| トヨタはスバルWRX STIの有無に関係なくGRカローラを発売していただろう |
ただし「急に」発売の話が持ち上がったのは事実ではないかと考えている
さて、トヨタは「GRカローラ」を発表したところではありますが、巷では早くもその入手方法について盛り上がっているという状態。
おそらく販売台数は非常に厳しく制限され、限定スーパーカーを手に入れるよりもGRカローラを購入するほうが難しいんじゃないかとも言われていて、価格含む販売方法のアナウンスについては続報を待つしかなさそうです。
そして今回、それとは別に「GRカローラの登場は、スバルがWRX STIを投入しないと決めたこととなにか関係があるのか?」という憶測が登場しており、こちらもちょっとした話題となっているもよう。
GRカローラはWRX STIの「穴を埋める」?
まず、スバルは新型WRXについて「STIを投入しない」と公式にコメントしていますが、これは相当に意外な事実です。
というのも、スバルはこれまでにヴィジヴ・パフォーマンス・コンセプトにて次期WRX STIを予告しており、ずっとWRX STIの発売を意識させ続けてきたため。
そして消費者やメディアも「次期WRX STIは400馬力を発生するエンジンを搭載して登場する」と信じて疑わなかったのですが、ここで「まさかの新型WRX STIは存在しない」というアナウンスがなされたわけですね。
ただ、これには納得ができる理由もあり、「現在は環境規制があまりに厳しくなっており、これからはさらに加速することが想定されるため、今あたらしいガソリン車を発売したとしても、数年後にはもう販売できなくなっている可能性が高く、ビジネス的に新型WRX STIを発売するという判断は正しくない」というもの。
ちなみにこの判断は比較的最近なされたんじゃないかと考えていて、というのも従来型WRX STIの販売を終了させるとき、もし「新型WRXSTIはない」とわかっていたのならば、きっとスバルは記念限定モデルを発売していただろう、と考えているためです。
-
衝撃の「新型WRX S4ベースのWRX STIはない」発言から数日。スバルが公的に「なぜガソリンエンジン版のWRX STIを発売しないのか」に言及
| おそらく、スバルはつい最近まで新型WRX S4ベースのWRX STIを投入する計画でいたのだとは思われる | スバルだけではなく、多くの自動車メーカーが規制の波に翻弄される さて、先週「スバルが公 ...
続きを見る
トヨタはスバルとこの事実について協議していた可能性も
そして現在、スバルは事実上トヨタの関連会社であり、新型GR86/BRZの開発や発売においてもこれまで以上に強い連携を行っていて、そのためスバルが「WRX STIのフルモデルチェンジモデルを発売しない」という事実をかなり早い段階で知っていたのでは、と指摘されています。
そして論説では「WRX STIが投入されないという事実が、トヨタをGRカローラの発売に駆り立てた可能性がある」としているわけですが、つまりトヨタは「スバルさんがWRX STIを発売しないのなら、じゃあウチがエクストリームな4WDを出しましょうかね」と判断したんじゃないか、ということですね。
たしかにWRX STIとGRカローラとは(ボディ形状や出力を除くと)非常に似ている部分があり、パフォーマンスや性格だけを考えた場合、GRカローラはWRX STIの代替としての資質を持っているようには思います(ただ、スバルのファンがトヨタに流れるかどうかは疑問ではあるが)。
そして重要なのは「スバルにとって賢明ではないと判断されたエクストリーム4WDスポーツが、なぜトヨタにとってはビジネスチャンスとなるのか」ということ。
これについては一考の余地があり、スバルにおいてWRX STIはすでに固定されたファンとブランド力を持つクルマではあるものの、ニューモデルの投入によってさらにスバルのブランド価値を向上させたり、新しいファンを呼び込むことができるのかはちょっと謎。
反面、トヨタにとって「GR」は売出し中のブランドであり、そしてトヨタの主戦場であるアメリカでは「GR」ブランドがやや苦戦中。
GRスープラは価格面においてコルベットはじめとするアメリカンマッスルに対する優位性を発揮できず、GR86の良さは認められつつも「アンダーパワー」と評されてヒットに至らず、そしてGRヤリスは北米では販売されていないという状態です(おそらくはサイズ的にアメリカ市場とマッチしないという判断)。
加えて北米ではトヨタのモータースポーツ部門として(日本とは異なる組織体制の)TRDの力が強くGRのプレゼンスを確保できていないといった状況だとも報じられています。
-
北米ではGRではなく「TRDこそがハイパフォーマンスブランド」。なお日本のTRDはGRにその座を追われてドレスアップパーツブランドに
| 今後も北米ではGRとTRDとが共存するようだ | トヨタは2017年以降、そのモータースポーツ活動をGazoo Racingへと集約させるという動きを見せていますが、どうも北米はこの動きに同調して ...
