
Image:Rolls-Royce
| ロールス・ロイスは顧客の要望を満たすため、あらゆる手段を試している |
ロールス・ロイスが発表した、世界で唯一のビスポーク・モデル「ファントム・アラベスク(Phantom Arabesque)」。
中東の建築美と最先端技術を融合させた、まさに「走る芸術品」と呼ぶにふさわしい一台の登場です。
記事の要約
- 世界初の技術: 5年の開発期間を経て特許を取得した「レーザー彫刻」をボンネットに初採用
- 伝統の再解釈: 中東の伝統的な格子細工「マシュラビヤ」を現代のクラフトマンシップで表現
- 究極のワンオフ: ロールス・ロイス・ドバイ Private Officeが手掛けた、世界に一台のオーダーメイド
- 至高のインテリア: ギャラリー(ダッシュボード)には複雑な寄木細工、ドアにはスターライト・イルミネーション
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伝統建築「マシュラビヤ」が宿る、静寂と光の芸術
ロールス・ロイスが新たに発表した「ファントム・アラベスク」は移動手段としての自動車を超え、中東の文化遺産へのオマージュを捧げた「動く宮殿」。
デザインの核となるのは、中東の邸宅や宮殿で見られる伝統的な格子スクリーン「マシュラビヤ(mashrabiya)」で、プライバシーを守りながら光と風を通すこの建築美がロールス・ロイスの象徴であるファントムのエクステンデッド・ボディへと”かつてない手法”によって刻み込まれています(これまで、ボディサイドのコーチラインは手書きによる”ペイント”だった)。
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ロールス・ロイス・ファントム「アラベスク」:革新の「レーザー彫刻」と匠の技
このモデルの最大の特徴は、塗装面に直接施されたレーザー彫刻ですが、これは単に模様を刻んだだけではなく、この技術はイタリアの伝統技法「スグラフィート(ひっかき絵)」にインスパイアされたもの。
世界初「レーザー彫刻ボンネット」の秘密
- まず、ベースに濃い色(ダイヤモンド・ブラック)を塗装
- その上に複数のクリア層を重ね、さらに薄いシルバーを塗装
- レーザーで表面をミクロン単位で削り取り、下の濃い色を露出させることで、奥行きのある3Dパターンを形成
- 最後は職人の手作業でサンディング(研磨)を施し、指先で触れたときに「彫刻」を感じるほど滑らかな質感を実現
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主要スペックと特徴
| 項目 | 詳細内容 |
| ベース車両 | ファントム・エクステンデッド(Phantom Extended) |
| エクステリアカラー | ダイヤモンド・ブラック & シルバー(2トーン仕上げ) |
| 新技術 | 特許取得のレーザー彫刻(ボンネット) |
| 彫刻深度 | 145〜190ミクロン(髪の毛数本分に相当する精度) |
| 内装素材 | セルビー・グレー & ブラックレザー、ブラックウッド寄木細工 |
| ホイール | 22インチ パーツポリッシュ・アロイホイール |
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「プライベート オフィス ドバイ(Private Office Dubai)」の役割
このプロジェクトを主導したのは世界に5箇所(ドバイ、上海、ソウル、ロサンゼルス、グッドウッド)しかない、完全招待制の「プライベートオフィス」。
中東のクライアントは、世界で最も洗練されたビスポーク(特注)を求めることで知られていますが、このプライベートオフィス ドバイは、現地の文化的な文脈を深く理解し、それを最先端のエンジニアリングと結びつけることによって、単なるパーソナライズの域を超えた「歴史的価値」を持つ車両を生み出すことに成功しています。
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インテリアに見る「静かなる主張」
車内もまたマシュラビヤのテーマが完璧に貫かれており、今回公開されている画像は残念ながら「限定的」。
- ギャラリー: ダッシュボードの全面を覆うギャラリーには、ブラックウッドとボリバルウッドによる精緻な寄木細工が施される
- 刺繍と照明: ヘッドレストには手刺繍のモチーフ、ドアの内張りには星空のような「スターライト」が、幾何学的な模様と共に輝くことに
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結論:技術が文化を彫り込む、ラグジュアリーの新たな地平
ロールス・ロイス「ファントム・アラベスク」は、5年という歳月をかけて「塗装に文化を彫り込む」という不可能を可能にした芸術作品。
これは富の象徴としての車から地域のアイデンティティを体現する「文化財」への進化だと言ってよく、量産車では決して真似できない、ミクロン単位のこだわりと5年間の執念が反映されています。
そしてその結果生まれたこの一台は、次世代のビスポーク・デザインに新たなスタンダードを確立したことは間違いなく、今後この「レーザー」はひとつの手法として他のモデルにも用いられることとなるのかもしれません。
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参考までにですが、この「レーザー」はフェラーリも取り入れたことがあり、ローマ・スパイダーのフロントフェンダーに「レーザーでエンブレムを刻んだ」ことも。
こちらはレーザーの強弱によって「立体感」をも表現しており、クルマに用いられるカスタム関連技術が多様化していることがわかります。
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関連知識:「スグラフィート(Sgraffito)」とは?
イタリア語で「ひっかく」を意味するこの技法は、ルネサンス期の陶芸や壁画で多用されたもので、層になった色の違いを利用して絵を描くこの古典技法を現代のレーザー技術で自動車の塗装に転用した点に「ロールス・ロイスの伝統と革新」の姿勢が凝縮されているかのように思います。
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