| 自動車史上、これほど明確な目的のもと開発されたクルマも珍しい |
わずか5台のみ製造された「フォードGTロードスター」。
今回、RMサザビーズが8月に開催するオークションにて出品すると発表していますが、これは5台のみが製造されたうちの最初の一台で、シャシーナンバーはGT/108。
製造されたのは1965年3月、エンジンは「コブラスペック」のフォード製289キュービック・インチ・エンジン、そしてトランスミッションはコロッティT37。
なお、これはプロトタイプとして製造されたものですが、フォードGTのプロトタイプは合計で12台が製造され、そのうち7台がクーペ、5台がロードスターだという記録が残ります。
数々の名ドライバーがドライブしてきた個体
製造された1965年当時、クーペとともにシルバーストン・サーキットにてテストされ、その後はカリフォルニアにあるシェルビーのショップへと移送されることに。
更にその後いくつかのイベントにて展示され、ケン・マイルズのドライブにてラグナセカ・サーキットでデモ走行が行われ、翌月にはヘンリー・フォード二世(フォードの社長)を乗せてキャロル・シェルビーがサーキットを走行したとされていますが、これはフォード社長にとって唯一のサーキット走行体験であった、とも言われます。
フォードGTはたった一つの目的のために開発された
なお、フォードGTは「打倒フェラーリ」を目的に、フォードが持てるお金そして人的・技術的資産を突っ込んで開発したレーシングカー。
その背景としては、当時「大衆車メーカー」であったフォードが、拡販のためにはモータースポーツでの成功が必要だと考え、「フェラーリの買収」を計画。
実際にこの計画は順調に進み、フェラーリ合意のもと「いざ契約」となったときにエンツォ・フェラーリがこれを撤回し、これに怒ったのがヘンリー・フォード二世。
そこで「どれだけカネがかかってもいいからフェラーリを倒せるクルマを作れ」という号令のもと、最高のスタッフが集められて開発されることとなりますが、このあたりの経緯は2020年1月公開予定の映画「フォードVSフェラーリ」にて詳しく描かれることになりそう。
映画の予告編を見ると、フォードがフェラーリに対抗するというのは「絵空事」のように描かれており、当時は本当にそんな感覚だったのでしょうね。
なお、マット・デイモンが演じるのはキャロル・シェルビー、そしてクリスチャン・ベイル扮するのは開発ドライバーのケン・マイルズ。
そしてこれがおそらく、キャロル・シェルビーがヘンリー・フォード二世を乗せてフォードGTをドライブするところ。
落札価格は最高で10億円との予想
ちなみにこのプロトタイプに話を戻すと、さらにジム・クラークがドライブしたこともあるといい、プロトタイプの中では「もっとも豪華なバックボーンを持つ一台」だと言えそう。
その後は数々のオーナーの手を経て1983年にレストアを受け、2003年にはメカ部分のリフレッシュ作業を受けています。
同年にはペブルビーチ・コンクール・デレガンスに展示され、20120年にはモンタレー、2013年にはアメリアアイランドにも出展。
これまでにも何度か同様の「フォードGTプロトタイプ」がオークションに登場しているものの、今回の個体はもっとも価値が高いと思われ、最高では10億円の値がつくのでは、と言われます。
なお、これまでには別のシャシーナンバーの「フォードGTロードスター」がオークションにかけられていますが、なぜか7台作られた「クーペ」のほうの試作車が競売に登場することは非常に稀であり、コレクターが手放さないのかもしれませんね。