| しかしその一方、メルセデス・ベンツは「これ以上EVの価格は下がらない」とも考えている |
現在のバッテリー製造コスト、そして価格推移を見るに、ガソリン車と同等の価格でEVを売るのは不可能
さて、メルセデス・ベンツが2022年第1四半期の販売データを公開し、ピュアエレクトリックカーの販売台数が「3倍になった」とコメント。
メルセデス・ベンツ全体の販売台数としては、半導体(マイクロチップ)不足の影響にて前年同期比15%減の50万1600台にとどまったものの、電気自動車の販売台数は2万1900台となって前年同期比で210%増。
加えてPHEV(プラグインハイブリッド)だと8%増の4万5900台を数え、EVとPHEVとをあわせるとメルセデス・ベンツ全体の世界販売の15%、欧州だけに絞ると33%を占めるのだそう。
もっとも売れたメルセデス・ベンツはGLC
なお、この期間にてもっとも売れたメルセデス・ベンツはGLC(10万400台)、ただしSクラスの販売も大きく伸びて67%増、メルセデス・マイバッハも161%増となるなどハイエンドモデルが大きく伸び、さらにメルセデスAMG、メルセデス・マイバッハ、Gクラス、Sクラス、EQSといった上位クラスの販売は1%増の7万6200台(全体が落ちている中でこの数値は大したものだと思う)。※保有しているマイクロチップをうまく高級車=利益の大きなモデルに分配したのだと考えられる
マーケット別に見ると最大市場はアジアで24万9000台(24%減)、次いでヨーロッパの15万1000台(14%減)、3位は北米の7万700台(20%減)。
国別だと1位は中国の19万2700台、2位はアメリカの6万2300台、3位はドイツの5万600台という並びとなっていて、中国が「圧倒的」であることがわかります。
メルセデス・ベンツによると「引き続き需要は堅調」としながらも、不安定な(主にロシアとウクライナの)政治環境、半導体の供給不足、世界の一部地域で続くコロナウイルスのパンデミック関連の規制等の影響も無視できず、今後についても継続して慎重な姿勢を維持してゆく、とのこと。
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やはりEVの価格は下がらない?
直近の第1四半期においてEVの販売を伸ばしたメルセデス・ベンツですが、同社の最高技術責任者、マルクス・シェーファー氏によれば「電気自動車のコストが直近で下がるとは考えていない」とのこと。
現在、一般的に「同クラスのクルマであれば、EVのほうがガソリン車よりも35%ほど高い」という現状を鑑みて、両者の価格が近づくには「バッテリーのコストが1kWhあたり50ドルまで下がらなくてはならない」と計算しており、しかし現状ではこれに近づくことすら難しいと考えているもよう(日産はソリッドステートバッテリーのターゲットコストを引き下げ、2028年には65ドルまで下げる意向を持っているが、それでも50ドルには程遠い)。
そして同氏は「常に新しいバッテリー技術を開発することになれば、いつまでたってもコストを吸収できず」「しかしバッテリーに必要な鉱物の価格が下がるどころか上がってゆく」ことを考慮すると、バッテリー価格が(バッテリーの普及にあわせて)下がってゆくというのはあまりに楽観的であり、むしろ「バッテリー価格は下がらない」という考え方を持っているといい、これはけっこう現実的な予測なのかもしれません。※テスラはこれを見越し、これ以上資源の価格が上がるのであれば、自社にて採掘事業にも乗り出すという意向を見せている
ただ、メルセデス・ベンツは2030年移行に発売するクルマは「すべてEVにする」と宣言していますが、バッテリーのコストが下がらなければ、そしてほかメーカーがまだガソリン車を作り続けているとしたら、メルセデス・ベンツは「22030年以降、割高なクルマしかラインアップに存在しない」自動車メーカーになってしまい、競争力を失いかねないという懸念も。
ただ、それはメルセデス・ベンツ自身がもっともよく理解していて、よって「バッテリーサイズを増やさずに航続可能距離を伸ばす」技術を追求し、その結果として「EQXXコンセプト」を発表したりしているのかもしれません。
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