| ボクらからすれば「中国の自動車メーカーはまだまだ」だという認識もあるが |
もうじき、日米欧の自動車メーカーは「対中国車戦略」を真剣に考えざるを得なくなるのかも
さて、フェラーリ、BMW、ミニ、マセラティ、マクラーレン等様々なクルマをデザインし、現在「もっとも偉大なカーデザイナーの一人」だとされるフランク・ステファンソン氏。
今回同氏はちょっと趣向を変え、中国の自動車デザインはどうやってコピーから自動車業界の先端をゆくまでに変わったのかについて触れています。
動画の中では、2000年代を「コピー時代」、2010年代を「独自デザインへの移行期」、2020年代を「独自性を築いた時代」だと定義づけており、ここまで短期間で「コピーからはじめて、業界をリードするに至るまで成長した」事例について、それを目の当たりにしても信じがたいことだとしており、現在の中国車のデザインについてはかなり高い評価を下しているもよう。
2000年代は「文字通りの」コピーだった
そして2000年代の中国の自動車メーカーについて、これは文字通りのコピーからスタートしています。
これはデザインはもちろん技術的にも未発達であったために「模倣」せざるを得なかったからだと思われますが、フランク・ステファンソン氏がデザインしたBMW X5も見事にパクられて「CEO」なる車名とともに販売されており、同氏の目から見ても「X5とCEOとの見分けがつかない」とも。
そしてこちらはトヨタRAV4のコピー。
信じがたいことですが、当時はbBやistの「(文字通り)まんま」コピーがけっこう走っていて、実際に見たときは「トヨタのCKD(コンプリートノックダウン)生産」もしくは「中国企業がトヨタから権利を買ってるんじゃないか」と考えたほど(しかし実際はそうではなく単なるコピーであり、とくに長城汽車の製品に多かった)。
こちらはメルセデス・ベンツEクラスのコピー。
スマートのコピーも。
ただ、こういったコピー文化を助長したのは諸外国の影響もあるんじゃないかとぼくは考えていて、というのも欧米諸国の(日本も含む)商社などが、自国の人気商品などを中国の工場に持ち込み、「これと同じものを作ってくれ」といってコピーさせまくったため(家電だろうが、アパレルだろうが)。
これによって中国の工場がコピー能力を向上させ、もしかすると「コピーすることは悪いことではない」と考えるようになった可能性も否定できません。
中国人は意外とコピーが好きではないらしい
ただ、中国の消費者は「コピー商品を持つことを意外と好まない」とされ、実際にコピーばかりを作っていた中国の自動車メーカーのいくつかは倒産に追い込まれたといい、そこで中国の自動車メーカーは独自性を模索するようになるのですが、イキナリ自社独自のデザインなどできようはずもなく、よってジウジアーロやピニンファリーナなどのデザインハウスに助けを求めることになり、そこで登場したのが奇瑞(チェリー)のA3(2008年)。
これはピニンファリーナによるデザインを持ち、このクルマによって中国の消費者ははじめて「コピーではない」クルマを購入することができるようになったとされ、A3のヒットによって多くの中国の自動車メーカーが「脱コピー」を考えるようになったのだそう(もちろん、それでも現代に至るまでコピーを作り続けているメーカーも多数存在する)。
そこからは破竹の勢いで改革が進む
そして中国の自動車業界は持ち前のスピード、そして豊富な資金をもって改革を進めることになり、吉利汽車のようにロータスやボルボを買収したり、紅旗のようにロールスロイスのデザイナーであったジャイルズ・テイラー氏やVWグループのデザイン責任者を努めたワルター・デ・シルヴァ氏を獲得したりといった事例も。
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一方で自社でデザイナーを育成して「中国市場で受ける」デザインを行うメーカーも存在し、ちょっと前だと他の市場では考えつかないような「メカドラゴン」といったクルマも。
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そのほか「未来的な外観」だと、中国のデザインがある意味では「最先端」であり、これはテクノロジー大好きな中国市場の性格を反映しているのかも。
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さらにデザインだけではなくエンジニアリング面で軽視できないクルマも多数登場していて、ニュルブルクリンクで6分45秒9というタイムを記録したNIO EP9、そして現在開発が進められている紅旗S1といったハイパーカーも存在します。
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これらについては、中国が長い間実施していた「外国の自動車メーカーが中国で生産を行うのであれば、現地企業に50%以上の株式を持たせて合弁企業を設立せねばならない」という規制によって技術が中国に移転してしまったこと、そして中国企業が大量の技術者を日米欧の企業から引き抜いたことも関係していそう。
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こういった事実を知ったとしても、ぼくらからすると「中国の自動車メーカーは恐るるに足らず」という思いは揺るぎないかと思いますが、常に業界のトップランナーであるフランク・ステファンソン氏が「中国の自動車メーカーのデザイン力と技術力は侮れない」と語っているのを聞くと「もうそこまで中国が迫ってきたのか」と考えを改めねばならないのかもしれません。
フランク・ステファンソン氏が中国の自動車メーカーの躍進について語る動画はこちら
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