続きを見る
一方、トヨタは自社のモータースポーツ活動をGR=Gazoo Racingに集約させたいという方針を持っていて、しかし北米ではそれが進まず、なんとかしてGRブランドをもっと押し出したいという意向を持っているのだと考えて良さそう。
そして、世界中で話題となっており、しかし北米には導入されていないGRヤリスによって北米市場の飢餓感がピークに達している今の状況を活用しない手はなく、北米トヨタは自社のツイッターにて「ホットハッチが欲しいか?」という問いかけを行ったこともあるほどです。※GRヤリスの画像を用い、しかし”別の(Another)”という言葉を用いているので、GRカローラを示唆していたのだと今になってわかる
かくしてトヨタが「北米でGRブランドを周知させ、そのポジションを向上させるにはGRカローラの投入が格好の契機となる」と判断したのは想像に難くなく、「知名度を向上させ、新しい客層を呼び込める」というところが新型スバルWRX STIとは全く事情が違うところでもありますね(さらにトヨタはGRヤリスに積まれる3気筒エンジンの生産量を拡大し、コストを回収することもできる)。
ただ、ぼくとしては、WRX STIとGRカローラが(いかに機能的に共通点があったとしても)競合するとは思えず、新型WRX STIの有無はいずれにせよGRカローラの登場に影響を及ぼさなかっただろう、とも考えています。
Does the North American market need another hot hatch? Let us know what you think! https://t.co/uwuak5aKEV
— Toyota USA (@Toyota) January 30, 2020
ただ、GRカローラが「突如出てきた企画」であろうことを示す事象もいくつかあり、発表時に用意されたプロトタイプには「アナログメーター」「EVボタン」が装着されていて、これらはGRカローラには装備されるはずのないもの。
よってこれは(発表会に登場した)GRカローラが急造であり、実際に市販モデルと同等の機能を持つ試作車が存在していないということを示す事実なのかもしれません。
GRカローラのプロモーション動画はこちら
合わせて読みたい、GRカローラ / スバルWRX STI関連投稿
-
スバルが方向性を転換、「新型WRXにはSTIの追加はない」と公式にコメント!電動化に向けて大きく舵を切り、次期WRX STIがあるとすれば「ピュアエレクトリック」
| 誰もが新型WRXにはには「STI」が追加されると信じて疑わなかったはずだ | ここへ来てまさかの電動化シフト、「内燃機関を搭載したWRX STIはない」 さて、現在新型WRX S4のキャンペーンが ...
続きを見る
-
トヨタはGRカローラの販売を厳しく制限するらしい!「排他性を維持するために細心の注意を払う。一台でも少なく売ることが我々の目標だ」
| GRブランドはここへ来てまさかの「限定ビジネスで価値を向上」させる手法を採用してきた | 世界的に見るとGRカローラはGRヤリスよりも人気が出そうだ さて、トヨタは先日「GRカローラ」を発表したと ...
続きを見る
参照:CARSCOOPS