| 991.2用の3リッターターボエンジンからターボを取り外し、大部分を新しく設計しなおし |
ポルシェは先日「718ケイマンGT4」「718ボクスター・スパイダー」を発表しており、これに搭載されるエンジンは4リッター自然吸気フラットシックス、出力は420馬力。
このエンジンについてはずっと「911GT3に搭載される4リッターNA/500馬力」エンジンのデチューン版だと考えられていたものの、今回ポルシェGT部門のボス、アンドレアス・プロイニンガー氏がカーメディア「カースロットル」に語ったところによると、このエンジンは「911GT3のエンジンとは全くの別物」。
なお、ポルシェ911のエンジンは大きく分けると「ターボ」「自然吸気」とがあり、ターボエンジンは911カレラ系、タルガ、GTS、ターボ等に積まれるもの。
そして自然吸気はGT3系に搭載されていますが、つまりポルシェは「レース直系のモデルには自然吸気エンジンを搭載」しているわけですね。
ポルシェにとって「自然吸気エンジン」は特別な意味を持つ
そして718ケイマン/ボクスターだと「ケイマンGT4」「ボクスター・スパイダー」のみに自然吸気エンジンが搭載され、他のモデルはすべてターボエンジン。
そのため、718ケイマンGT4とボクスター・スパイダーに搭載される自然吸気エンジンが「911GT3と同じ」だと考えるのは妥当でもありますが、上述のように、ポルシェによれば「それは違う」。
どう違うのかということについて、718ケイマンGT4/ボクスター・スパイダーに搭載されるエンジンのベースは「911カレラ系に搭載される、3リッターターボ」。※新型911カレラSはこの3リッターツインターボから450馬力を発生
かなりややこしいのですが、ターボエンジンを自然吸気に戻し、クランクケース、シリンダーヘッド、ピストン、クランクシャフト、コンロッドを新設計して排気量を3リッターから4リッターへアップさせたものだそう。
よってポルシェはこのエンジンを「ほぼ新設計」とも呼んでおり、ベースとなった「9A2」の発展版ということで「9A2EVO」という呼称を与えているとのこと。
もちろんそこには多大な苦労があり、しかしそこまでしてポルシェがケイマンGT4/ボクスター・スパイダーに「新型エンジン」を与えたかったのは、「ピュアスポーツには自然吸気エンジンしかない」と考えているからだ、とも語っています。
なお、911GT3のエンジンを使用せず、これだけの手間をかけて911GT3と同じ排気量を持つエンジンを作ったということにはいくつか理由があると思われますが、ひとつは「911GT3が特別で、そのエンジンは門外不出」。
ポルシェはモデル間に厳しいヒエラルキーを設けているので、これは多少なりとも影響しているだろう、と考えています。
そしてもうひとつは「そこまでして新型エンジンを作ったとしても、911GT3のエンジンよりコストが安い」。
逆に言えばそれだけ911GT3のエンジンはそれだけコストが高いのかもしれません(911GT3のエンジンはチタン製コンロッドを採用しており、ほぼ手作業で組み立てられ、生産数も少ないと言われる)。
この新型エンジン「9A2EVO」はおそらく「量産に向いている」とも考えられ、そこで推測されるのが「このエンジンがほかのモデルにも採用される可能性」。
実際に、アンドレアス・プロイニンガー氏は、カースロットルから「GTではないほかモデルに搭載される可能性があるか」と尋ねられ「まあ見てみよう」と答えており、この答え方からすると「あるだろうな」という感じ。
すぐに思いつくのは「718ケイマン/ボクスターの6気筒モデル」で、これは最近何度かプロトタイプが目撃されていますね。
そしてこの新型エンジンの911シリーズへの採用については「無い」と考えていて、これは「400馬力だと911には不足している」と考えられるため。
アンドレアス・プロイニンガー氏は「ピュアスポーツには自然吸気」と語っていますが、991.2世代の911GTSに搭載されるエンジンは450馬力。
今回新開発したエンジンを450馬力以上にチューンするのは難しいと思われ、なにより排ガス規制をクリアできないと思われるので、むしろ718ケイマンGT4/ボクスター・スパイダーに積まれるこの9A2EVOを370馬力くらいにデチューンし、ほかの718モデルに搭載するのでは、と考えています。