年1月に大幅改良モデルを投入したことがその理由として挙げられ、空力性能向上のための外観のアップデート、ハードコアモデル ”GT-RNISMO” のさらなるハイパフォーマンス化、そして新グレード「T-スペック」の追加、さらにはヘリテージカラーのミレニアム・ジェイドとミッドナイト・パープルの追加が販売増に貢献したものと思われます。
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なお、R35 GT-Rそのものは2007年に発表されており、つまりは17年も作られているという長寿モデル。
登場したときこそは「ハイパーデジタル」なスポーツカーだと認識されており、当時「アナログ」だったポルシェ911ターボをサーキットにて打ち負かすほどの性能を見せつけ、時代の変化、そして王位の交代を印象づけています。
ただしこの17年の間にライバルはどんどん進化してしまい、R35 GT-Rがいかに細部をアップデートしようとも基本設計が古いことはいかんともしがたく、よって今では珍しい「油圧式パワーステアリング」「インテリアには物理ボタンだらけ」というアナログ装備を持つクルマとなっているのですが、今の時代には意外とこのアナログさが受けているのかもしれません。
実際のところ、ガソリン車(とくにスポーツカー)はすでに絶滅危惧種として認知されており、これからは「完全にデジタルなEVへ」移行することが明らかになっているため、多くの愛好家が「今購入できるアナログスポーツカーを」買い急いでいるという状況があって、実際にケーターハム、ドンカーブートといった「これまでは一部の人しか購入しなかったシンプルなスポーツカー」へと脚光があたっています(両者ともかつてない規模の受注が入り、増産体制を整えている)。
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さらには発表当時「あまりに重すぎる」とされたR35 GT-Rの車体重量も(今では)それほど重くはなく、たとえば最新のR35 GT-Rの車体重量「1,476kg」は新型BMW M2の1,754kgよりも軽量であり、GT-Rはライバルが進化してどんどん重くなってゆく中、限られた進化しかできなかったがゆえに重量が増えず、相対的に競争力が増したのだとも考えられます。
そういった意味では、「時代が一周回ってGT-Rに有利な状況になった」とも考えられ、2023年の販売実績は「いろいろな要素が絡み合った結果」なのかもしれませんね。
フェアレディZはやはり「モデルチェンジ」の効果が大きい
そしてフェアレディZについてもGT-R同様に「改良」の効果が大きく、しかしこちらは(形式が同じなので正確にはマイナーチェンジにとどまるものの)フルモデルチェンジ級の変更が奏功したと考えて良さそうです。
目玉となるのはやはりターボエンジンの採用による大幅パワーアップではありますが、その「レトロ」なルックスが販売の増加に繋がったことも間違いないものと思われ、こちらもGT-R同様に「今の時代にマッチした」ことが成功の要因だと考えられます。
The exhilarating history of #NissanZ pairs best with a car cruise. Thanks for having us, @Petersen_Museum! pic.twitter.com/hL1NaYSzVN
— Nissan (@NissanUSA) April 25, 2022
なお、新型フェアレディZについては「モデルチェンジにあまりお金をかけることができなかった」という日産の内部事情もあり、そこで「イメージ優先」にてレトロ路線を進むことになったと言われているのですが、これが逆に「日産がたっぷりお金を注ぎ込み、機能やデザイン面でも最新のクルマとして」「未来っぽいデザインをもって」発売していたならば、2023年のような成功が望めなかったのかもしれません。
いずれにせよ、両者とも「後世に残る」「タイムレスな」クルマであることが評価(もしくは再評価)されたのだとも考えていますが、いったい何が起きるのか先が読めず、そして必ずしも最新のものがいいわけではない、というのが現代のスポーツカー事情なのだと思われます。※ダッジ・チャレンジャーも同様の理由で高い人気を誇るのだと考えられる
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参照:NISSAN USA, NISSAN(X)