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ポルシェ911誕生の真実。「356」から失敗作の「754」、そして「901」を経て911という伝説が生まれるまで

ポルシェ911誕生の真実。「356」から失敗作の「754」、そして「901」を経て911という伝説が生まれるまで

| 「356」と「901」との間には「754」が存在した |

ポルシェを象徴する伝説の一台「911」。

その誕生の裏には失敗作とされたプロトタイプや、フランスのメーカーから受けた意外な抗議など、ドラマチックな進化の歴史が隠されています。

ここでは「356から911」に至るまでの過程を見てみましょう。

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【この記事の3点まとめ】

  • 356の限界と「754」の誕生: 人気車種356の後継として開発された4人乗り「754」はフェリー・ポルシェのこだわりにより一度はボツとなった 
  • 「901」から「911」への改名: パリモーターショーでプジョーから「真ん中の0は我々の商標だ」と抗議を受け、急遽改名を余儀なくされた
  • 「進化、ではなく革命」: 伝統のリアエンジンを守りつつ、空冷フラット6エンジンと5速MTという、当時最先端のスペックで世界を驚かせた 

356の限界と、フェリー・ポルシェの「理想のリスト」

1950年代後半、ポルシェ356はその能力の限界に達しており、”フォルクスワーゲンからの派生として生まれた356”は、エンジン、シャシー、ボディのすべてにおいて、これ以上の発展が望めない状態にあったのだそう。※ポルシェ356の登場は1948年。登場からさほど長い時間が経過していた訳ではないが、当時の技術進歩の速度がそれだけ早かったのだと思われる

Porsche-356

Image:Porsche

そこでフェリー・ポルシェ(ポルシェ創業者、フェルディナント・ポルシェ博士の息子)は後継車のスペックについて方眼紙に以下のような「ウィッシュリスト」を書き留めることから「356後継モデル」の計画がスタートした、と説明されています。

  • 「2人の大人のためのシートと、2つの予備席(ジャンプシート)」
  • 「ポルシェらしいラインを維持すること」
  • 「革命ではなく、進化であること」

こうして、伝説への第一歩が踏み出されることとなったわけですね。

幻の4人乗り「タイプ754」とデザインの苦悩

当時、ポルシェにはまだデザイン部門が存在せず、356後継モデルのデザイン過程においては多くの外部デザイナーから提案が寄せられたそうですが、どれも「ポルシェらしくない」とフェリー・ポルシェに却下されたのだそう。※デザイン採択の決定権は経営陣にあったとされている

そんな中、1959年にフェリーの息子であるフェルナンド・アレクサンダー(F.A.ポルシェ)が制作した「タイプ754」が注目を集め、しかしこれは本格的な4人乗り仕様だったため、リアのラインがフェリーの望む「ファストバックスタイル」ではなく・・・。

Porsche-911 (2)

Image:Porsche

しかしフェリーはこのリアセクションを拒否しつつもデザイン全体を否定せず、ホイールベースを2.40mから2.20mへと短縮するよう命じ、ここからぼくらが知る911のシルエットが形作られてゆくこととなっています。

スペック詳細:革新の「901」プロトタイプ

かくして1963年のフランクフルトモーターショー(IAA)で初公開されたプロトタイプ「901」は、当時としては驚異的なスペックを誇っており、会場では大きな話題を集めることに成功するわけですね。

Porsche-911 (4)

Image:Porsche

項目スペック(1963年当時)
エンジン1,991cc 空冷水平対向6気筒
最高出力130 hp / 6,200 rpm
圧縮比9 : 1
潤滑方式ドライサンプ方式(過酷な加速にも対応)
変速機新開発5速マニュアルトランスミッション
暖房システム熱交換器(ヒートエクスチェンジャー)を利用した独自の車内ヒーター

プジョーからの抗議と「911」への pragmatic な改名

1964年9月14日、ついに量産が開始された「901」。

しかし、パリモーターショーへの出展直後、フランスのプジョーから待ったがかかります。

その理由としては「真ん中に0を挟んだ3桁の数字は、我が社の登録商標である」という主張をベースとするもので、すでに広告資料やマニュアルが印刷済みだったポルシェは「最小限の修正で済ませるため」、真ん中の「0」を「1」に置き換えるという極めて現実的な解決策を採ることに。

Porsche-911 (3)

Image:Porsche

そして1964年10月22日、フェリー・ポルシェは正式に名称変更を命令し、この日を境として(後の)世界で最も有名なスポーツカーの名前は「911」へ。

この「プジョーとの確執」は比較的有名なエピソードではあるものの、当時のプジョーとポルシェとの力関係をよくあらわすものであり、そしてプジョーはまさか「ポルシェがここまで成長しようとは」夢にも思ってなかったのかもしれません(デビッド・ボウイが活動を開始した頃、デビッド・ボウイの本名と同じ登録名にて活動していたミュージシャンがおり、よってデビッド・ボウイは芸名として「デビッド・ボウイ」を名乗るようになったものの、デビッド・ボウイのほうが遥かに有名になってしまったという話によく似ている)。

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Image:Porsche

結論:受け継がれる「進化」のDNA

ポルシェ911の歴史は、親から子へと引き継がれた情熱、そして予期せぬトラブルを乗り越える柔軟性によって形作られていて、名前こそ「901」から「911」へ変わったものの、リアエンジン、水平対向、そしてあの独特のシルエットという「本質」は、誕生から60年以上が経過した現在も”ポルシェの魂”として生き続けているというのが今回のストーリーです。

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Image:Porsche

参考:現存する「ナンバー57」

名称変更の命令が下された1964年10月22日、生産ラインには「901」として組み立てられていた車両があり、その日最後に完成した赤いクーペ(シャシーナンバー 300 057)は、急遽「911」として世に出ることに。

つまるところ、このシャシーナンバー「057」は世界最古の「911」というわけですが、この個体は”偶然”発見された後にレストアがなされ、現在はポルシェ博物館の至宝として大切に保管されています。

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参照:Porsche

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