| BYDは現在、ガソリン車の販売を終了させてEVのみの販売に特化している |
中国の数ある自動車メーカーの中でも、BYDはひときわ異彩を放っている
さて、中国BYDは現在「中国のEVメーカーの中で唯一利益が出ている」とされ、その販売台数の伸びもとどまるところを知らないと報じられています。
そして今回、2023年通年だとBYDがテスラの販売台数を抜くのではという報道がなされていますが、BYDは手頃な価格を武器に今年10月までに中国で21万7518台以上のNEV(ニューエナジー・ビークル)とEVを出荷しています。
さらにBYDは、これまでの普及価格帯に加えてプレミアムセグメントに乗り出すといい、さらなる利益の増加そしてテスラの対抗を目指すと報じられており、もしかすると予想よりもずっと早くEV市場を制覇するかもしれません。
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BYDは新ブランドを2023年に立ち上げ
そして今回報じられているのがBYDによる2つの新ブランドで、ひとつは富裕層かつプロフェッショナルをターゲットとして2023年第1四半期に第一号車が発売される予定の「Yangwang」。
2つ目の新ブランドはまだ名もなく、しかし「高度に専門的でパーソナライズされた識別に基づくものになる」、そして顧客の「多様な需要」に対応することになるとコメントしているので、ハード / ソフトともにオーダーメイドが可能となるのかもしれませんね。
なお、ちょっと驚かされるのは、米ヘッジファンドスノー・ブル・キャピタルの運用責任者であるブリジット・マッカーシー氏が「BYDが近く高級SUVとスポーツカーを発売するだろう」とコメントしていること。
同氏は「BYDが参入していない2つのセグメントは、高級SUVとスポーツカー市場だが、BYDは2023年に両方へ参入すると予想している。これらは最も収益性の高い2つの車両セグメントであるため、2023年のボトムラインの成長は投資家を興奮させるだろう」と語っています。
BYDは他の中国自動車メーカーとはちょっと違う
なお、このBYD(比亜迪自動車販売株式会社)はほかの中国の自動車メーカーとはいくつか異なる点があり、もっとも大きな相違は「外資系自動車メーカーと組んでいないこと」。
第一汽車や北京汽車、長城汽車などほかの大手中国自動車メーカーはいずれもトヨタやホンダ、メルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲンなど海外の自動車メーカーとの合弁にて会社を設立していますが、このBYDは「独力で」自動車の開発や生産を行っており、これは非常に珍しいところだと思います。
さらにBYDは自社でバッテリーを製造していることも特徴として挙げられ、そのためにバッテリーセルの確保が(外部からの供給に頼る他の自動車メーカーに比較して」容易であり、よって生産にかかわるコストが低く、さらに(バッテリー不足の)制限も受けないとされ、様々な点においてアドバンテージを持っていると言われています。
さらにBYDは、今年初めにガソリン / ディーゼルエンジンを搭載したクルマの販売を終了し、現在はハイブリッド車と純電気自動車のみを販売していますが、こういった思い切った方向転換もなかなかにできるものではなく、これもまたBYDの強みと言えるかもしれません。
ちなみにですが、BYDにせよ、メルセデス・ベンツの筆頭株主に躍り出た吉利汽車にせよ、多くの中国の自動車メーカーは一代によって築き上げられ、よって創業者の権力が強く、そして経営者の判断によって動かせる範囲が大きいのかもしれません(これが、100年くらい続く欧米の自動車メーカーの場合だと、株主やら役員会やらの絡みによって大胆な決断をしにくいのだと思われる)。
現在BYDでは、ハイブリッド車の販売台数が電気自動車の販売台数をわずかに上回っているものの、来年の第1四半期までにはピュアEVの販売台数でテスラを追い抜く可能性があるとも指摘されており、上海に拠点を置くアドバイザリー会社、オートモビリティの創設者兼最高経営責任者のビル・ルッソ氏によれば、「BYDは今や電動化競争における市場リーダーとして確固たる地位を築いており、それをマルチブランド戦略に生かすと思われる。そうすれば、彼らはこの業界におけるパイオニアになれるだろう」ともコメントしていて、テスラ最大の脅威はシリコンバレーではなく中国から現れることになるのかも。
そう考えると、BYDの決断力や推進力たるや恐るべしというところですが、そのBYDに早い段階から多額の投資を行ってきたウォーレン・バフェット氏もまた「さすがは投資の神様」といったところですね。
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参照:Bloomberg