
Image:Kosmera
| このコスメラ(ドリーミー)は数々の「ハイパーEV計画」を打ち出している |
ダイソンを追う家電巨頭が自動車界へ。狙うはEVの頂点
「掃除機メーカーが作った電気自動車」と聞くと、かつてEV開発を断念した巨額の損失を出した英国ダイソンを思い浮かべ、しかし現在のEV市場では、その常識を覆す全く新しいプレイヤーが台頭しています。
既報の通り、スマート家電や高級コードレス掃除機市場で世界的に急成長を遂げている中国の「Dreame(ドリーミー)」が自動車事業への参入を本格化させており、そのプレミアムEVブランドとして誕生した「Kosmera(コスメラ)」のEVに使用されるパワートレーンに関する情報が公開され、その出力はなんと「システム合計で3,000馬力オーバー」。※数ヶ月前までは「2,000馬力」と主張しており、この短い間に1,000馬力も出力が向上したということになる
すでに世界中にオフィスを構え、2029年の市販化を目指して動いているとは主張しているものの、これが単なる「絵に描いた餅」なのか、それとも次世代のハイパーカー市場を揺るがす本物の黒船なのか、最新のスペックと技術的背景からその実現性を考えてみることにしましょう。
-
-
ついに「0-100km/h加速」1秒以下のハイパーカーが登場。中国のロボット掃除機メーカー「ドリーミー」がロケットを搭載し0.9秒で駆け抜ける【動画】
| さらにはエネルギー密度450Wh/kg超のソリッドステートバッテリー(全個体電池)搭載 | これが実現できれば「とんでもない」ことではあるが ロボット掃除機やドライヤーで知られる中国の家電メーカー ...
続きを見る

Image:Kosmera
この記事の要点
- 家電大手が仕掛ける超高性能EV: 中国の高級家電・掃除機メーカー「Dreame(ドリーミー)」が立ち上げたプレミアムEVブランド「Kosmera(コスメラ)」が今後の製品ロードマップと革新的なパワートレインを公開
- 驚愕の3,000馬力オーバー: 自社開発の駆動ユニット「Axion Power」により、前後アクスルにそれぞれ1,556馬力を発生するツインモーターを配置。システムトータル出力は「3,112馬力」に達する
- 市販車最高峰の技術を凝縮: 通常のEVが導入を進める800Vシステムを遥かに凌ぐ「1,200V高電圧アーキテクチャ」を採用。さらにマグネシウム・アルミ合金とカーボンで軽量化した「アキシャルフラックス(軸方向磁束)モーター」を搭載
- 2029年までに3車種を投入へ: 今回お披露目された4ドアGT「Star Razer(スターレイザー)」をはじめ、SUV、そしてニュルブルクリンクを全開で2.5周しても劣化が30%未満という超高性能バッテリーを積むハイパーカー「Hypera(ハイペラ)」の開発を計画中
1200Vアーキテクチャとアキシャルフラックスモーターが紡ぐ「異次元の数字」
コスメラが公開したパワートレインの仕様は、既存の主要なEVメーカーが数年先に目標としている技術を軽々と飛び越えており、その心臓部を担うのは同社の社内駆動技術研究部門である「アクシオンパワー(Axion Power)」です。

Image:Kosmera
1500馬力ユニットを前後に配する贅沢
スターレイザーに搭載されるシステムは、「2つのモーターを一体化したデュアルモーター・モジュール」を前後のアクスルにそれぞれ1基ずつ配置する4モーター構成(4WD)。
このモジュールは単体で1,556馬力(1,160kW)を叩き出し、前後が力を合わせることでシステムトータル「3,112馬力」という、セダンとしては前代未聞のパワーを実現することになり、もちろん4輪のトルクを独立して緻密に制御するトルクベクタリング機能も備わっています。
重量を削ぎ落とす革新的なモーター構造
この驚異的なパワーを支えるため、ドリーミーはポルシェやメルセデスAMGの最先端モデルが導入を始めたばかりの「アキシャルフラックス(軸方向磁束)モーター」を採用し、モーターの構造体にはマグネシウム・アルミニウム合金のダイキャストを使用したうえでカーボンファイバーで補強を施すという構造。
これにより1kgあたり81馬力という極めて高い出力密度(軽量かつ高出力)を達成していますが、さらには現在のトレンドである800Vの上を行く「1,200Vシステム」超高電圧アーキテクチャを構築して超急速充電と高効率な熱管理(サーマル・マネジメント)を両立させるとしています。
-
-
【驚異の出力密度】重量わずか13kg、出力738馬力の次世代EVモーターが登場。開発元はメルセデス・ベンツが買収した「Yasa」
Image:Mercedes-Benz | エレクトリックモーターの常識が変わる瞬間がやってきた | エレクトリックスポーツ、ハイブリッドスポーツに「新たな可能性」 エレクトリックモーターの小型化・軽 ...
