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なぜプリウスの販売は1年で4割も下がったのか?そしてトヨタは本当にRAV4発売によってC-HR等自社SUVを食ってしまったのか?

2020/03/05

| プリウスは単に時代に合わなくなったから? |

さて、このところの国内自動車販売において、いくつか大きな変化が見られますが、ざっとぼくが気がつくところでは「プリウスの販売激減」。
加えて世間でよく言われるのが「RAV4の発売によってC-HRの販売が食われた」。
ただしこれら両方とも(ぼく自身)実際に数値で把握しているわけではなく、ここで一度ぼくの考えを整理してみたいと思います。

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なぜプリウスの販売は下がったのか

まずはプリウスの販売減少についてですが、これは単に「ハイブリッドカー、エコカーが飽きられてきた」可能性が大。
下のグラフはプリウス、ノート、(参考のため)カローラ、アクアの販売につき、ここ一年の動向を並べたもので、基本的にプリウス、ノート、アクアは同じラインをたどっており、トレンドとしては「ズルズル下がっている」ということがわかります。

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2020年2月の販売についてはプリウスが前年比63.3%、アクアが74.7%、ノートが76.7%と大きく下がっていて、コロナウイルスの影響を考慮したとしても下げ幅が大きいと言えます。

一方、こちらはRAV4、ライズ、C-HRといったSUVラインナップ。※参考のためにカローラも入れている
やはり下がってきていることがわかりますが、プリウスやノート、アクアに比較するとその下がり具合は緩やかです。

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そこで、ハイブリッドカーとSUVとを一緒にしてみるとこう。
見づらくなっていますが、赤がノート、青がプリウス、水色がC-HR、黄色がRAV4。※ノートは大幅値引きでも出たのか、2020年2月に大きく跳ねている

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一番左の「1年前の2月における、青と水色との差」に比較して、一番右の「青と水色との差」が小さく、RAV4が発売された2019年5月における「青と黄色との差」と、2020年2月(右端)における「青と黄色の差」がぐっと縮まっていることがわかります。

すでにエコカーは格好良くない

つまりエコカーが売れなくなって、そのぶんSUVが売れてきているということになりますが、これについて、ぼくは「日本における、考え方のシフト」があるんじゃないかと考えています。

何年か前までは、やたらとエコエコ言ったり、健康にいい野菜がもてはやされたりしましたが、今ではエコよりもまず自分が楽しむこと、食についても健康より食べたいものを優先するという傾向が強くなっていると思うわけですね。

要は「我慢する時代」から「欲望を開放する時代」に向かっていると認識していて、たとえばファッションビルに入居しているレストランの案内を見ても「肉ばかり」。※料理の写真付き案内だと、肉や揚げ物など、茶色いものが多い
ぼくは基本的に野菜と魚を食べないので、ちょっと前の「野菜と魚がもてはやされる風潮」を苦々しく感じており、しかし最近の「肉、肉、肉」という傾向を見ると「なんだ、みんなやっぱり肉を食べたかったんじゃないか」と思ったり。

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それはともかくとして、なんか世間に流されたり、健康にいいからという理由で野菜や魚を食べる時代は終わり、自分が本当に食べたかった肉や揚げ物をガツガツ食べる時代になったということで、これはそのままクルマにもあてはまりそう。

世間の風潮に乗っかったり、エコのためになにか我慢しないといけないという考え方よりも、自分が本当に欲しいクルマに乗るという考え方にシフトしてきたのだと考えていますが、加えて、日本は昔からお金を稼ぐことや、お金を使うことに対して嫌悪を感じる人、質素をヨシとする傾向も。
しかし最近では「お金を稼ぎ、それを自由に使うことは悪いことではない」という意識が徐々に浸透してきたことも関係しているのかもしれません。

まとめてみると、「すでにエコカーはトレンドではない」「自分の欲望を犠牲にしてまでエコカーに乗る時代ではない」ということですが、仮にプリウスが「エコなハイブリッドカー」ではなく「普通のガソリン車」だったら誰も買わず、つまりプリウスは「エコだから」買われていたわけで、そのエコというコアバリューに人々が価値を見いださなくなったら、プリウスは途端に見向きもされなくなったということだと考えています(野菜が体に良いいわけではないとなれば、食べる人はいなくなるんじゃないかとも思う)。

トヨタのSUVは自社内で食い合っているのか?

そしてもうひとつ考えねばならないのが、「トヨタは自社内で食い合っているのか」。
これについてはNOだと考えていて、たとえば上で示したRAV4、カローラ、ライズをまとめたグラフを見てみると、C-HRの販売が下がったのはRAV4が発売される前。
RAV4発売を知って「C-HRを買い控える」という傾向もあるかと思いますが、多くの人は「先のことを考えたり、待つことができない」という傾向があります。

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たとえば、社会実験として、「今もらえる1万円と、1年後にもらえる2万円を選べ」と言われると、ほとんどの人が目の前の1万円を選ぶと言われ、そういった状況において、発売前のクルマのために、今手に入るC-HRを買い控えるというのはちょっと考えにくいワケですね。

しかも、このグラフを見るに、C-HRの販売が落ちている時期には他の車の販売も落ちているので、この動きを見る限りでは「RAV4がC-HRの販売に影響を及ぼしたとは言えない」と見ることもできます。

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加えて、ライズが発売された後もRAV4の販売が侵食されているという様子もなく、トヨタはRAV4やライズの発売によって、むしろ全体の販売を伸ばしたのかもしれません。

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つまり、今の日本では「SUVはラインアップを増やせば増やすだけ売れる可能性がある」とも言えますが、これはちょっと前のアメリカとよく似た状態かも。
ただしアメリカにおけるSUV人気の理由が「広い車内、高いアイポイント」であるのに対し、日本だとSUVは主に「アクティブな外観、そして実際にアウトドアアクティビティを行うため」という理由から選ばれているようにも思います。

もちろん日本でも「広い車内、高いアイポイント」といった理由でSUVを選ぶ人は少なくないと思いますが、むしろその理由は「ミニバン購入」のほうに繋がるのかもしれません。

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