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販売が増えれば黒字化するはずだったが。なぜかシャオミの「1台あたりの赤字」は前年から6倍も拡大し「約90万円」に。「安くしないと売れない」生存競争の裏側とは

シャオミSU7が「炎上どころか”爆発”」。議論が白熱する中、ついにシャオミが公式見解を発表し注目を集める

Image:Xiaomi

| かつては「30万台も売れば黒字化できる」とされたEVビジネスではあるが |

今ではますます黒字化が難しい状況に

中国製EVに関し、常にその「圧倒的な低価格」がセンセーショナルに報じられるのはご存知のとおりかと思いますが、その華やかなスポットライトの影に隠されているのは「工場からクルマが出荷されるたび、企業が大量の血を流しているという過酷な現実」。

「中国のアップル」とも称されるスマートフォン大手シャオミが数年前に立ち上げたEVI部門も今まさにその渦中にあり、破竹の勢いで販売を伸ばし続ける人気の電動セダン「SU7」、そして新型SUV「YU7」において、皮肉なことに「売れば売るほど赤字が膨らむ」という自動車ビジネスの罠にはまり込んでいる、との報道。

なぜこのような事態が起きているのか、最新の財務データをもとにその背景を読み解いてゆきましょう。

この記事の要約・ポイント

  • 赤字額の急拡大: 中国のテック巨人シャオミ(Xiaomi)のEV部門は2026年第1四半期に1台を納車するごとに約5,600ドル(約90万円)の営業損失を計上。前年同期の約900ドルから大幅に悪化している
  • 好調な販売台数: 同期間の販売台数は80,856台に達し、売上高は約29億ドル(約199億元)を記録。クルマ自体は「売れに売れている」
  • 低すぎる平均単価: 深刻な赤字の原因は平均取引価格が約235,000元と極めて低く抑えられているため
  • 高価格帯へのシフト: 対策として、990馬力を誇る新型「YU7 GT」やフラッグシップ「SU7 Ultra」など、利益率の高いハイパフォーマンスモデルの投入で単価引き上げを図っている

販売台数は過去最高ペース、しかし営業損失は4億5700万ドル

公開された最新の財務報告によると、シャオミは2026年第1四半期(1〜3月)に中国全土で80,856台のEVを販売し、これによって199億元(約4200億円)という巨額の売上高を達成したものの、EV部門の営業損失は31億元(約620億円)に達したと報じられ、これを1台あたりの損失に換算すると、現在のレートで約90万円という赤字幅と捉えることが可能です。

さらに深刻なのは、財務的な健全性が向上するどころか、むしろ悪化している点で、前年同期(2025年第1四半期)の販売台数は75,869台と今年より6.6%少なかったものの、当時の1台あたりの赤字額は約15万円に抑えられていて、つまり、この1年で1台あたりの赤字が約6倍にまで急膨張してしまったというわけですね。

参考までに、数年前の「まだ競争が厳しくなかった頃」の中国市場だと、新興EVメーカーは「30万台程度販売すれば」開発コストが吸収できるとされてきましたが、今では「ライバルが増えすぎて価格競争に突入」「差別化のための開発コストが上昇」しているという事情もあり、「いくら売っても黒字化できない」というのが現状です。

なぜ赤字は急増したのか?加速力並みに資金が溶ける理由

クルマが売れているにもかかわらず損失が拡大している最大の要因は平均取引価格(車両単価)の低さにあり、現在、シャオミEVの平均購入価格はわずか235,000元(約510万円)に留まっていて、テスラや他のプレミアムEVに対抗するために極めて戦略的(かつ出血大サービス)な価格設定を行っていることがその背景。

加えてエントリーモデルの構成比が高いという現状では、製造コストや開発費の回収が追いついておらず、まさに「EVの加速力と同じスピードで資金が溶けている」状態と言えそうです。※数年前、シャオミは黒字化目前とされていたが、そこから価格競争に突入して急激に収益性が悪化している

シャオミはEVを1台販売するごとに135万円もの赤字を出していた。しかしリビアンの-476万円、フォードの-687万円に比べると赤字幅は小さく2年以内には黒字化か
シャオミはEVを1台販売するごとに135万円もの赤字を出していた。しかしリビアンの-476万円、フォードの-687万円に比べると赤字幅は小さく2年以内には黒字化か