続きを見る
車種概要、性能・デザイン・スペックなどの特徴、市場での位置付け
コスメラが計画している主要モデルのスペック予測および、親会社ドリーミーのこれまでの自動車ビジネスにおける立ち位置をまとめてみると以下の通りです。
Kosmera Star Razer & Hypera 予測スペック
| 項目 | 4ドアGT「Star Razer」 | ハイパーカー「Hypera」 |
| パワートレイン | 4モーター(Axion Power製) | 4モーター+(将来的なロケットアシスト?) |
| システム最高出力 | 3,112 PS(3,112 hp) | 3,112 PS以上 |
| 0-100km/h加速 | 1.7秒 | 1.0秒未満(ソリッド燃料ロケット装着時) |
| 0-400km/h加速 | 8.2秒 | 算出中 |
| 最高速度 | 550 km/h | 算出中 |
| バッテリー容量 | 未公表(1,200Vアーキテクチャ) | 100 kWh以上(ニュル全開2.5周で劣化30%未満) |
| ブレーキシステム | 大径ディスク | チタンカーボンセラミック(前10ポット/後4ポット) |
| 100-0km/h制動距離 | 未公表 | 30メートル(98フィート) |
市場での位置付け:親会社「Dreame」の野望とハイパーカー市場への挑戦
コスメラの背後にいる親会社のドリーミーはここ数年で自動車業界へのアプローチを急速に強めており・・・。
- 2025年: ブガッティ・シロンに4枚ドアを付けたようなコンセプトカーや、ロールスロイス・カリナンを彷彿とさせる高級SUVのデザインを発表。
- 2026年1月(CES): 1,876馬力を誇るハイパーカー「Dreame Nebula Next 01」を発表。将来的に固形燃料ロケットモーターを搭載し、0-100km/h加速0.9秒台を目指すと公言して話題に。
今回のコスメラブランドの立ち上げは、これまでの「ドリーミー」名義でのコンセプトスタディをより現実的な市販ビジネス(2029年導入)へと昇華させるための重要なステップとも言えるもので、ターゲットとするのは最高速500km/hを記録したBYD「仰望(Yangwang)U9」のハードコア仕様、そしてブガッティの次世代ハイパーカーといった「実質的に競合不在のウルトラ・ハイエンド市場」です。
-
-
【本当に発売】BYD「ヤンワン U9 エクストリーム」、出力3,000馬力、最高速度496.2km/hでギネス更新、全パワートレーン含む「世界最速」に【動画】
Image:Yangwang | 電動ハイパーカー「Yangwang U9 Xtreme」、時速496.22km/hを記録 | 「3,000馬力」の実現は不可能だと思われていたが BYDのラグジュアリ ...
続きを見る
新興EVが掲げる「天文学的数字」の裏側と、クリアすべき現実の壁
近年の自動車市場において「1,000馬力超」「最高速400km/h以上」といった過激な数字を掲げる新興EVブランドが世界中で乱立しており・・・。
「パンフレットに数字を書くのは誰でもできる」という冷酷な現実
自動車業界の歴史を振り返ると、何もない状態からスタートした新興企業がCGのレンダリング画像と衝撃的なスペックシートだけを公開し、出資集めをした後にひっそりと消えていくケースは珍しくなく、コスメラが掲げる「最高速550km/h」という数字は現在の市販車用タイヤの技術(耐久性や耐熱性)では物理的に耐えうる製品が存在しないレベルに達しています。
-
-
新興メーカー「Garagisti & Co.」、V12&6速MT搭載のピュアアナログ・ハイパーカー「GP1」を発表。800馬力の自然吸気エンジンに車重は1トン以下
| 驚くことにGaragitiはV12エンジンを「新規開発」 | 電動化時代に逆行する“ピュア”ハイパーカー 電気自動車がどれだけ圧倒的な加速力を見せつける時代になったとしても、ハイパーカー / スー ...
