| ボクはピニンファリーナよりもフェラーリ内製のデザインを支持している |
さて、フェラーリが公式にて、チーフデザイナーであるフラビオ・マンゾーニ氏を起用した「SF90スパイダーのデザインについて語る」動画を公開。
これまでにもフラビオ・マンゾーニ氏はチョコチョコと登場したりしていたものの、ここまで全面に押し出し、かつデザインについての解説を行う動画は非常に(フェラーリとしては)珍しいと思います。
フラビオ・マンゾーニ氏は近年のフェラーリのデザインを一手に引き受ける
フェラーリのデザインというと「ピニンファリーナ」が有名で、しかしフェラーリは、V8ミドシップモデルだと458イタリアを最後に自社デザインへと切り替え、その後はずっと”インハウス”。※自動車のオートメーション生産化によってカロッツェリアが不要になったように、デザイン技術の普遍化によってデザインハウスも不要となりつつある
そしてフェラーリのデザイン部門を率いるのがフラビオ・マンゾーニ氏ということになりますが、同氏はこれまでフェラーリFF、F12ベルリネッタ、458スペチアーレ、カリフォルニアT、ラ・フェラーリ、488GTB/スパイダー、812スーパーファスト、ポルトフィーノ、モンツァSP1/SP2、SF90ストラダーレ、SF90スパイダー、ポルトフィーノMを手掛けています。
なお、フェラーリに入る前はフォルクスワーゲングループにてシロッコ、そしてゴルフ、UP!のデザインを担当したようですね(フォルクスワーゲングループはデザイナーの流出が本当に多いな・・・)。
こちらがフラビオ・マンゾーニ氏。
鋭い眼光、そして細身のラペルにワイドスプレッドカラーのシャツ、これまた細身のネクタイという着こなしがナイスです。
フラビオ・マンゾーニのデザインには特徴がある
そしてぼくが考えるに、フラビオ・マンゾーニ氏のデザインには2つの特徴があり、ひとつは「曲面を多用すること」、そしてもう一つは複雑なディティールを組み合わせること。
近年のフェラーリはかなり「シャープ」なイメージもあるものの、モンツァSP1/SP2、ローマ、そしてSF90ストラダーレ/スパイダーもよく見るとけっこう曲面が多用されていることがわかります。
「フェラーリの宇宙船」なるスケッチも存在
これはもちろん60年代のフェラーリへのオマージュだとも思われ、しかし同氏は過去に「フェラーリの宇宙船」をデザインしたことがあり、これを見るとほぼ曲面のみで構成されていて、(これはまだフェラーリのデザインが過去への回帰となる以前の作品なので)同氏がこういった”優雅でなめらかな”ラインを好むということを示しているんじゃないかと思うのですね。※よく見ると、後にSF90ストラダーレ/スパイダーのノーズに採用されているパーツと同様の意匠を確認できる
そして「複雑なディティール」ということについてですが、同氏は一つの車体の中に、反復する複数のライン、デザインエレメントを盛り込む傾向がある模様。
傾向としては、全体的なラインはシンプルに、そしてディティールは複雑にといった印象を持っています(SF90ストラダーレ/スパイダーのヘッドライト周辺、テールランプ周辺は端的な例だと思う)。
なお、カーデザイナーであるスケッチモンキー氏はピニンファリーナのデザインによるフェラーリ458を絶賛していて、その理由は「ラインのシンプルさと連続性」。※この人はとにかく、ラインが途切れるのを嫌うようだ
フェラーリは当時、458のデザインをピニンファリーナに依頼する際、リアフェンダー上にダクトを設けるように指示したそうですが、ピニンファリーナは「デザインが台無しになる」としてこれを頑として拒否し、結果的にサイドクォーターウインドウとCピラーとの間に”目立たない”ダクトを設けています。
その458の改良版である488、そしてさらなる改良版のF8ではリアフェンダー上にダクトが設けられていますが、これはフェラーリのインハウス、つまりフラビオ・マンゾーニ氏によるデザイン。
ダクト、そしてさらにはサイドステップ下部についてデザインが複雑化しており、ピニンファリーナが考えた「連続したライン」が途切れていることもわかります。
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| フェラーリは458よりあとの世代ではピニンファリーナを切り、自社デザインへと切り替えている | https://www.flickr.com/photos/110074903@N02/497635 ...
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それでもデザインは破綻していない
ただ、それでも近年のフェラーリのデザインは全く破綻しておらず、むしろ非常に近代的な印象と優雅さとを両立させているという印象も。
たとえば、ライティングについては先進性を感じさせ、ダクト類についてはそのレイアウトやパワフルさを強調しているともぼくは考えていて、車体全体のラインではフェラーリの歴史、細部ではテクノロジーやフェラーリの向かう先を示しているとも受け止めているわけですね。
つまるところ、ぼくはピニンファリーナよりもフラビオ・マンゾーニ氏のデザインのほうが好きだということになりますが、同氏はほかにも「(ポルトローナ・フラウとのコラボレーションにて)チェア」をデザインしたことも。
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さらにウブロとのパートナーシップによって展開している腕時計についても同氏がデザインを行っており、これについては「もうもともとのウブロのイメージが残っていないほど」。
そして全体的には優雅な滑らかさと曲面を持ち、細部ではテクノロジーや精緻さを表現するという”フェラーリのクルマと同じ”表現方法が用いられているようにも思われます。
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そして同氏は、ほかの自動車メーカーだと「自分以外の(社内外の)デザイナーに任せる」ようなチェアや腕時計においても自身が直接関与していることでわかるとおり「ブランドのデザイン全てに対して責任を持つ」という意志が強いのでしょうね。
フェラーリのデザイナーが「SF90スパイダーのデザイン」について語る動画はこちら
参照: Ferrari