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シャオミEVのラインナップと価格戦略

この「薄利多売(あるいは出血多売)」のループから抜け出すため、シャオミは現在、粗利益率の高い高価格帯・ハイパフォーマンスモデルの拡充を急いでいる過程ではありますが・・・。

主なモデルのスペックと価格

モデル名特徴・スペック中国現地価格日本円換算(参考)
SU7(ベースモデル)ブランド初の電動セダン。洗練されたデザインと高い質感で大ヒット。215,900元〜約500万円
YU7 GT(新型)最高出力 990馬力を誇るファミリー向け高性能SUV。ポルシェ・マカンEVのベースモデルより安価でありながら、性能で圧倒する。389,900元約920万円
SU7 Ultraハイパーカーを脅かすスペックを持つフラッグシップモデル。529,900元約1250万円

これらの超高性能モデルは決して数多く売れるボリュームゾーンではなく、しかし1台売れるごとに平均取引価格(単価)を大きく押し上げ、収益構造を改善する起爆剤として期待されています。

990馬力、最高速300km。シャオミの新型高性能SUV「YU7 GT」の詳細が明らかになり、ポルシェはもちろんフェラーリすらも「射程圏内」に収めるようだ

Image:Xiaomi

中国EV市場の「生き残り(サバイバル)ゲーム」

シャオミのこの経営状態は現在の中国EV市場における象徴的な縮図でもあり、現在、中国国内では100以上ものEVブランドが乱立し、熾烈な値下げ合戦(価格戦)を繰り広げている最中で、テスラとBYDを除けば、EVメーカー(あるいは既存自動車メーカーのEV部門)のほとんどが赤字を垂れ流しながら操業しているというのが現状です(その状況の中、いたずらにラインアップを増やしたり過剰な投資を行わず、延々と既存ラインアップを改良し収益性を確保しているテスラはさすがである)。

ただ、ここで重要なのは「シャオミは本業(スマートフォンやスマート家電)で莫大なキャッシュを稼ぎ出している」という点で、他のEV専業スタートアップとは異なって、シャオミにはEV事業の赤字を本業の利益で補填しつつ、競合が倒産して市場が淘汰されるまで耐え抜く「体力(資本力)」があるということになり、つまり現在の巨額の赤字は、将来的に市場を独占するための「意図的な投資(兵糧攻め戦略)」と考えることができるのかもしれません。

結論

シャオミがEV1台を売るごとに約88万円の赤字を出しているという事実は、一見するとビジネス上の失敗のように映るかもしれず、しかし、スマートフォン市場でもかつて同じ戦略でシェアを拡大してきたシャオミにとって、これは想定内の「破壊的イノベーション」のプロセスともいえるもの(中国には、ライバルを消耗させシェアを奪うまで赤字で販売し続ける”焼銭”というビジネスモデルがある)。

そして現段階だと、ユーザーは「ポルシェ並みの性能を持つ最新EVが、信じられないほどのバーゲン価格で手に入る」という最高の恩恵を受けていることになり、そう考えるならば「(他の新興EVメーカーが淘汰され、市場がシャオミによって独占される前の)今がシャオミ製EVの買い時」であるとも考えられ、中国の消費者にとっては「幸運なタイミング」ということなのかもしれません。

シャオミEV、売上200%増につき販売店へ「22億円のお年玉」を無条件で配布。2026年も破格の成長が期待される

Image:Xiaomi

今後シャオミは欧州はじめ世界中へと進出する計画を持っており、もしかすると日本市場でも購入のチャンスが生じる可能性も考えられ、そして各市場への導入初期にはこういった「市場貫通価格(ペネトレーションプライス)」戦略を採用する可能性が高く、もし日本に入ってきたならば、狙い目は「初期モデル」であるとも考えられます。

なお、海外市場ではシャオミはもともと価格競争力を保持しており、かつ「ハイパフォーマンス志向」が高いとも考えられ、よって海外販売はシャオミの収益を大きく改善することが期待されますが、目下の問題は「生産能力」だとされ、つまり海外市場に回すだけの車両を確保できないというのもまた事実。

それでもシャオミは工場の拡張によって生産能力を拡大することは間違いなく、さらには高利益率な「YU7 GT」や「SU7 Ultra」の投入によって赤字幅を圧縮してゆくことは間違いなく、この過酷なサバイバルゲームの果てにシャオミが中国はじめ世界中のEV市場における覇権を握ることができるのかどうかに注目が集まります。

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参照:CARSCOOPS

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