続きを見る
世界最高峰のタイヤメーカーであるミシュランやピレリが「このハイパーカーのためだけに」特製タイヤを開発・供給しない限り、認可された速度記録イベント以外でこのパフォーマンスを発揮する場所はなく、よってこのコスメラによるハイパーカーたちの性能が「立証」されることは難しいのかもしれません。
家電メーカーならではの「強み」と「弱み」
一方で親会社のドリーミーは、掃除機のコードレス化において最も重要な「超高速デジタルモーターの開発」と「高度なバッテリー制御・熱管理」において世界トップレベルの特許と量産実績を持っています。
ダイソンがEVを諦めたのは資金調達とプラットフォーム開発の壁ではありましたが、中国のEVサプライチェーンは世界で最も進化しており、シャシーやボディの製造を外部のメガサプライヤー(コンストラクター)に委託することが現在では比較的容易となっていて、実際にファーウェイは「HIMA」プロジェクトにおいていくつかのEVメーカーに車体の製造を委託しています。
-
-
【フェラーリ激怒案件】ファーウェイ新型SUV「Luxeed RX」がプロサングエに激似。ファーウェイは“フェラーリのチーフデザイナーを引き抜いた”と主張、その真偽が話題に
Image:MITT | さらにはBMW、アストンマーティンのシャシー担当者も引き抜いたようだ | ファーウェイの最新SUV「Luxeed RX」を巡る、美学とプライドの衝突 中国のEV・新エネルギー ...
続きを見る
つまり、「モーターのコア技術」と「中国のEVエコシステム」が融合すれば、大手自動車メーカーが数年かかる開発を半分以下の期間で形にしてしまう可能性をも秘めており、これまで「消えていった」欧米の新興ハイパーカーメーカーとは異なって意外や(コスメラは)ハイパーカーを実現してしまうのかもしれません。
結論:夢物語で終わるか、新時代の覇者となるか。2029年へのカウントダウン
最高出力3,112馬力、最高速度550km/h、ニュルブルクリンクを全開で2.5周走りきれる超耐久バッテリー――。コスメラが提示したスペックは現時点の自動車工学の常識に照らし合わせれば「不可能」の領域に片足を突っ込んでいます。
しかし、かつてテスラが「ロードスター」や「モデルS」を発表したときも当時の自動車業界の巨人たちは「新興IT企業にクルマなど作れるはずがない」と笑いとばしており、しかし現在の中国EV市場の進化スピード、そしてプレミアム家電で培ったドリーミーのモーター技術への投資を考えるならば、彼らが本気でプロトタイプを完成させ、ぼくらの前に現れる可能性を100%否定することはできません。
重要なのは、彼らがこの「魔法」のような数字を、実際のサーキットや公道で機能する「鉄とカーボンと走りのエモーション」へと変換できるかどうかであり、まずは2029年に向けて、実際に自走する最初のテスト車両(プロトタイプ)がどのような姿で現れるのか。期待と少しの冷静さを持ちながら、この野心的なプロジェクトの行く末を見守ってゆきたいと思います。
合わせて読みたい、関連投稿
-
-
この数年でいったいどれくらいの新興ハイパーカーメーカーが登場したのか。ハイパーカー市場の飽和、ハイパーカービジネスの困難と課題を考える
| ハイパーカーという市場が確立されたのは2005年のブガッティ・ヴェイロン登場以降だとされている | しかし今のハイパーカー市場は「ビジネスチャンスがあるようでほとんどない」 さて、ここ最近見られ始 ...
続きを見る
-
-
イタリアの新興ハイパーカーメーカー「ジャマロ」が2,127馬力、11速DCTを搭載したハイライドハイパーカーを発表、価格は「数億円」?
Image:Giamaro Automobili | 新興ハイパーカーメーカーの勢いは「とどまるところを知らない」 | このジャマロは「比較的」実現性が高そうである さて、つい先日「現在の自動車市場に ...
続きを見る
-
-
掃除機メーカー、ドリーミー(Dreame)が1台だけではなく「合計3台の」2,000馬力級ハイパーEVを発表。「あらゆるジャンルの究極を目指す」【動画】
| 家電界の巨人が挑む「地上最速」の夢 | この記事の要約 3台同時デビュー: Kosmeraから2台、Nebula Nextから1台の計3モデルが登場 驚愕の1:1レシオ: ネビュラ ネクスト1では ...
続きを見る
参照:Kosmera











